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序章 始まりの刻
2.並行時空①
しおりを挟む思わず身構えギュッと固く目を閉じた。
おそらく来るであろう何らかの衝撃に耐えたが、何も起こらない事に、そっと目を開けた。
「何の真似だ?ーーーーーーーーーー騰蛇」
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閉じていた目を開ける。
目に飛び込んできたのは、黒地に銀糸の刺繍が控えめに施された衣の裾。
俺より優に頭一つ分以上高い背。漆黒だが一房だけ紫の光彩を放つ髪。
肩越しにこちらを見遣る顔に、思わず息を呑む。
光の角度か、赤い煌めきを弾く紫の瞳の妖しさに、体が意図せず竦んでしまった。
すぐに興味なさそうに逸らされた瞳。
詰めていた息を吐く。
ドキドキと早鐘を打つ心臓が痛い。
「何の、、、とは?」
「あぁッ⁈てめぇ、とぼけてんなよ!今、そいつ庇ったんだろうがよ!!」
おそらく、最初に衝撃を向けてきた相手が、黒髪の男に食ってかかるように息巻く。
険しく荒々しい空気を纏い、剣呑にこちらを睨み据えていた。
全くタイプが違う男2人。
ただ、共通して言えるのは…………………………2人とも、超イケメン、、、という事だ。
「庇ってない」
「はぁ~?今のが庇いじゃなくて、何だっつうんだよッ⁈てめぇ、ふざけてんのか⁈」
「ふざけてるのはどっちだ?」
応酬が続き、黄赤髪の男の怒鳴り声が益々ヒートアップ。
どうでもいいけど、この2人、俺を無視して遣り合ってる。
変に構われても困るけど、放置ンぐも困る。
何せ、今の状況が分からなさ過ぎるのだ。できれば、話をしたいのだが、如何せん、2人だけで絶賛遣り合い中。下手に間に入ろうもんなら、こちらが殺られかねない勢いだ。
「俺がふざけてるって言いてぇのか?」
「対象を問答無用で攻撃した。明らかな命違反だろう?ふざけでなくて何だ?」
「はっ!!確認なんざする必要ねぇだろ!この場にそいつが居た。怪しい奴は全て排除する!それ以外、何がいるってんだ!!」
黄赤髪がギラッとこちらを見る。
はっきり言って、わけは分からないがめっちゃ怖い。
「関係ない奴だったらどうする?無益な殺生ほど価値なきものは無い」
「はっ!てめぇが命を語るかよ?最強最悪の闘将様がよ!!」
黄赤髪の言葉に、黒髪の纏う空気が変わる。
重く、昏く、濃くなったそれに、無意識に薄ら寒さと恐怖を感じて、俺の体が竦んだ。
黄赤髪に感じたのとは違う怖さだ。
こちらは、魂を鷲掴みにされたかのような……
「はいは~い!そ・こ・ま・で!!」
ひりつく空気を遮るような、あっけらかんとした声が響いた。
すぐ背後から聞こえたそれに、慌てて振り向いた。
「え?いな………」
「あ!こっちこっち!!」
「え?わっ⁈」
顔を戻した途端、目の前にどアップで現れた顔に、思わず仰け反らせた体がバランスを崩した。
咄嗟の事に踏ん張れない。
「おっ、と!」
「ッッッ⁉︎」
固く目を閉じ、転ぶ衝撃と痛みに備えた体が、手首を掴まれ引っ張られた。
「ごめんね?驚かせちゃって。大丈夫?」
言葉ほど悪びれてもない明るい声音に、閉じていた目を開けた。
怖々あげた視線に、飛び込んだ鮮烈な紅色に言葉が出ない。
息を呑んだ俺の目の前に……ーーーーーーーーーー
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