7 / 30
第七話:『P.T.A.の介入、万象抹消の影』
しおりを挟む
雷武を倒し、第一城門を突破した私の前に現れたのは、軍勢ではなかった。
空から静かに降りてきたのは、巨大な「黒塗りの円卓」。その上には、揃いのエプロンを鎧の上から着用し、眼鏡の奥で冷徹な理性を光らせる三人の女性たちが座っていた。
彼女たちの背後には、巨大なスタンプのような魔導兵器が浮遊している。そこには赤々と『不適切』の文字。
「……勇者ラピスラズリ。私たちは万象抹消統治機関『P.T.A.(Pandemic Termination Authority)』の常任理事。……あなたの戦いぶりを拝見しましたが、目に余ります」
中央に座るリーダー格の女性が、厳しい口調で断罪した。
「その装備。布面積がナノサイズ? 鎖のみで構成された吸着型? ……これは、我が国の教育方針における『健全な育成』を著しく阻害するものです。子供たちが真似をしたらどうするのですか?」
「え、……ええ!? 真似なんてしないでしょ! そもそも、これ、国王様から……!」
「言い訳は無用。あなたの描写は、この世界のレイティングを逸脱しています。……よって、本話をもって、勇者ラピスラズリという『存在』を、歴史のアーカイブから強制修正(デリート)します」
彼女が指をパチンと鳴らすと、周囲の景色が「砂嵐(ノイズ)」へと変わり始めた。
足元から、私の身体が白黒のドットになって崩れていく。物理的な攻撃ではない……物語そのものから「なかったこと」にされる、概念レベルの消去!
「う、嘘……っ! 私の身体が……消えて……!?」
「消えるのではありません。『修正』されるのです。あなたのナノビキニは、今から厚さ一メートルのダルマのような防寒着へと描き換えられます。……羞恥心を失ったあなたは、ただの無害な置物となるのです」
羞恥心をエネルギーにする私にとって、「不適切な露出を消される」ことは、死と同義だった。
視線が、評価が、消えていく。
私は、急速にパワーが失われていくのを感じて膝をついた。
「……だめ……。恥ずかしく……なくなっちゃう……っ。そんなの、……私じゃない……!」
その時だった。
ノイズに覆われた視界の端から、一人の男が飛び出してきた。
「待てぇい!! その修正、異議ありだ!!」
現れたのは、『無銘古布慄』のリーダー・大悟だった。
彼はP.T.A.の放つ消去波動(デリート・ウェーブ)に全身を焼かれながらも、泥まみれの学ランを振り乱して叫んだ。
「あんたたちエリートに何がわかる! 瑠璃さんのこの格好は……俺たち凡人にとっての、唯一の希望なんだ! 『正論』で塗り潰されたクソ面白くねえ世界に、初めて現れた『最高のバグ』なんだよ!!」
「……黙りなさい、不合格者。あなたは静かに、再試の準備をしていればいいのです」
「るせえ! 瑠璃さん! 恥ずかしがれ! もっと、もっと最高に恥ずかしがってくれ! 俺たちはあんたのその姿を……心の底から『不適切』だと思ってる! だから、……だからあんたは、誰よりも正しいんだ!!」
大悟の叫び。それは、正しい教育ではなく、歪んだ情熱。
けれどその「不適切な応援」が、私の冷え切った心に火をつけた。
「……そうよ。……そうだったわ。……誰かに『ダメ』って言われれば言われるほど、……私は……恥ずかしくて……!!」
私は、消えかかっていた右手を天に突き出した。
「……お母さんたちに怒られる格好をして……! 泥まみれの男の人たちに囲まれて……! 世界中から『不適切』って言われながら戦うなんて……!! ……最高に……最高に恥ずかしくて、……気持ちがいいじゃないのよぉぉぉぉ!!」
ドガァァァァァン!!
私のナノビキニが、眩いばかりの「背徳の紫」に発光した。
P.T.A.の修正プログラムを、逆流する羞恥心の熱量が焼き尽くす。
描き換えられようとしていた私の装備は、あろうことかさらに縮小し、光輝く『点(ドット)』となって私の身体を繋ぎ止めた。
「な……っ!? 修正を……拒絶した!? 存在そのものが『不適切』の極致に達しているというの!?」
「――『宇良朽孨咢(うらぐちにゅうがく)』!!」
私は、世界の理を無視する「裏口」のコードを王授剣に纏わせ、P.T.A.の円卓目掛けて突進した。
正論という名の壁を、羞恥という名の爆薬でぶち破る。
「あんたたちの『正しい世界』なんて、……私がナノビキニで、……めちゃくちゃにしてあげるんだから!!」
一閃。
P.T.A.のスタンプが真っ二つに割れ、黒塗りの円卓が次元の彼方へと吹き飛んだ。
砂嵐が止み、世界が色彩を取り戻す。
「……はぁ……、はぁ……。……勝った……の?」
私は、大悟たちの方を振り返った。
彼らは、あまりの光景(と私の露出)に、全員鼻血を出して昇天していた。
空を見上げると、 die顎昂(だいがっこう)の最上階から、アナルバイブ男爵がこちらを見下ろしているのが見えた。
「……次は、……あんたの番よ。……私の羞恥心、……全部ぶつけて……合格発表、……不合格にしてやるんだから……っ!!」
私の装備は、もはや「着ている」ことさえ視認困難な領域に達していた。
勇者ラピスラズリ。
私は今、世界の倫理を敵に回し、史上最も「不適切な伝説」を完成させようとしていた。
空から静かに降りてきたのは、巨大な「黒塗りの円卓」。その上には、揃いのエプロンを鎧の上から着用し、眼鏡の奥で冷徹な理性を光らせる三人の女性たちが座っていた。
彼女たちの背後には、巨大なスタンプのような魔導兵器が浮遊している。そこには赤々と『不適切』の文字。
「……勇者ラピスラズリ。私たちは万象抹消統治機関『P.T.A.(Pandemic Termination Authority)』の常任理事。……あなたの戦いぶりを拝見しましたが、目に余ります」
中央に座るリーダー格の女性が、厳しい口調で断罪した。
「その装備。布面積がナノサイズ? 鎖のみで構成された吸着型? ……これは、我が国の教育方針における『健全な育成』を著しく阻害するものです。子供たちが真似をしたらどうするのですか?」
「え、……ええ!? 真似なんてしないでしょ! そもそも、これ、国王様から……!」
「言い訳は無用。あなたの描写は、この世界のレイティングを逸脱しています。……よって、本話をもって、勇者ラピスラズリという『存在』を、歴史のアーカイブから強制修正(デリート)します」
彼女が指をパチンと鳴らすと、周囲の景色が「砂嵐(ノイズ)」へと変わり始めた。
足元から、私の身体が白黒のドットになって崩れていく。物理的な攻撃ではない……物語そのものから「なかったこと」にされる、概念レベルの消去!
