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週明け、仕事終わりに四谷さんが食事へと誘ってくれた。恋人と仲直りしたことは、職場で顔を合わせた瞬間から分かっていた。彼の恋愛話も一度詳しく聞いてみたかったので、素直に誘いを受けることにした。
居酒屋で一通り注文を済ませ、生ビールの入ったジョッキを持ち上げる。
「お疲れ」
「お疲れさまです」
軽く乾杯して、互いに喉を潤す。
「あの日は、迷惑をかけてすまなかった」
驚きはしたが、迷惑だとは思わなかった。四谷さんは上司であると同時に、大切な友人でもある。
「お相手の方と上手く行ったみたいで、よかったです」
率直に気持ちを伝えると、四谷さんがありがとうと笑った。
「伝えきれていなかった気持ちを、やっと伝えることができた気がする。それで昨日から、恋人に昇格してもらった」
「おめでとうございます」
もう一度僕はジョッキを上げ、彼と乾杯をした。
「……そういえば」
「はい」
「あれが、君の片想いの相手か?」
からかうような口振りに、そうですね、と応じる。
「イケメンだな」
外見が整っていることに、否定の余地はない。
「あの見た目なら、女子がほっとかないだろうな」
おそらくそうだと思う。長身に整った顔立ち、温厚な性格、加えて料理上手。女性にモテる要素を備えている。
「寄ってくるのは女だけとは限らないが」
「……あの」
僕には今、とても困っていることがあった。
「彼には、別に何の意図もなくて。僕が彼を好きなせいで、そう感じるだけかもしれないのですけれど。その」
「回りくどい。何だ」
「佐藤君が、甘すぎる、ような気が……」
甘すぎる。復唱して、四谷さんが笑った。
あの日、四谷さんと別れた後。佐藤君と一緒に帰宅した僕は、久々に彼の手料理をごちそうになった。その味にほっとしてしまったことを自覚し、何だか怖くなる。胃袋を掴まれるというのは、こういうことなのかもしれない。慣れるな、と僕は自分の胃袋に言い聞かせた。
「村上さん……? お口に合いませんでしたか」
無意識のしかめっ面を解いて、ううん、と笑ってみせる。
「おいしい。ごめんね、帰ってきたばかりでこきつかって」
「気にしないでください。一人分作るより二人分作る方が楽ですし。それに、村上さん相手だと、作り甲斐があります」
「作り甲斐?」
「はい。食事の仕方が綺麗で、見ていて気持ちがいいです。あと、何作っても誉めてくれるし」
好き嫌いがほとんどない上に、佐藤君の料理がおいしすぎるだけのことだが。誉められるのが嬉しい、というのは分かる。クールな顔が、笑みに綻ぶ。
好き、という一言に。そんな意図はないと分かっていながらもドキドキしてしまう。片想いの相手との同居。自分は、現在考えうる限り最悪の状況に陥っているのかもしれない。
僕は彼から視線を逸らして、ごはん茶碗に手を伸ばした。
居酒屋で一通り注文を済ませ、生ビールの入ったジョッキを持ち上げる。
「お疲れ」
「お疲れさまです」
軽く乾杯して、互いに喉を潤す。
「あの日は、迷惑をかけてすまなかった」
驚きはしたが、迷惑だとは思わなかった。四谷さんは上司であると同時に、大切な友人でもある。
「お相手の方と上手く行ったみたいで、よかったです」
率直に気持ちを伝えると、四谷さんがありがとうと笑った。
「伝えきれていなかった気持ちを、やっと伝えることができた気がする。それで昨日から、恋人に昇格してもらった」
「おめでとうございます」
もう一度僕はジョッキを上げ、彼と乾杯をした。
「……そういえば」
「はい」
「あれが、君の片想いの相手か?」
からかうような口振りに、そうですね、と応じる。
「イケメンだな」
外見が整っていることに、否定の余地はない。
「あの見た目なら、女子がほっとかないだろうな」
おそらくそうだと思う。長身に整った顔立ち、温厚な性格、加えて料理上手。女性にモテる要素を備えている。
「寄ってくるのは女だけとは限らないが」
「……あの」
僕には今、とても困っていることがあった。
「彼には、別に何の意図もなくて。僕が彼を好きなせいで、そう感じるだけかもしれないのですけれど。その」
「回りくどい。何だ」
「佐藤君が、甘すぎる、ような気が……」
甘すぎる。復唱して、四谷さんが笑った。
あの日、四谷さんと別れた後。佐藤君と一緒に帰宅した僕は、久々に彼の手料理をごちそうになった。その味にほっとしてしまったことを自覚し、何だか怖くなる。胃袋を掴まれるというのは、こういうことなのかもしれない。慣れるな、と僕は自分の胃袋に言い聞かせた。
「村上さん……? お口に合いませんでしたか」
無意識のしかめっ面を解いて、ううん、と笑ってみせる。
「おいしい。ごめんね、帰ってきたばかりでこきつかって」
「気にしないでください。一人分作るより二人分作る方が楽ですし。それに、村上さん相手だと、作り甲斐があります」
「作り甲斐?」
「はい。食事の仕方が綺麗で、見ていて気持ちがいいです。あと、何作っても誉めてくれるし」
好き嫌いがほとんどない上に、佐藤君の料理がおいしすぎるだけのことだが。誉められるのが嬉しい、というのは分かる。クールな顔が、笑みに綻ぶ。
好き、という一言に。そんな意図はないと分かっていながらもドキドキしてしまう。片想いの相手との同居。自分は、現在考えうる限り最悪の状況に陥っているのかもしれない。
僕は彼から視線を逸らして、ごはん茶碗に手を伸ばした。
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