呼び出された異世界は戦争絶えない世界でした〜人類の旗の元に集う戦友たちは銃を取って立ち上がる〜

酒井 曳野

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第2章 対エルフ迎撃作戦

第62話

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――ザンッ!

「あら?」

 その時、エイシェトの左腕が無くなった。振り返ると浮遊しながら大剣を構えた男がおり、次の攻撃を繰り出そうとしていた。

「防壁」

――ガギンッ!

 男の大剣はエイシェトに届く事はなかった。

「流石に2回は斬らせてくれぬか」

「当然です。しかしあなたのその成立ち……脆弱なエルフといえども戦士なのでしょう?レディに対して背後からの不意打ちとは褒められた事ではございませんよ?」

 エイシェトが拳を振るう。その男は大剣を盾のように使って防ぐ……がエイシェトの拳撃はそんな物では防げない。

 その男は地上付近まで落下する。しかし地面に激突する寸前で体勢を立て直し着地する。

「ぐうっ……何という重さだ。これがデモニアの力…グッ……」

 エイシェトはその男の目の前に接近する。既に再生した左腕でその男の顔を鷲掴みにし、そのまま地面に叩きつける。そして顔を鷲掴みにしたまま持ち上げ、もう一度地面に叩きつけた。

 その男の頭とぶつかった地面の岩は大きくひび割れた。地面が割れるくらいの威力でエイシェトは男の頭を岩に叩き付ける。
 
 その男はエイシェトよりも背が高い為、ゆっくりと空へ浮遊し持ち上げる。そしてパッと手を離したかと思うと今度は右脚の回し蹴りがその男の胴を直撃した。

 その男は地面を数メートル以上転がりながら近くの岩にぶつかる。その衝撃でぶつかった岩は粉々になった。

「あら?胴を両断するつもりでしたのに……頑丈ですね」

「や、やはり……デモニア…ゴホ…ゴホッ!……強いな」

「あなた如きに褒められても嬉しくありません、次で確実に殺します」

「そうか……ならばこの名を覚えておけ!我はこのエルフの部隊預かる指揮官ダロムだ。貴様の記憶にこの名を刻んでやろう」

「はあ……まあ覚える気もありませんが。それと私の後ろから斬りかかろうとしているのはあなたの親族かしら?」

 先程の銀色の髪を持つ女性が2本の剣をエイシェトに振り下ろす……が、やはり届かない。エイシェトが展開する防壁はあまりにも強固で、エルフが扱う武器では傷すら付けることができない。先程はただ油断していたに過ぎなかった。

 エイシェトは女性エルフの後ろに回り込み黒太刀でその女性の首を刎ね飛ばす。

「あらあら。本当にしぶとい方ですわね」

 しかし女性エルフの首の手前で大剣が間に入り込み、受け止められる。

 ダロムとかいう男があそこからあのタイミングで間に合うとは思わなかったエイシェトは自分の中でも評価を改める。

 が、それでもエイシェトが止まる事はない。その大剣を蹴り飛ばしダロムとその女性を吹っ飛ばす。2人はエイシェトから少し離れた位置で立て直す。

「父さん!無事ですか?!」

「アウリス!何故ここに来た!」

 2人がいきなり会話を始める。最上位種族であるデモニアを前にしてこの余裕とも思える行動には苛立ちを超えて尊敬に値するとエイシェトは心の中で祝福した。
 
「父さん?……ああ、娘でしたか。そこまであまり似ていませんね。まあこれから殺す事には変わりありませんが」

「このドワーフとの戦闘はデモニアが裏で手を引いていたという事か……」

「ですから違いますよ?我が主人はデモニアでもドワーフでもございません」

「主人だと?貴様のような凶悪な力を持つデモニアを打ち負かして屈服させるような奴が存在するのか?!」

と、アウリスが反応する。

「存在します。そんな我が主人は本当にお優しい御方なのです。この戦いが始まると察知した時も最初の一撃で戦意を奪い、撤退させようとしたのです。本当に優しく、本当に甘い御方です」

「………….……….」

 2人は黙ってその話を聞く。デモニアが主人と呼ぶ者の言うことが本当ならば、今の現状とあまりにもかけ離れている。

「あなた方も不思議だったのではないですか?指揮官である貴方は既に撤退しようとしているのに、その為の念話が出来ないことに……」

「まさか!貴様が?!」

 エイシェトは不敵に笑う。

「あなた方が素直に撤退してくれればそれで良かったのに……あなたは言いましたね?本国に援軍を要請しさらに多くの部隊を率いて戻ると。私、耳は良いんです。
 それを聞いて念話の妨害を続行致しました。あなた方が来る方向や部隊の規模も数日前から分かっていた事。エルフは互いに念話で意思疎通を図るのも有名な話。そうした魔法の対策と妨害を行う事なんて簡単です」

「なっ?!そんな馬鹿な!そんな長距離を探知できる魔法など存在しない!」

「信じる信じないは自由です。あなた方が撤退しても、いずれまたここに戻り、我が主人に牙を剥く事は確定的です。何度も言いますが、我が主人は優しい方なのです。他の種族にすら慈悲を与える。いや……与えてしまう。それはこの世界では命取りとなります。
 ならば私が徹底的に叩き潰し、もうこの地へ足を踏み入れようなどと思わないように徹底的に滅ぼしましょう。そうすれば僅かばかりでも主人の負担を減らせますから」


「き、貴様が念話を妨害したせいでどれだけの仲間が犠牲になったと思っている!今もだ!俺が撤退の指示を出さない限り、この無謀な攻撃は続けられるんだぞ!」

「エルフ兵の犠牲?そんなくだらない事は私の知る限りではございません。
 この後あなた方に起こる事はいたって単純です。私があなた方を殺し、他のエルフも殺します。誰1人として生きては帰しません。皆殺しにします。2度とこの地に足を踏み入れるなどという事を考えないようにね」

「我々はただでは死なんぞ!行くぞ、アウリス。我々の力を見せつけよ!」

「了解です!!」

「無駄な事です。せめて自害でもしていただければ私も楽ですし、あなた達も苦しまず楽に死ねるというのに……」

 ダロムとアウリスの2人は剣を構える。そして自身に〈身体強化魔法〉を5重でかける。

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