「う、嘘……っ! 私の身体が……消えて……!?」
「消えるのではありません。『修正』されるのです。あなたのナノビキニは、今から厚さ一メートルのダルマのような防寒着へと描き換えられます。……羞恥心を失ったあなたは、ただの無害な置物となるのです」
羞恥心をエネルギーにする私にとって、「不適切な露出を消される」ことは、死と同義だった。
視線が、評価が、消えていく。
私は、急速にパワーが失われていくのを感じて膝をついた。
「……だめ……。恥ずかしく……なくなっちゃう……っ。そんなの、……私じゃない……!」
その時だった。
ノイズに覆われた視界の端から、一人の男が飛び出してきた。
「待てぇい!! その修正、異議ありだ!!」
現れたのは、『無銘古布慄』のリーダー・大悟だった。
彼はP.T.A.の放つ消去波動(デリート・ウェーブ)に全身を焼かれながらも、泥まみれの学ランを振り乱して叫んだ。
「あんたたちエリートに何がわかる! 瑠璃さんのこの格好は……俺たち凡人にとっての、唯一の希望なんだ! 『正論』で塗り潰されたクソ面白くねえ世界に、初めて現れた『最高のバグ』なんだよ!!」
「……黙りなさい、不合格者。あなたは静かに、再試の準備をしていればいいのです」
「るせえ! 瑠璃さん! 恥ずかしがれ! もっと、もっと最高に恥ずかしがってくれ! 俺たちはあんたのその姿を……心の底から『不適切』だと思ってる! だから、……だからあんたは、誰よりも正しいんだ!!」
大悟の叫び。それは、正しい教育ではなく、歪んだ情熱。
けれどその「不適切な応援」が、私の冷え切った心に火をつけた。
「……そうよ。……そうだったわ。……誰かに『ダメ』って言われれば言われるほど、……私は……恥ずかしくて……!!」
私は、消えかかっていた右手を天に突き出した。
「……お母さんたちに怒られる格好をして……! 泥まみれの男の人たちに囲まれて……! 世界中から『不適切』って言われながら戦うなんて……!! ……最高に……最高に恥ずかしくて、……気持ちがいいじゃないのよぉぉぉぉ!!」
ドガァァァァァン!!
私のナノビキニが、眩いばかりの「背徳の紫」に発光した。
P.T.A.の修正プログラムを、逆流する羞恥心の熱量が焼き尽くす。
描き換えられようとしていた私の装備は、あろうことかさらに縮小し、光輝く『点(ドット)』となって私の身体を繋ぎ止めた。
「な……っ!? 修正を……拒絶した!? 存在そのものが『不適切』の極致に達しているというの!?」
「――『宇良朽孨咢(うらぐちにゅうがく)』!!」
私は、世界の理を無視する「裏口」のコードを王授剣に纏わせ、P.T.A.の円卓目掛けて突進した。
正論という名の壁を、羞恥という名の爆薬でぶち破る。
「あんたたちの『正しい世界』なんて、……私がナノビキニで、……めちゃくちゃにしてあげるんだから!!」
一閃。
P.T.A.のスタンプが真っ二つに割れ、黒塗りの円卓が次元の彼方へと吹き飛んだ。
砂嵐が止み、世界が色彩を取り戻す。
「……はぁ……、はぁ……。……勝った……の?」
私は、大悟たちの方を振り返った。
彼らは、あまりの光景(と私の露出)に、全員鼻血を出して昇天していた。
空を見上げると、 die顎昂(だいがっこう)の最上階から、アナルバイブ男爵がこちらを見下ろしているのが見えた。
「……次は、……あんたの番よ。……私の羞恥心、……全部ぶつけて……合格発表、……不合格にしてやるんだから……っ!!」
私の装備は、もはや「着ている」ことさえ視認困難な領域に達していた。
勇者ラピスラズリ。
私は今、世界の倫理を敵に回し、史上最も「不適切な伝説」を完成させようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
冴えない建築家いずれ巨匠へと至る
木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」
かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。
安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。
現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。
異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです
ちありや
ファンタジー
クラスメートからのイジメが元で死んでしまった主人公は、その報われぬ魂を見かねた女神によって掬い上げられ異世界で転生する。
女神から授けられた不思議な剣を持つことで、彼はあらゆる敵に打ち勝ちあらゆる難問を解き明かし、あらゆる女性を虜にする力を手に入れる。
無敵の力を手に入れた男が次に望む物は果たして…?
不定期連載(7〜10日間隔で出していく予定)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる