6 / 7
6
「どういうことですか、父上! まるでわたしが罪人のような言いぐさではないですか!」
あれだけ言われたにも関わらず、デニスは国王を再び父と呼ばわった。
国王がギロリとデニス達を睥睨すると、彼らは竦み上がる。
「あれだけのことをしておいて、罪人ではないと? 無実の公爵夫人に婚約破棄を叫んだことも国の恥であるが、一番の問題はそれではない。諸外国の要人の前で、未来の王太子妃たる公爵夫人を突き飛ばしたことだ」
「あ、あれは、グレゴリーが!」
「で、殿下! あれは殿下がやれと命じたのではありませんか!」
罪を突きつける国王の前で、デニスと騎士団長の次男が見苦しいやりとりをする。
「そ、それではわたし達は罪にはなりませんね!」
「そうです! 僕達は無関係です!」
宰相の三男と祭司長の末子が嬉々として主張したが、国王は冷酷なまでの瞳でそれを撥ねつけた。
「……これほどまでの卑劣な者達を今まで野放しにしておったとは、己が情けないわ。懐妊している夫人を突き飛ばし嘲笑したとあれだけの騒ぎになったというのに、おまえ達はまだ事の重大さが分からぬのか?」
「ですが、メリッサは実際には身籠もっていませんでした! ですからわたしは無罪です!」
「──この愚か者めが!!」
空気を震わすような大音量で、国王が一喝した。
「たとえ公爵夫人が身籠もってなかろうと関係ない。諸外国の重鎮があれを見て、『王位を継げぬ王子が、当てつけで王太子妃になる夫人の子を流そうとした』と受け取るのは必至。彼らは間違いなくそれぞれの王にそう報告するであろうよ」
「そんな……! わたしにそんな意図はありませんでした!」
「意図があろうとなかろうと、未来の王になるかもしれぬ子を流そうとしたと思われることをしたのだ。おとなしく罰に処されるのだな」
にべもなく言い切る国王に、デニス達が愕然とする。しかし、何を思ったかデニスが昂然と頭を上げて叫んだ。
「メリッサの子がどうなろうと構わないではないですか! わたしは父上の唯一の王子です! わたしこそが未来の王と呼ばれるのにふさわしい!」
こんなに説明してもまだ理解できないのかと、周囲の者達は脱力する。
無能者の烙印を押されたのに、なぜここまで自分が王になれると思いこんでいるのか。
「──陛下、先程申した三公家のお話が中断されているようなのですが、彼にはそこから話した方が良いのでは?」
「あ、ああ、そうだな。そういえば、話しそびれておったわ」
モスカート公爵が間に入ってきて、国王は重要なことを伝えていなかったことを思い出した。
「──我がマーベリン王国では、国王はモスカート公爵家、マヌエル公爵家、ハイランダー公爵家の三公爵家から選ばれる。ただし、一代限りだとなにかと外交面で不便であるし、余程問題のない限りは、数代は王が選出された公爵家が王家とされる。……たまたま王家に生まれたからといって、そのまま国王になれるものではないのだ」
「なっ、そんな、王家が絶対のものではないなんて……! 三公家だと……? そんな制度知らない……!」
驚愕の表情で叫ぶデニスを周りの者達は哀れな者を見るような目でみつめた。
「その三公家での会議で、おまえは普段の振る舞いから、王位継承権の資格なしとされた。……まあ、順当だな。身分に驕って周囲に威張り散らし、そのくせ王子としての勉学もろくに修めず、理解していなければならぬ三公家のことも知らぬ始末とは、教育係が嘆くのも当然だな」
「なっ、わたしは……っ!」
父である国王ならびに周囲の評価がそのようなものであったと知ったデニスは屈辱感からか顔を真っ赤にする。
かつての息子に国王は溜息を一つ付くと、厳めしく表明した。
「立太式は流れたが、この宣言をもって、マヌエル公サヴェリオを正式に王太子とする。──そして、一月の後、我は退位することとする」
あれだけ言われたにも関わらず、デニスは国王を再び父と呼ばわった。
国王がギロリとデニス達を睥睨すると、彼らは竦み上がる。
「あれだけのことをしておいて、罪人ではないと? 無実の公爵夫人に婚約破棄を叫んだことも国の恥であるが、一番の問題はそれではない。諸外国の要人の前で、未来の王太子妃たる公爵夫人を突き飛ばしたことだ」
「あ、あれは、グレゴリーが!」
「で、殿下! あれは殿下がやれと命じたのではありませんか!」
罪を突きつける国王の前で、デニスと騎士団長の次男が見苦しいやりとりをする。
「そ、それではわたし達は罪にはなりませんね!」
「そうです! 僕達は無関係です!」
宰相の三男と祭司長の末子が嬉々として主張したが、国王は冷酷なまでの瞳でそれを撥ねつけた。
「……これほどまでの卑劣な者達を今まで野放しにしておったとは、己が情けないわ。懐妊している夫人を突き飛ばし嘲笑したとあれだけの騒ぎになったというのに、おまえ達はまだ事の重大さが分からぬのか?」
