眠るウサギは狩人の腕の中で夢をみるー彩色師は異世界でE Xー

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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2.手に入るであろうものを捨て去ることになったとしても……⑥

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「どうぞ、お座り下さい」

招かれた城の貴賓室は豪奢だが、華美ではなく品の良い調度品で飾られている。

すごい。初めて入った……

元々貴族とはいえ下級も下級な家柄で、奉公しなければ食い繋ぐ事も難しい身だったのだ。国や他国の要人が出入りするこんな特区には入る事さえ許されていなかったし、宰相様の侍従に取り立てられてからは機会はあっても、他国のお偉方に取り入るより、自国で這い上がる事に躍起やっきになっていた事もありまったく興味がなかったのが事実。
座る事を勧められたソファは見るからに座り心地が良さそうだ。
他国の使者の部屋のソファに、侍従の身で軽々しく座れるものじゃない。
しかも、ナヴィラス相手はまだ立ったままだ。
僕の困惑と躊躇ためらいを知らず、再度、ナヴィラスに勧められた。

「今、お茶を淹れます」
「あ、の!それ、より、お話というのは」
「クレイドルの花実の茶は香り高いですね。サラタータではこれほどまでの品質にはならない。やはり、気候のせいでしょうか」

使者の部屋へ招かれるのも恐れ多い事なのに、この上、お茶までなんてとんでもない!
多少、強引にも思ったが会話を遮ったのに、相手はまったく意に介せず話を続ける。
僕の中で、ナヴィラスに対する警戒心が増す。

「ナヴィラス様……ぼ、、私は、お茶をいただきに来たのでは……」
「まずは落ち着き、座って飲みつつ話しましょう。立ったまま話すなど無作法です」

ふんわりと笑んだまま告げられる。
再度、口を開きかけ諦めて閉じた。
恐らく、ナヴィラスこの方は僕の言う事は聞くつもりがない。
このまま居ても、何も進まないのは分かりきった事で、やや、緊張しつつ勧められるままに渋々ソファへと座る。

「どうぞ」

差し出され、目の前のカップから、ふわりと甘く柔らかな香りが漂うが手を出す気にはならない。
話を目で促すが、当の本人は優雅にカップに口をつけ、ゆったりとお茶を飲んでる始末だ。

「あ、の、、」
「サラタータをご存知ですか?」
「え……?」

突如の言葉に、咄嗟に何も出ない。
少し伏し目がち、柔らかな笑みを浮かべたまま、カップに口付けるナヴィラスからは真意が伺えない。

「サラタータは女神の炎の魔導をしょうと冠す国……」
「その通りですよ。強きが統治し、弱きは淘汰とうたされる。女神の魔道に他の魔道を戴く国より強く拘りと誇りを持っている。それが、サラタータです」

カップを離し、ゆったりとした仕種でこちらを見据え、ナヴィラスが優雅に脚を組む。
眼鏡の奥から見る瞳を認めて、瞬間、ざわりと背が泡立つのを感じた。
口許にはやんわりと笑みを浮かべている。
でも……

目が、笑ってない……………

無意識にコクリと喉が鳴る。

「あな、たは……僕に何を」
「思ったよりさといようだ、助かります。あなたには頼みがあります」
「た、、、のみ?」

緊張で口の中がカラカラに乾いていく。

「ええ。あなたにしかできない。と言うより、あなたには何がどうあってもやってもらわねばならない」
「それ、が……ラキティス様、、、に関するという話ですか?」

ラキティスの名を出した瞬間、ナヴィラスの瞳が一瞬、僕を不快なものを見る光を浮かべて消える。
すぐに柔和な表情に戻り、ニッコリと微笑みかけられるが、警戒が振り切れた今は、ナヴィラスに対して内心穏やかでは居られない。
勿体つけるように組んだ脚を組み替え、ナヴィラスが口を開いた。

「サラタータとラキティス公子の為、あなたには………………………ーーーーーーーーーーーーーー死んでいただきたい」








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