Are you my……?

広瀬 晶

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 徒歩で帰宅する十五分程度の間に、会話らしい会話はなかった。ようやくまともに会話したのは、自宅にたどり着き、佐藤君がにんにくのよい香りのするペペロンチーノを作り終えてからだった。
「……何か、すみませんでした」
 彼が手にしていたフォークを一旦皿に置くと、硬い金属の音がした。
「何が?」
「態度、悪かったでしょ」
「そんなこと、思ってないよ。あの側にいた子、友達? 何か、揉めてたみたいだけど」
「揉めた、というか……」
 ブラウンの瞳が、濃さを増した気がした。その暗い色を見て、ごめん、と僕は彼に告げた。
「無理に訊く気はないから」
 彼の交友関係は知らないが、料理の腕は知っている。笑った顔も、優しい気遣いも。彼との生活は、それで十分成り立っている。彼のすべてを知る必要などない。
 そう思い引き下がろうとした僕に、彼は言った。
「別れ話、です」
 え、と唇から音が零れ落ちた。先程彼と一緒にいたのは、彼と同じく、大学生くらいの男の子だったはずだ。
「それって」
「……付き合ってたんです。もう、別れたけど」
 そうなのか。僕は曖昧に頷き返した。
「驚かないんですね」
「いや、驚いてるけど。これは、僕が聞いてもいい話?」
「村上さんが、嫌じゃないなら」
 嫌じゃないよと返すと、彼は「あなたとは何だか打ち明け話ばかりしてますね」と笑った。
「……俺が最初に付き合った子は、中三のとき同じクラスだった女の子で。気が合ったし、一緒にいて楽しかったけど。手を繋ぎたいとか、キスしたいとか、全然思わなくて。少しずつ、上手く行かなくなって、高校に入ってから別れたんです」
 中学で彼女、という時点で既に着いていけていないのだが、僕は黙って彼の話に耳を傾けた。
「女子にはそういう感情が持てなかったけど。そのうち、男なら大丈夫かも、って気づいて。悩みはしたんですけど、自分自身どうしようもないし……」
 うん、と僕は言った。正直、それ以外に言うことがなかった。
「さっきのやつとは、大学で知り合って。真面目に、付き合ってきたつもりでした。けど」
「けど?」
「浮気、されて」
 浮気。別れ話と同じくらい自分には縁遠い言葉だ。
「ただの遊びだって。本当に好きなのは俺だって。言われたけど。もう無理だと思ったから、今月頭に別れたんです」
 彼の話を聞いて、先程の冷たい表情の理由は分かった。いくら彼が優しくとも、遊びで浮気するような相手にまで優しくできるとは限らない。むしろ、できなくて当然だと思う。
「俺はもう、関わりたくないんですけど、向こうがやり直したいとか言ってきて。それを、断ってるところだったんです」
「そう……」
 やりきれない、と僕は思い、彼の顔を見る。悲しそうで、かわいそうで。なぜか自分まで苦しくなる。

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