成り上がり覚醒者は依頼が絶えない〜魔王から得た力で自分を虐げてきた人類を救っていく〜

酒井 曳野

文字の大きさ
3 / 114
第1章 炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜

第2話

しおりを挟む








 
 その男について行き、西門を出ると話していた男とは別の集団がいた。

 全員で6人のパーティーだったみたいだ。全員がDランクの覚醒者だ。腕に付けている腕章の色でランクが分かる。
 職業クラス戦士ファイター射手アーチャーだな。装備だけでもある程度予想はできる。


 だけど、Dランクにしては装備が豪華だな……。でも放っている魔力の色はかなり薄い。覚醒者は魔力のコントロールをモンスター討伐を通じて学習するらしい。


 Dランク覚醒者なのに魔力の色が薄いってことは意図的に抑え込んでいるんだ。


 覚醒者なんて特に力を見せびらかしてこそなのに……どうしてだ?

 色々腑に落ちない事はあるけど金のためだ。詮索はしないでただついて行った。レインは持つように言われた荷物を背中に背負って歩く。
 

 中身は簡素な食料や武器か?とても軽い。これから行く場所で何か採取するのか?それとも討伐するモンスターの素材か?


 道中会話もほぼなく歩くだけの時間が続いた。レインと会話しないのはよくあることだけど、誰も口を開かないのはおかしい。しかし……金のためだ。そう何度も自分に言い聞かせた。


 
◇◇◇



「……ここだ」


 その目的地は案外近くにあった。街から2時間ほど歩いただろうか?

 途中から森の中に入った。この森はレインが住む街からも近いため、組合が覚醒者に依頼を出してモンスターを狩り尽くした場所だ。

 目の前には切り立った崖があり頂上を見ようとすると首が痛くなる。
 

 それくらいの高さだ。何故こんな所に?レインの中で既に芽生えていた不安が徐々に大きくなっていく感じがする。


「ここで……何を?」


 レインは基本的に自分から質問はしないようにしていた。臨時の荷物持ちである以上、口出しする事は御法度だからだ。


 そんな規則はないがこれまでの経験で学んだ。余計な事は言わないのが鉄則だ。ただ黙って言われて事を実行するのみだ。


 しかし込み上げてくる不安を抑え込む為、口を開いてしまった。


「ここにダンジョンがある。今朝方、見つけたんだ」


「……ダンジョン?」


『ダンジョン』

 モンスターが独自の生態系を築いた場所。モンスターから放たれる魔力によって空間や時空が歪み入り口と内部の広さや時間の感覚が狂ってしまう場所でもある。
 覚醒者やモンスターのランクと同様にFランク~Sランクまである。

 そのSランク覚醒者はレインが住む国『イグニス』でも現役は8人しかいないはずだ。
 
 攻略不可能とされたSランクダンジョン『魔王城』はSランク覚醒者が最低15人必要なんて言われてる。死者を出さずにクリアしたいなら30~40人は必要らしいが、全て噂話くらいでしか知らない。
 

 Fランクの中でも最底辺のレインとは縁のない世界だ。

 『ダンジョン』はいつでもどこでも発生する可能性があって覚醒者組合は常に担当区域に目を光らせている。動物を使役して監視したり、警備隊を巡回させるなどだ。

 そんなダンジョンがここにあるっていうのか?


「ダンジョンってさ?最初に見つけた奴は組合へ報告する義務があるだろ?」


「え、ええ……そうですね」


「報告してダンジョンから漏れてくる魔力量を組合が測定してランクを決める。そのランクに応じて最初に知らせた人に報酬が組合から出るよな?最高で100万だったか?」


「そ、そうですね。覚醒者認定を受ければ最初に教えられる事です」


「でもさぁ……報告しちまうとダンジョンの攻略権は組合に移っちまう。そこから『ギルド』が攻略権を組合から落札して……みたいな流れだけどさ」


「………………」


「そんなの金持ってる有名ギルドしか攻略できないだろ?俺らみたいな個人でパーティー組んでる奴らにはなかなかお目にかかれないんだよ。その落札したギルドからさらに下請けとして仕事を貰うとかしないと…な」


「な、何が……言いたいんですか?」


「まあ聞けよ?……俺らはDランクだ。ダンジョンなんてのはさ?…ほぼ毎日出現してるがその平均はDランクってされてるよな?」


「そ、そうなんです……かね?」


 レイン自身はモンスターを倒す力はないからその辺の事はよく分からない。モンスターと直接戦闘にならないように行動していたくらいだ。


「だったら俺たちが先にクリアしちまえばいいんじゃないか?そうすれば上の連中から素材も報酬も横取りされずに済むだろ?  
 Dランクのダンジョンなら俺たちで余裕にクリアできるだろうしな」


「そ、その後をついて行けば?」


「ああーそうだな。とりあえず入口を開けるか。……おい」


「りょーかい!」


 パーティーの1人が崖に手を当てる。するといきなり洞窟が出現した。洞窟といっても入り口からかなり急勾配な坂になっている。一回転けたら下まで転がり落ちるだろう。

 それにダンジョンから漏れる魔力を抑え込む結界を張っていたようだ。結界のスキル持ちがいたのか。
 

 モンスターは冒険者が放つ魔力を感知して襲いかかってくる事がある。

 それを抑え込みモンスターの感知を掻い潜る珍しいスキル〈結界〉をダンジョンを隠すために使ったのか。

 しかしそんな事よりもレインが驚愕したのは、そのダンジョンから溢れ出た魔力だ。
 
 魔力量はそこまで多くない。でも色がおかしい。漆黒だ。夜よりも深いと感じるほど真っ黒だ。


 今まで荷物持ちで経験したどのモンスターやダンジョンとも違う異質な魔力。


「……ここは…だめです」


「あん?」


「この色は……おかしい。行くにしてももっと人員を増やさないと」


「ああ…心配すんな。俺のパーティーメンバーはもう少しいるんだよ。荷物持ちを雇うために分散しててな」


「じゃ、じゃあ……ここで待つんですか?」


「そうだな……待つとしようか。多分2時間もしたらここに来るだろうよ。……じゃあお前が先に行って見ててくれよ!!」
 

ドガッ!!


「ぐぁッ!」

 リーダーの男はレインを蹴り飛ばして洞窟内へ吹っ飛ばした。当然反応も出来ず、受け身も取れないレインはまともにくらってしまう。そしてそのままダンジョン内を転がり落ちて行った。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...