「ですが、メリッサは実際には身籠もっていませんでした! ですからわたしは無罪です!」
「──この愚か者めが!!」
空気を震わすような大音量で、国王が一喝した。
「たとえ公爵夫人が身籠もってなかろうと関係ない。諸外国の重鎮があれを見て、『王位を継げぬ王子が、当てつけで王太子妃になる夫人の子を流そうとした』と受け取るのは必至。彼らは間違いなくそれぞれの王にそう報告するであろうよ」
「そんな……! わたしにそんな意図はありませんでした!」
「意図があろうとなかろうと、未来の王になるかもしれぬ子を流そうとしたと思われることをしたのだ。おとなしく罰に処されるのだな」
にべもなく言い切る国王に、デニス達が愕然とする。しかし、何を思ったかデニスが昂然と頭を上げて叫んだ。
「メリッサの子がどうなろうと構わないではないですか! わたしは父上の唯一の王子です! わたしこそが未来の王と呼ばれるのにふさわしい!」
こんなに説明してもまだ理解できないのかと、周囲の者達は脱力する。
無能者の烙印を押されたのに、なぜここまで自分が王になれると思いこんでいるのか。
「──陛下、先程申した三公家のお話が中断されているようなのですが、彼にはそこから話した方が良いのでは?」
「あ、ああ、そうだな。そういえば、話しそびれておったわ」
モスカート公爵が間に入ってきて、国王は重要なことを伝えていなかったことを思い出した。
「──我がマーベリン王国では、国王はモスカート公爵家、マヌエル公爵家、ハイランダー公爵家の三公爵家から選ばれる。ただし、一代限りだとなにかと外交面で不便であるし、余程問題のない限りは、数代は王が選出された公爵家が王家とされる。……たまたま王家に生まれたからといって、そのまま国王になれるものではないのだ」
「なっ、そんな、王家が絶対のものではないなんて……! 三公家だと……? そんな制度知らない……!」
驚愕の表情で叫ぶデニスを周りの者達は哀れな者を見るような目でみつめた。
「その三公家での会議で、おまえは普段の振る舞いから、王位継承権の資格なしとされた。……まあ、順当だな。身分に驕って周囲に威張り散らし、そのくせ王子としての勉学もろくに修めず、理解していなければならぬ三公家のことも知らぬ始末とは、教育係が嘆くのも当然だな」
「なっ、わたしは……っ!」
父である国王ならびに周囲の評価がそのようなものであったと知ったデニスは屈辱感からか顔を真っ赤にする。
かつての息子に国王は溜息を一つ付くと、厳めしく表明した。
「立太式は流れたが、この宣言をもって、マヌエル公サヴェリオを正式に王太子とする。──そして、一月の後、我は退位することとする」
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!
冬吹せいら
恋愛
キリア・モルバレスが、令嬢のセレノー・ブレッザに、顔面をナイフで切り付けられ、傷を負った。
しかし、セレノーは謝るどころか、自分も怪我をしたので、モルバレス家に罰金を科すと言い始める。
話を聞いた、キリアの姉のスズカは、この件を、親友のネイトルに相談した。
スズカとネイトルは、お互いの身分を知らず、会話する仲だったが、この件を聞いたネイトルが、ついに自分の身分を明かすことに。
そこから、話しは急展開を迎える……。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
とある婚約破棄の事情
あかし瑞穂
恋愛
「そんな卑怯な女を王妃にする訳にはいかない。お前との婚約はこの場で破棄する!」
平民の女子生徒に嫌がらせをしたとして、婚約者のディラン王子から婚約破棄されたディーナ=ラインハルト伯爵令嬢。ここまでは、よくある婚約破棄だけど……?
悪役令嬢婚約破棄のちょっとした裏事情。
*小説家になろうでも公開しています。
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
婚約破棄ですか……。……あの、契約書類は読みましたか?
冬吹せいら
恋愛
伯爵家の令息――ローイ・ランドルフは、侯爵家の令嬢――アリア・テスタロトと婚約を結んだ。
しかし、この婚約の本当の目的は、伯爵家による侯爵家の乗っ取りである。
侯爵家の領地に、ズカズカと進行し、我がもの顔で建物の建設を始める伯爵家。
ある程度領地を蝕んだところで、ローイはアリアとの婚約を破棄しようとした。
「おかしいと思いませんか? 自らの領地を荒されているのに、何も言わないなんて――」
アリアが、ローイに対して、不気味に語り掛ける。
侯爵家は、最初から気が付いていたのだ。
「契約書類は、ちゃんと読みましたか?」
伯爵家の没落が、今、始まろうとしている――。