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第1章 始まり
門出
しおりを挟む出発の朝――
目が覚めても、なんだかまだ夢みたいだった。
俺が“冒険者”になる日が、本当に来るなんて。
布団から起き上がり、静かに寝床を抜け出してリビングに向かうと――
「……うわっ」
テーブルの上に、所狭しと並べられたごちそう。
焼きたてのパンに、チーズオムレツ。旬の果物を山盛りにしたサラダ。
「わあー、母さん……俺の好きなもの、こんなにたくさん……!」
母さんはエプロン姿のまま、ちょっと照れくさそうに笑った。
「当たり前でしょ。しばらくあなたに朝ごはんを作ってあげられないんだから。せめて、最後くらいは好きなもの
いっぱい食べて、元気に行ってほしかったの」
母さんの声を聞いて、胸がぐっと熱くなった。
「……ありがとう、母さん。めちゃくちゃ嬉しい」
なんかもう、ご飯見るだけで泣きそうだった。
パンをひと口かじった瞬間、焼き加減が絶妙すぎて目が潤んだ。
(やばい……旅立ちって、味覚にもくるのか……?)
そんなことを思ってると、トン、と控えめな足音がした。
振り返ると、父さんが立っていた。
「カルロ」
その声はいつもより、少しだけやさしかった。
「これから先、たくさん危険な目にあうと思う。でもな――命があってこそ、だ。
逃げるのだって、決して恥ずかしいことじゃない。生きて帰ることが、一番大事なんだからな」
「……うん。ありがとう、父さん。ちゃんと覚えておく」
父さんの目が少し潤んでたのを、俺は気づかないふりをした。
⸻
それから、家族三人で静かに朝ごはんを囲んだ。
言葉は少なかったけど、それでも十分だった。
この家のぬくもりが、ずっと俺の背中を押してくれる気がした。
⸻
「じゃあ……行ってくるよ!」
玄関で靴を履きながら、俺は元気に言った。
「気をつけてね、カルロ!」
「お前はお前らしく、焦らず、自分の道を行け!」
「うん! 行ってきます!」
⸻
そうして――
俺はついに、リンドウ村を出た。
農家の息子、カルロ。
“おみくじ”を片手に、ワクワクと不安を抱えながら、世界へ飛び出した。
このときの俺はまだ知らなかった。
この旅が、世界をちょっぴりざわつかせる冒険の始まりになることを――。
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