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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編

3.旦那さま奮戦!生まれ来る子は実は……?!⑦

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白き空間で、しばらく玉を抱いている間に眠っていたらしい。
ふと、玉を包んでいた白い球体が震え出し眼を覚ます。

ーどうしたんだ?ー

フルフル震えていた球体の表面が、淡い水色の紋様に覆われていく。

ー彩色?!え、なんで?!ー

球体を取り巻いていた帯状の拘束にも紋様が浮かび出す。ピシピシピキピキ音が鳴り、帯状の拘束にひびが入る。
突然の事に、驚愕したまま動けない俺の手の中で、パキンっと、ガラスが割れるような音を立てて帯と、玉を包んでいた球体が砕け散った。

ーな……んだ?!急に、なんで?ー

呆気にとられ、茫然自失。どんなに引っ張っても、なにしても外れなかったのに、どうして?
水色に白い粒子を纏った玉が、スイッと俺に寄ってきた。
慌てて手を差し伸べ、腕に収まった瞬間、覚えがあり、慣れ親しんだ力の波動に包み込まれる。

ーあ……ー

圧倒的なまでの力と量に、ともすれば押し潰されそうなそれに、思わず眼を閉じる。
頬をつと流れるもの。唇には、裏腹に笑みが浮かぶ。

ー温ったかくなってきたー

二つの玉を腕に抱くと同時に、白い空間にひびが入り、バリンッと甲高い音を立てて砕けた。

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ウワッという感覚と、一気に入り込む空気。ハッと眼を開ける。
霞む視界に、ぼんやり映る姿。

「俺が分かるな?アヤ」

聞き覚えがある声。乾いてヒリつく喉を懸命に開く。

「バ……ルド」
「いい子だ……」

ふっと柔らかく笑むバルドに、ホッとしかけて気がつく。

「あ……ラァム、バ…ドとの、子が……!」

声が掠れてなかなか出ない。必死に訴えて、二人で視線を向けると、ラァムの実がカタカタ揺れ、実の表面に青白い紋様が浮かびだした。
彩色?
力は使った覚えがない。
どんな類の彩色かが分からない。もし………

「な、ん、で…ッ?俺、、!」

半ばパニックになり、周りが見えなくなる。
どうしよう!バルドの子に何かあったら………
怖くて、ギュッと固く眼を閉じた俺の体が、不意に力強い腕に引き寄せられた。
そのまま抱き竦められ、肌の温かさと、心臓のトクトクいう音に、強張った体の力が抜ける。

「アヤ、落ち着け…俺とお前の子だ。お前が自分の子供に害なすわけねぇだろ?大丈夫だから、見てろ」

言われて、恐る恐る見る。紋様はそのまま、青白い光と、薄黄色い光の微光を発しながら、実の表面に滑るように動く。
特にそれ以上の何かはない。

「あ、れ?」
「な?だから、大丈夫だろう?」

くっと小さく笑い、バルドに頬と顎を撫でられた。

「アヤ。何があった?」

問いかけられ、ホッとして実を見ていたが、バルドに向き直った。

「いや…俺も、よく分かんなくて」
「分からん?分からんとは?」
「…その、バルドと……の後、ラァムの実を抱っこしてて、魔導を二つ感じるってなったんだ。そしたらさ、何かよく分かんねぇけど、俺の魔導が吸い取られるっていうか…うぅ~ん…これも分かんねぇな。まぁ、とにかく魔導が何かに吸い取られてさ、したら……」

あの時を思い出し、ぶるっと震える。

「アヤ?」
「…ごめ、、ラァムの実が、ひび割れたんだ」
「ひび?何にもなってなかったが………?」
「うん……でも、割れたのが見えた。だから」

血の気が引いたあの瞬間を思い出し、再燃した恐怖に体が竦む。
不意に肩を抱き寄せられた。

「バルド?ん……ッ」

仰ぎ見た、目尻に口付けられる。
擽ったくて、片目を閉じる。
おでこ、鼻の頭、頬っぺた……慰めるようなそれに、何か恥ずかしくなる。

「なに?」
「一人で勝手にいなくなるな。俺の側から離れんじゃねぇよ」
「そうだけど、さ……」
「黙ってろ!」

言い訳は、唇にキスされて言えなくなる。深くもなく、激しくもないそれに……
ペロっとごく軽く舐められてから離れ、気恥ずかしさに顔が見れなくて俯いた。

「バルド…」
「実が問題じゃねぇ。実がお前の魔導を吸い取ってんのかと思ったが、どうもそうじゃねぇようだ。問題なのは、得体の知れん力が干渉してる事だ」
「それって……」
「確証はないが、な…が、一番濃厚な選、か」

白い空間に、見知らぬ美人、二つの玉、玉を包んだ結界と拘束……
何か、また厄介な事に巻き込まれてる予感………

「あ!ラァムの実。彩色、だよな?あれ…そういや、俺、何で……」
「お前の魔導が何かしらかの目的で奪われて、どこかに消えてんのは分かったからな。だったら、奪われねぇようにと、俺の魔導を送り込んだ。まぁ、万が一、俺の魔導でも構わなかったとすれば、別の意図が見える。結果は、お前の魔導じゃねぇと駄目だったようだが……奪われる前に、俺の魔導がお前の魔導を包み込んだ。それに加えて彩色が無意識下で発動して結界の役割を果たしたんだろ?優秀な能力ちからだ」
「実を守る為に、彩色がって事?」
「子を守る母は強いって事だ」
「誰が母だ!!」

あながち間違ってはないが、何か嫌だ!

「うぅ~~っ…………で?ラァムの実はもう大丈夫なのか?」
「多分な。結界がある以上は、今までみたいに簡単には魔導を奪われはせんだろう……ただ」
「ただ?」
「何が起きてんのかは、結局、分からんままだ。それが分かるまでは万全じゃねぇな」

結局は油断も安心もできないって事か?
ハァ~~~……何で、こう次から次へと厄介な事に?

とりあえず、当面大丈夫なら良かったと納得する。

「じゃあ、もうい……ふに?」

肩の力を抜き、バルドから離れようとした体が、背中から柔らかい敷布に受け止められた。

へ??何で???

「バルド??」
「まだ、終わってねぇだろ?」
「は?だって、もう大丈夫……」
「お前は、俺をヤキモキさせた自覚ねぇのか?散々、心配かけておいて、「はい、終わり!」なワケねぇだろ?」
「え、いや、だって……!」
「だってもクソもねぇな。ちょうど、閨に居る事だ…」

クスと笑うバルドの笑顔が怖すぎる!!
敷布の上、後退ろうとするが、腰を固定されて動けない。
顔が近付き、唇が触れそうで触れない距離。
吐息と、甘く艶をたっぷり含んだ囁きが俺の体を縛り上げる。

「……ドロドロになるまで愛し合おうか?」

さっきとは違う意味で青褪めていった……ーーーーー








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