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第24話 星座トラベラーズチェック(後編)
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※この話は第23話の後編です。
「オバちゃん! 見てみてー! 飛ばすよー!」
出発当日の夜明け前、ホテルの部屋で寝ていた私はガイアの元気すぎる声で目を覚ました。眠い目をこすって声のする方を見た私は、思わず叫んだ。
「それはダメ!!」
部屋の大窓を開けたガイアが、手中の物を飛ばすべく大きく振りかぶった。その手にはキラキラと光る紙飛行機。間違いない、星座トラベラーズチェックの一枚だった。
「それー!」
私の言葉を無視して、ガイアは紙飛行機を窓の外に放った。
紙飛行機はたちまち綺麗な弧を描いて、流れ星のように星座の中へと吸い込まれていった。
駆け寄った私は、ガイアの手から残りのトラベラーズチェックをむしり取った。
「オバちゃんひどいよー! おばあちゃんに言いつけてやるー!」
寝転がって駄々をこねるガイアを無視して残りを確認すると、私の復路の券は無事だと分かった。
「スパルタさんにお願いして、ガイアくんの分を再発行してもらおう」
あの優しいスパルタさんなら、愛想よく応じてもらえるだろうと思った。
☆**☆**☆
「星座トラベラーズチェックの再発行は、弊社に瑕疵のない限り認められません」
スパルタさんは、にこやかだが厳しい口調で言い切った。
「そこをなんとか。まだ7歳の子どもがしたことなんです」
「……大変失礼ですが、あなた方地球人は、特に日本人の方は子どもを甘やかしすぎかと思います」
「え?」
スパルタさんの目は笑っていなかった。
「子どもと言えども立派な生命体です。自ら取った行動には責任を取る義務があります。双子座連邦国では、未成年も大人と等しい扱いを受けます」
「じゃあ、トラベラーズチェックの代金を支払うことで解決できませんか?」
「あのトラベラーズチェックは、生命体の『一生分の労働力』が対価となります。よってガイアさまには、この国に残って対価分の労働をしていただきます」
スパルタさんの口調から、冗談とは到底思えなかった。
「そんなこと、地球の家族が知ったら大変なことになりますよ!」
「ご心配には及びません。既にスペアをご用意いたしました」
スパルタさんはそう言うと、ホテルのロビーのスタッフに合図をした。
「こちらをどうぞ」
スタッフが連れて来たのは、ガイアそっくりの子どもだった。
慌てて後ろを振り返ると、ロビーのソファで眠りこけているガイアの姿が目に入った。
「この子は一体?」
私が目の前を指さして聞くと、スパルタさんは白い歯を見せて笑った。
「双子座と名がつく以上、同じものを作り出すことは他愛もないことです。
遺伝上も同じですから、DNA鑑定をしても問題ありません。
性格は、明野さまに従うようにインプットさせていただきました」
スパルタさんがスペアのガイアの背中に手をやり、私の方に押しやった。スペアは無邪気に笑って口を開いた。
「空美オバちゃん、ボクこれからは我がまま言わないで、良い子になるね」
これまでのガイアの暴れん坊ぶりとは、似ても似つかぬ従順さだった。
「本物のガイアさまのことは、私どもにお任せください。
双子座連邦国の誇りにかけて、立派な人格者に育てましょう」
「……よろしくお願いします」
ガイアそっくりの声と笑顔を前にして、後ろの子どもを振り返る気持ちは、私の中から宇宙の塵となって消えていた。
(了)
◎前編からお読みくださり、誠にありがとうございます。
わんぱくな子がある日とつぜん良い子になったら、宇宙帰りかもしれません。
「オバちゃん! 見てみてー! 飛ばすよー!」
出発当日の夜明け前、ホテルの部屋で寝ていた私はガイアの元気すぎる声で目を覚ました。眠い目をこすって声のする方を見た私は、思わず叫んだ。
「それはダメ!!」
部屋の大窓を開けたガイアが、手中の物を飛ばすべく大きく振りかぶった。その手にはキラキラと光る紙飛行機。間違いない、星座トラベラーズチェックの一枚だった。
「それー!」
私の言葉を無視して、ガイアは紙飛行機を窓の外に放った。
紙飛行機はたちまち綺麗な弧を描いて、流れ星のように星座の中へと吸い込まれていった。
駆け寄った私は、ガイアの手から残りのトラベラーズチェックをむしり取った。
「オバちゃんひどいよー! おばあちゃんに言いつけてやるー!」
寝転がって駄々をこねるガイアを無視して残りを確認すると、私の復路の券は無事だと分かった。
「スパルタさんにお願いして、ガイアくんの分を再発行してもらおう」
あの優しいスパルタさんなら、愛想よく応じてもらえるだろうと思った。
☆**☆**☆
「星座トラベラーズチェックの再発行は、弊社に瑕疵のない限り認められません」
スパルタさんは、にこやかだが厳しい口調で言い切った。
「そこをなんとか。まだ7歳の子どもがしたことなんです」
「……大変失礼ですが、あなた方地球人は、特に日本人の方は子どもを甘やかしすぎかと思います」
「え?」
スパルタさんの目は笑っていなかった。
「子どもと言えども立派な生命体です。自ら取った行動には責任を取る義務があります。双子座連邦国では、未成年も大人と等しい扱いを受けます」
「じゃあ、トラベラーズチェックの代金を支払うことで解決できませんか?」
「あのトラベラーズチェックは、生命体の『一生分の労働力』が対価となります。よってガイアさまには、この国に残って対価分の労働をしていただきます」
スパルタさんの口調から、冗談とは到底思えなかった。
「そんなこと、地球の家族が知ったら大変なことになりますよ!」
「ご心配には及びません。既にスペアをご用意いたしました」
スパルタさんはそう言うと、ホテルのロビーのスタッフに合図をした。
「こちらをどうぞ」
スタッフが連れて来たのは、ガイアそっくりの子どもだった。
慌てて後ろを振り返ると、ロビーのソファで眠りこけているガイアの姿が目に入った。
「この子は一体?」
私が目の前を指さして聞くと、スパルタさんは白い歯を見せて笑った。
「双子座と名がつく以上、同じものを作り出すことは他愛もないことです。
遺伝上も同じですから、DNA鑑定をしても問題ありません。
性格は、明野さまに従うようにインプットさせていただきました」
スパルタさんがスペアのガイアの背中に手をやり、私の方に押しやった。スペアは無邪気に笑って口を開いた。
「空美オバちゃん、ボクこれからは我がまま言わないで、良い子になるね」
これまでのガイアの暴れん坊ぶりとは、似ても似つかぬ従順さだった。
「本物のガイアさまのことは、私どもにお任せください。
双子座連邦国の誇りにかけて、立派な人格者に育てましょう」
「……よろしくお願いします」
ガイアそっくりの声と笑顔を前にして、後ろの子どもを振り返る気持ちは、私の中から宇宙の塵となって消えていた。
(了)
◎前編からお読みくださり、誠にありがとうございます。
わんぱくな子がある日とつぜん良い子になったら、宇宙帰りかもしれません。
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