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10(買い物)
しおりを挟むここは逆らうべきではないと本能が告げていたので、僕は少し距離を取りつつ、なんかなあ、と口火を切った。
「妹と君、何か仲よさげやったから。……ちょい、嫉妬した」
冗談みたいには、言えなかった。
これだと、ちっちゃいこどもみたいやな。
そう思いながら、瀬戸を見る。
「どうしたん? 今俺、ツッコミ待ちやねんけど」
彼が真顔で少し固まっていて、引かれたかな、と少し焦る。
「瀬戸?」
「いや、何でもない」
「そうか? 何か微妙な顔してるで、君」
「そんなことない」
あまりにキッパリと言い切るので、それ以上突っ込むことはできなかった。
「兄さん、瀬戸さん。お待たせしました」
そこへ妹が戻ってきたので、微妙な空気は一旦途切れた。
帰り際、妹は僕と瀬戸とを見比べて言った。
「瀬戸さん……頑張ってな」
「ん、ありがとう」
「何の話や?」
こっちの話、と二人の声がシンクロする。俺の妹やのに、という気持ちと、俺の親友やぞ、という気持ちとが同時に生まれ、もはや誰に嫉妬しているのか分からない。まあ、自分にとって大切な二人が、険悪にしているよりは今の方がずっといいはずだ。そう思うことにした。
そのようにして、放課後の買い物は幕を閉じた。
僕と彼の関係は、それ以降も特に変わることがなかった。後になって思えば、僕は鈍感すぎたし、彼は繊細すぎた。小さな違和感を抱えながらも、僕らは一緒に次の季節へと移っていった。
end.
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