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第三話:『幽迷死率の尖兵、陽血炎(ようちえん)の襲撃』
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符号核(ふごうかく)の谷を抜けた先に広がるのは、整備された石畳の道と、美しく刈り込まれた街路樹が並ぶ「死抵抗水仙(していこうすいせん)の森」だった。
ここまでの戦いで、私のマイクロビキニアーマーは限界を迎えていた。スライムの粘液を浴び、岩場で擦れた鎖は、今や私の意志を反映するかのように「より食い込み、より隠さない」形状へと変異している。
「うぅ……、さっきからこの鎖、心拍数に合わせて締め付けが強くなってる気がする……。恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい……っ!」
叫ぶたびに私の肌から吹き出す紫のオーラが、周囲の空気をバチバチと震わせる。もはや私の歩く道は、その羞恥の熱量だけでアスファルトが溶け出すほどだった。
「――おやおや。下品な鳴き声を上げて、迷い込んだ野良犬がいると思えば……。貴様が噂の『新任勇者』か」
透き通るような高い声が、森の奥から響いた。
現れたのは、仕立てのいい紺色のブレザーを纏い、黄金の縁取りがされた半ズボンを穿いた、十歳ほどの少年だった。
だが、その幼い外見に騙されてはいけない。彼の背後には、数千冊の参考書が重なったような巨大な浮遊結界が展開され、その中心で「高慢に突き出された顎」が太陽の光を反射して輝いている。
「……子供? いえ、あなた……『幽迷死率(ゆうめいしりつ)』の血族ね?」
「いかにも。私はアナルバイブ男爵閣下よりこの森の試験官を任された、エリート中のエリート。名は『慶旺(けいおう)』。……それにしても、嘆かわしい。王国の命運を託された勇者が、そのようなサキュバスのなり損ないのような格好とは。……教育の敗北、文化の埋葬だな」
慶旺は、扇子で口元を隠しながら優雅に笑った。その視線が、私の際どすぎる胸元と、ほぼ鎖一本で繋がっている腰回りをなぞる。
「くっ……! 好きで脱いでるわけじゃないって言ってるでしょ! これは、この国の……伝統的な……防御装備なの!」
「ほう。では、その自慢の『不純異性交遊装備』の耐久値、私自らが採点してやろう。……一問目だ。焼き尽くせ、陽血炎(ようちえん)!!」
彼が指を鳴らした瞬間、私の足元の地面が真っ赤に発光した。
熱い。熱すぎる。
それは単なる物理的な炎ではない。相手の血流を強制的に加速させ、顔を真っ赤にさせ、心拍を狂わせる「強制的な興奮と逆上」の火炎。
「あ、あつい……! 身体が……火照って……っ」
「どうした、勇者。その煽情的な格好に見合った、浅ましい反応だな。もっと赤くなれ、もっと乱れろ。……エリートの目に焼き付けられる喜びを感じながら、灰になるがいい!」
慶旺の『陽血炎』が、私の全身を舐めるように燃え上がる。
だが、彼には計算外のことがあった。
羞恥心をエネルギーにするマイクロビキニにとって、「強制的に赤面させられる」ことほど、強力なバフ(強化)はないのだ。
「……ふざけないでよ……。こんな子供に……こんな破廉恥な姿を見られて……挙句の果てに、……身体を火照らされるなんて……!!」
瞬間、私の羞恥心は爆発した。
「見ないで!」という叫びが、私の脳内で臨界点を超える。
紫のオーラはもはや霧ではなく、巨大な障壁の塊――『絶対領域・恥辱(シャイネス・ドーム)』へと変貌した。
「――『瘴顎昂(しょうがっこう)』!!」
私は大きく顎を突き出し、羞恥に震える溜息を吹き出した。
それは慶旺の炎を瞬時に飲み込み、森全体を紫の瘴気で包み込んだ。
その煙の中に映し出されるのは、慶旺自身の「過去の挫折」。――「お受験で満点を取れなかったあの夜」「父親に偏差値をなじられたあの午後」。
「なっ……何だ、この幻覚は!? 私は完璧だ! 私は一回戦負けなどしたことはない……っ!!」
「あんたの『顎』は、高すぎて自分の足元が見えてないのよ! ……これでおしまい! 誅顎昂(ちゅうがっこう)!!」
私は一気に距離を詰め、羞恥に真っ赤になった顔のまま、慶旺の顎に向けて王授剣を叩きつけた。
ガギィィィン!!
鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合うような激音。慶旺の『高慢な顎』に守られた絶対防御が、私の「ほぼ裸の突撃」の前に、粉々に砕け散った。
「……馬鹿な……。あんな、……布切れ一枚の女に……私の教育が……論破されるだと……っ」
慶旺は膝をつき、その高貴なブレザーが砂に汚れた。
彼は消滅こそしなかったが、その『顎』の輝きは失われ、ただの怯えた子供のように震えていた。
「……負けた。……私の……ストレート合格の道が……」
「いい? 勉強ができるのは偉いけど、それを誰かを見下す道具にしちゃダメなの。……特に、……こういう格好をしてる女の人に説教しちゃ、ダメなんだからね……っ!」
私は最後にそう言い捨てると、再び森の奥へと走り出した。
慶旺を倒した衝撃で、私のマイクロビキニはさらに縮み、今や鎖の食い込みはもはや「服」としての機能を完全に放棄していた。
羞恥心が強くなるほど、世界は私を拒絶するように美しくなり、そして残酷になる。
「……次は何よ。中等部? 高等部? ……どんと来なさい! 恥ずかしくなればなるほど、私は……無敵なんだから!!」
走り去る私の背後で、森の木々が私のオーラに当てられて、恥じらうように葉を赤く染めていた。
ここまでの戦いで、私のマイクロビキニアーマーは限界を迎えていた。スライムの粘液を浴び、岩場で擦れた鎖は、今や私の意志を反映するかのように「より食い込み、より隠さない」形状へと変異している。
「うぅ……、さっきからこの鎖、心拍数に合わせて締め付けが強くなってる気がする……。恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい……っ!」
叫ぶたびに私の肌から吹き出す紫のオーラが、周囲の空気をバチバチと震わせる。もはや私の歩く道は、その羞恥の熱量だけでアスファルトが溶け出すほどだった。
「――おやおや。下品な鳴き声を上げて、迷い込んだ野良犬がいると思えば……。貴様が噂の『新任勇者』か」
透き通るような高い声が、森の奥から響いた。
現れたのは、仕立てのいい紺色のブレザーを纏い、黄金の縁取りがされた半ズボンを穿いた、十歳ほどの少年だった。
だが、その幼い外見に騙されてはいけない。彼の背後には、数千冊の参考書が重なったような巨大な浮遊結界が展開され、その中心で「高慢に突き出された顎」が太陽の光を反射して輝いている。
「……子供? いえ、あなた……『幽迷死率(ゆうめいしりつ)』の血族ね?」
「いかにも。私はアナルバイブ男爵閣下よりこの森の試験官を任された、エリート中のエリート。名は『慶旺(けいおう)』。……それにしても、嘆かわしい。王国の命運を託された勇者が、そのようなサキュバスのなり損ないのような格好とは。……教育の敗北、文化の埋葬だな」
慶旺は、扇子で口元を隠しながら優雅に笑った。その視線が、私の際どすぎる胸元と、ほぼ鎖一本で繋がっている腰回りをなぞる。
「くっ……! 好きで脱いでるわけじゃないって言ってるでしょ! これは、この国の……伝統的な……防御装備なの!」
「ほう。では、その自慢の『不純異性交遊装備』の耐久値、私自らが採点してやろう。……一問目だ。焼き尽くせ、陽血炎(ようちえん)!!」
彼が指を鳴らした瞬間、私の足元の地面が真っ赤に発光した。
熱い。熱すぎる。
それは単なる物理的な炎ではない。相手の血流を強制的に加速させ、顔を真っ赤にさせ、心拍を狂わせる「強制的な興奮と逆上」の火炎。
「あ、あつい……! 身体が……火照って……っ」
「どうした、勇者。その煽情的な格好に見合った、浅ましい反応だな。もっと赤くなれ、もっと乱れろ。……エリートの目に焼き付けられる喜びを感じながら、灰になるがいい!」
慶旺の『陽血炎』が、私の全身を舐めるように燃え上がる。
だが、彼には計算外のことがあった。
羞恥心をエネルギーにするマイクロビキニにとって、「強制的に赤面させられる」ことほど、強力なバフ(強化)はないのだ。
「……ふざけないでよ……。こんな子供に……こんな破廉恥な姿を見られて……挙句の果てに、……身体を火照らされるなんて……!!」
瞬間、私の羞恥心は爆発した。
「見ないで!」という叫びが、私の脳内で臨界点を超える。
紫のオーラはもはや霧ではなく、巨大な障壁の塊――『絶対領域・恥辱(シャイネス・ドーム)』へと変貌した。
「――『瘴顎昂(しょうがっこう)』!!」
私は大きく顎を突き出し、羞恥に震える溜息を吹き出した。
それは慶旺の炎を瞬時に飲み込み、森全体を紫の瘴気で包み込んだ。
その煙の中に映し出されるのは、慶旺自身の「過去の挫折」。――「お受験で満点を取れなかったあの夜」「父親に偏差値をなじられたあの午後」。
「なっ……何だ、この幻覚は!? 私は完璧だ! 私は一回戦負けなどしたことはない……っ!!」
「あんたの『顎』は、高すぎて自分の足元が見えてないのよ! ……これでおしまい! 誅顎昂(ちゅうがっこう)!!」
私は一気に距離を詰め、羞恥に真っ赤になった顔のまま、慶旺の顎に向けて王授剣を叩きつけた。
ガギィィィン!!
鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合うような激音。慶旺の『高慢な顎』に守られた絶対防御が、私の「ほぼ裸の突撃」の前に、粉々に砕け散った。
「……馬鹿な……。あんな、……布切れ一枚の女に……私の教育が……論破されるだと……っ」
慶旺は膝をつき、その高貴なブレザーが砂に汚れた。
彼は消滅こそしなかったが、その『顎』の輝きは失われ、ただの怯えた子供のように震えていた。
「……負けた。……私の……ストレート合格の道が……」
「いい? 勉強ができるのは偉いけど、それを誰かを見下す道具にしちゃダメなの。……特に、……こういう格好をしてる女の人に説教しちゃ、ダメなんだからね……っ!」
私は最後にそう言い捨てると、再び森の奥へと走り出した。
慶旺を倒した衝撃で、私のマイクロビキニはさらに縮み、今や鎖の食い込みはもはや「服」としての機能を完全に放棄していた。
羞恥心が強くなるほど、世界は私を拒絶するように美しくなり、そして残酷になる。
「……次は何よ。中等部? 高等部? ……どんと来なさい! 恥ずかしくなればなるほど、私は……無敵なんだから!!」
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