眠るウサギは狩人の腕の中で夢をみるー彩色師は異世界でE Xー

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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1.たとえそれが、、、④

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何時からだ?

俺の心とは何時からか……ーーーーーーー

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            *
            *

「エリオ?レズモント宰相の侍従だけど、どうかしたのか?」

キョトンとこちらを見据えてくる相手に、曖昧あいまいに笑って濁す。
黒髪、黒瞳。この世界では珍しく、尚且つ、今や稀有けうになりつつある存在。
会った瞬間、心惹かれた相手だ。
今は、今も何も感じないわけじゃない。
が、それも前のような苦しいまでの思いは薄れている。
俺の心と頭の片隅に在るのは………

「キサ?」

呼びかけにハッとなり、訝しみこちらを見やる相手に、小さく頭を振り、そっと深くゆっくり息を吐く。

「アヤの周りでよく見るからな。危険な相手ならと確認しただけだ……」
「エリオは……あ~、、、と、いや、大丈夫だ。そりゃさ、最初は最悪だったけど…悪いやつじゃねぇよ?」

かなり言いにくそうにした後、アヤが困ったように笑う。

「危険はない、と?」
「全ッ然!すっげー、いい奴!口は悪いけど、可愛いんだ!本人に言ったら、照れて怒るから言わないけど」

にへらと笑って言うアヤも、人の事を言えないとは思ったが、口にはしない。

「でも、何で?キサとエリオ、接点ないよな?」

アヤの言う通り、俺と侍従エリオに接点はない。
今までも、アヤの周りでたまに見かけたり、城ですれ違ったりするくらいで、特別………
そこまで考えてから、ふと思い当たったそれに、自分の中に落ちていった物に合点がいった。

「危険じゃないならいい。近衛としては、いろいろ根回しがいるからな。それでだ……」
「そ??う~、ん、よく、分かんねぇけど、エリオは大丈夫!むしろ、俺の今の大事な友達だから!イジメんなよ?キサ」
「……………………何でそうなる?」

苦笑しつつ、拳で小さく頭を小突いてやると、アヤが首を竦めて笑った。
笑みを見て、自分の中に折り合いがついた。
やはり、アヤに対しての今の気持ちは……に対しての気持ちとは………ーーーーーーーーーーーー

            *
            *
            *
            *
            *

バタンといきなり勢いよく開いた扉の音に、ハッとすると同時に、側にあったローブを掴み、目の前の裸身にひっ被せた。
急な事態に竦んで声を出せない体を引き寄せ腕の中へ抱き込む。

「ッッッ!!!」

慌てて発そうとした声を、鋭く睨め付け黙らせる。

「キサ⁈」

扉へ背を向けたまま、かかった聞き覚えある声音に息を吐いた。
助かったな……
一瞬で生じた緊張を解き、肩越しに視線を向けた。
暗めの赤髪、マゼンダ色の瞳を白黒させて此方を見てくる男。黒の近衛護衛の服を隙なく着こなし、一見柔和に見えて、その実、一分の隙もない……

「イアン様……どうかなさいましたか?」
「あ~…いや、、、なぁ~んだ、お前かよ~?ったくよ~……貴賓室きひんしつに誰か居る、話し声がするってんで見に来れば。お前なんだったら大丈夫だな。緊張して損したぜ」
「俺も、です。来たのが貴方で良かった」
「あ~……、、、その~、、悪かったな?邪魔だったんじゃないか?」

ちらっと下を見るイアンの視線を辿り、思わず微苦笑だ。俺が抱き込んでいるため姿は見えないが、腰に回されたエリオの手は、あちら側に見えている。
おそらく、エリオは知られたくないだろう。
俺自身、誰も彼も知るという事態は避けたい。
敢えて何も説明せず、曖昧に、且つ、それっぽく匂わせた方が得策だな………

「黙ってていただけますか?」
「いいぜ。俺ン時も見逃せよ?」
「いいですけど…セレスト様に知れたら怖いですね」
「わ!馬鹿ッ!おっまえ、言うなよ~⁈」

慌てふためくイアンに小さく吹き出した。

「あとちょっとで、こっち側の棟の見廻りだ。別のとこ行くか、自室でやれよ?」
「なっ………ッッッ!!」
「分かりました。助かります」

ニッとイタズラっぽく笑うイアンに、エリオが声を上げかけた為、手で口を塞いで黙らせた。
見上げて睨みつけてくるのを敢えて無視。
イアンに笑って返すと扉が閉まった。
途端、思いきり体が押しやられる。
目元を怒りと羞恥に染め、睨みつけてくるのを見やり、内心で息をつく。

損ねた機嫌をなだめるのは、どうやら骨が折れそうだ。












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