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年忘れ
1
しおりを挟むグレーのカーテンがほんの少しだけ開いていた。その隙間から差し込む、朝の光。
「ん……」
身動ぎして向きを変えると、視界に飛び込んできたのは、さらさらの黒髪に長い睫毛。
「よ、四谷?」
何で、四谷が。
慌てて上半身を起こすと、布団が肩から滑り落ちた。朝日にさらされた自分の肌が、異様に白く見える。
「……っ」
どうして、裸なんだ。
服を脱いだ記憶はない。それどころか、この部屋を訪れた記憶さえ。
そうっと僕はベッドを降り、床上に落ちている衣類を引き寄せた。とりあえず服を着よう、そう思ったのだが。
「……」
僕は言葉を失った。下着の横に落ちていたそれは。折り目のついた、紺色のスカート。
「若葉……?」
後ろから名前を呼ばれ、びくっと肩が震えた。静かに、そちらを振り返る。
「四谷」
「まだ、起きるには早くないか?」
気だるげな声に、色気が滲んでいた。
「若葉?」
何も答えることができずにいると、気遣うように彼は言った。
「どうした? 具合でも悪いか」
「いや……」
結局裸のまま彼の元へと戻る。
「昨日のことが、上手く思い出せない」
一拍置いて、くすっと四谷が笑った。
「かなり酔ってたからな」
酔った理由には心当たりがあった。しかし、それ以外は分からないことだらけだ。
「昨日、四谷と会う約束してたっけ?」
してない、と四谷は答えた。
「約束はしてないが、連絡をもらったから」
「連絡……」
どうしてそんなことになったのか。僕は必死で昨日の記憶を手繰り寄せた。
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