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1.たとえそれが、、、⑤
しおりを挟む知られたくない。
それは事実。
でも、それと同じくらい………ーーーーーーーーーー
着せかけられた服をひっ掴み、目の前の相手に投げつける。
「庇った相手にする態度か?」
「………申し訳ありません!庇って下さりありがとうございます!!これでいいですか?」
「最後の一言は余計だな」
苦笑するラキティスに、が、僕の顔は苦々しく歪む。
確かに、褒められた態度じゃないのは認める。
が、だからと言って、あんな思わせぶりな態度や言葉を取らないで欲しい。
期待してしまう……
そう思ってから、ハッとなり慌てて頭を振る。
「とりあえず、服着ろ」
「ッッッ!!」
急な出来事に失念してた。
大慌てでラキティスに背を向け、服を着込む。
ようやく、晒した肌を隠しホッと気が抜けた。
「さて?部屋を移るか」
「はい?」
言われた意味が分からない。
思わず間抜けな声が出た。
「イアン様も言ったろう?見回りが来るって。また、慌てたいのか?」
「そんなわけないでしょ!じゃなくて!!なんで、部屋を移るんです?」
「話をしなきゃならんからだろ?」
「話って…………」
僕から言わせれば、何の話だだ。
怪我の手当ては終わった。話と言ったって、これ以上はない。
少なくとも、僕には……
「お説教でしたら、もうこれ以上は御免です。ファンガス様のご用もありますし、僕はこれで失礼しま………ッ⁉︎」
横をすり抜け……ようとして、腕を掴まれた。
そのままの勢いで体を対面に向けられる。
ラキティスにしては些か乱暴で、思わず眉を顰める。
「痛いんですけど?手……」
「だったら逃げるな」
「逃げ……僕は別に」
「逃げじゃねぇんなら、避ける、か?」
「ッッッ!!」
言われた言葉に返せない。
僕の馬鹿!!
言葉に詰まったら、認めた事になってしまう。
調子が狂う。この人の前では自分を保てない。
ギリと強く唇を噛みしめ、睨む僕に、ラキティスが片眉をあげた。
「気持ちと態度、言葉はバラバラだな。分かってるんだか、いないんだか……」
「は?何、言って…」
「いっそのこと、一度全部壊れなきゃ分からんか?」
「だから!意味分からない……ッ⁉︎」
ぐいっと強く腕を引かれ、ラキティスと僕の顔が近づいた。圧倒的なまでの存在感を見せつける力強い瞳。間近に迫る薄い茶の瞳に両眼を射抜かれ動けない。
常であれば魅力的なだけ、この人を知る前であれば、僕自身、他の侍従や侍女たちのように、ただただ魅せられただけだろう。
でも、今は……
知り得てしまった今は、その魅惑はどこまでも暴力的なだけだ。
顔が歪む。
痛い。
腕を掴まれた痛みだけじゃない。
ともすれば、閉ざそうとする唇を必死に開く。
「酷い、、人、です…貴方は」
情けないが声は震えた。鼻の奥がツンとしてきた。
目を見開き、訝しむラキティスの瞳を真っ向から見据えた。
溢れそうなものを死ぬ気で堪える僕を、しばし無言で見つめた後、ラキティスが溜め息を吐いて手を離す。
離された手。
掴まれていたところがジンジン痺れている。
勝手だな……僕。
捕まれば威嚇して、離されれば沈んで……
気持ちグチャグチャ。自分が嫌になる。
やっぱり、、、、、無理だよ。こんなの……
お互い無言だ。
ラキティスが、今、どんな顔をしているのか?
見たいけど、見たくない。
見なくても分かってる。
面倒くさい奴。呆れたように見てるだけ。
今までもそう。
今までは自分を守る為必死になる僕を、関わった者たちはみな……
伸ばされる手の気配を感じ、無意識に体がビクッと竦む。まるで怖がっているとばかりな自分の反応に狼狽えた。
必死に言い訳を探ろうと内心混乱する僕を知ってか知らずか、ラキティスが再度溜め息を吐いた。
伸ばされた手が遠ざかる気配がし、そのまま、何も言わず部屋を出て行ってしまった。
身構えていただけに拍子抜け。
呆然と、ラキティスが出て行った扉を見つめる。
ズキンと走った胸の痛みに手で押さえ、堪えるように目を閉じた後、部屋をそっと出た……ーーーーーーー
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