吸血鬼ですが、能力も吸血衝動もありません。

透織

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従兄弟

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「そっか、薫は覚えてないよね。まだ小さかったから」

「そう言えばそうですね。さなり君と同い年なんですよ」


「さなり兄上と?では、学園も同じところに?」
初耳ばかりで頭をフル回転させながら考える。会った記憶なんて無い。



「そうだよ。同じ歳だからさなりとは、よく会っていたんだけど……そのうち、会わせようね」
少し緊張する気がする。



「大丈夫、あの子は小さい子好きだからね」
小さい子?僕が?え?身長が伸び悩んでいるのを気にしている僕にそれは禁句だ。



「先生」

「ごめんごめん!そう言う意味で言った訳では無いんだけど…!薫、その目怖いよ!」

「樹央先生……」
呆れたような顔をして尊さんは、伯父上を見た。



「自分より年下の子って言いたかったんだ!!」

「もういいですよ」
必死に言い訳している伯父上を横目にため息をつく。


実際、年齢の平均より僕は全体的に平均値には程遠い朱李と同じぐらいだったりする。
結構気にしている……





「頭を使い過ぎると身体の成長に行く栄養が頭に行くと聞きますし、薫君の身体は間違ってないのかも知れませんよ?」

「え、そんな言い伝えありますか?」 


「ええ、人間の場合頭部の髪の毛が薄くなる人もいらっしゃいますよ」  
うんうんと頷く尊さんの髪を見るが薄い気配は無い……
あまりこの迷信は信用しないようにしよう。








その数日後、僕達の従兄弟となる存在に直ぐ会うことになる。







_________________。




「さなり兄上は、いつまで屋敷に居るおつもりですか?」
末の弟からの厳しい言葉がさなり兄上に刺さる。

「酷いな、煌。薫を独り占めにしたい気持ちは分からんでもないが束縛すると嫌われるぞ?」
さすが長男、さらりと言葉で返した。その言葉に煌も眉間に皺を寄せた。




コンコン
「失礼するよ?」

煌からの買い言葉が始まりそうになった時、ノックがされ伯父上が入って来た。




「失礼する」

その後ろから、伯父上の雰囲気にも似た青年が入って来た。言わずもがな、美人である。




「お、紫央しおう!どうしてここに?」
どうやら兄上は知り合いのようだ。


「どうして?ではないだろ!!学園を休み過ぎだ!!」
紫央と呼ばれた青年は仲良さそうに兄上に返した。

ん?敬語無しでと言うことは……



「お、久しぶりだな。薫坊ちゃんに、煌坊ちゃん」
坊ちゃん……?

「ぶはははははっ!!!!ぼ、坊ちゃんっ!!!し、おぅっ!まだそんな呼び方っしてるのか!?ひぃっひひひひひっ!!」
笑っているのは兄上だけで、僕も煌も固まっている。
伯父上は、……よく見たら肩が震えているので笑いを堪えているのだろう……。


後で今日1日何も無いところでつまずく魔術を掛けておこう……。





「お久しぶりですね。……紫央さん。坊ちゃんは辞めていただけますか?」
殺気立つ煌は、怒りと恥ずかしさを出しながら紫央と言う青年に言った。
 
どうやら煌は、面識あるようだ。



「薫はっ、覚えてないよ、ねっ?この前話していた、うちの息子だよ。紫央って言うよ……ふっ」
あ、これは笑いを堪えれているようでツボが崩壊するやつだ。
伯父上は、笑い掛けながらもなんとか、雑ながら従兄弟を紹介した。



「そっか、薫坊ちゃんはまだ小さい時にしか会ってないからか。紫央だ。さなりとは腐れ縁だ。それにしても大きくなったな~?あんなに小さかったのにな~」
そう言ってベッドの端に座っていた僕に近付き、、


「!?」「紫央!?」


脇の間に手を入れて抱き上げた。


そ、う……高い高いのように……




「おお、結構大きくなったな!でもまだ軽いからもっと食べないと大きくなれないぞ?」

傍から見ても高い高いしているようにしか見えないだろう。
紫央さんは悪気はないのか、にこにこして僕を持ち上げている。





「!!!」「ぶはっ」

「紫央さん!!」

煌は、紫央さんの腕を掴んだ。


「離していただけますか!?」
僕は、放心状態でその光景をぼーと眺めていた。もちろん、ぶらーーんとなっている状態でた。


「なんだ?煌もして欲しいのか?」
ん?と、まるで幼い子供に言うような言い方だった。


「違います!!!薫兄様を離してください!!」
ちょっと殺気だった様子で紫央さんの腕を掴んだ。



「分かった分かった。次は、煌の番だからな?」
子どもに言い聞かせるような言い方だ。
何も分かってない……。



「違うって言ってるでしょう?!」
さすがの煌も冷静さを失っているようだった。






うん、早く降ろして欲しい。







ーーーーーーーーーーーーー。



「大丈夫ですか?!薫兄様?!」
その後、降ろされた僕に煌は、ペタペタと身体を触って確認して来た。

煌も紫央さんに抱き上げられ掛けたが全力で拒否して逃れていた。
少しばかり、紫央さんが悲しそうな顔をしていたのは見なかったことにした。









    
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