並行時空十二天将夢幻譚

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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序章 始まりの刻

1.青空

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青い。

ぼんやりとしたそれを、見上げたまま、悠長な思いが過ぎる。
あれ……今日、晴れてたっけ?
頭の中にかかるモヤが晴れていく。
ハッとなり、起き上が…ろうとした体に、ズキッと鋭い痛みが走り、思わず呻いて縮こまった。

「な、んだよ…これ」

痛みは右肩と右足。肩を左手で抑え、痛みが治まるのをひたすら我慢した。
痛みから意識をそらす意味もあり、何があったか思い出す。

今日は高校の卒業式で、式が終わって帰る途中で、帰ったら荷物をまとめなきゃならなくて……

「そ、、だ……園、出てく準備」

高校卒業後、18歳までしか居られない園は出なきゃならない。
だから……

「文字通り、1人っきりになるんだっけ…」

ぼんやり考えていたら……

「あれ?俺、何、して??」

徐々に治まる痛みに、ゆっくり息を吐きながら考えに耽る。
フラッシュバックする光景に、再び起き上が……ろうとして、途端、痛みに呻いた。
我ながら、学習能力のなさに嫌になる。
が、いつまでもうずくまるわけにはいかない。痛みに顔を顰めながら何とか起き上がった。

「巣から落ちた鳥助けようとしたんだっけ?そっから先の記憶ないんだけど……」

手の平に収まるホワホワな感触は覚えている。
辺りをそっと伺うが、とりあえず悲惨な光景がないって事は、まぁ、無事だったんだろうととりあえず納得させた。
寝っ転がってたって事は……

「頭と体右側打って気絶、って感じ?……俺、ダサ!」

せめて人に見られてなきゃいいけどな……
不審者を見るみたいに見られてたら、本気マジで恥ずい!
そ~ッと辺りを見回して、愕然がくぜんとした。

「あ、れ?ここ、、え??」

高校から園への帰り道だ。
いつも通る公園。通い慣れた道。通い慣れた道……のはずで……
道じゃなかった。
緩やかな斜面の草原の中。
見下ろす俺の視線の先には、町がある。
ただし………

「なん、だよ?これ……」

高い、塀に囲まれた城を更に塀が囲み、町らしきものを塀が囲む。幾重にも続くそれ。
が、問題はそれじゃない。

「町の端っこが見えないって……デカ過ぎ!!」

尋常じゃない規模の町。
当然、こんな場所は知らない。

「ってか…ここ、どこだよ?」

夢かと思ったが、肩と体の痛みがすでにそれを否定してる。

「な、んの、冗談……」

ふらふらと力なく立ち上がる。

「おいおい。力の変動感じだから来てみりゃ、なんなんだ?こりゃ」
「え?わっ⁉︎」

不意に後ろからかかった声に振り向いた瞬間、ゴウッという轟音と共に風が逆巻き、砂礫されきが体を襲う。顔を守ろうと、腕を交差させて眼前は守ったけど、正直めちゃくちゃ痛い。
体を立てようと踏ん張るが、斜面な事もありバランスを崩す。

「う、わッ⁉︎」

背後に仰け反る。
見開いた俺の眼前に、突如、男が1人映った。
簡単な武具を身につけた、よく昔の中国の戦国なんかでよく見るような格好。
黄赤色の髪に、ギラギラと色を変える緑色の瞳に息を呑んだ。

「チッ!!波動のデカさに期待してきてみりゃ、居たのはガキで、とんだ期待はずれだな!」

落胆と怒りの表情を浮かべ、男が俺に向かい高く上げた腕を振り下ろすのが目に入った。
訳が分からない。
それでも、自分が危害を加えられようとしているのは分かり………ーーーーーーーーーーーーーーーーーー










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