民衛隊ー可能性のある未来ー

たらしゅー放送局

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今を生きる君へ

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地球というものは必ず朝はくるし、夜もまた、必然的にくるわけだ。しかし、私の心は八月三十日で止まったまま。あの日あのとき人が死に、骨折り首折り殺されて、死体の山が道塞ぐ。あの日あのとき、今日という日を忘れちゃいけない。
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八月三十日、俺にとってはトラウマだ。あの時から十年は経っていると思う。なにせ俺が八歳のころだ。平和学習とかでみた写真の光景が、目の前に広がっていた。
『今日八月三十日は、都市部での大きなテロがあった日です…』
とラジオも告げている。しかし、その声に感情はなかった。気だるいような声で当時の様子を淡々と語っている。
そんな中、俺こと浜松薙(はままつなぎ)は、椅子に座ってぐったりしていた。
「なぁ、未海(みう)。十年も経つと皆わすれるんだな」
自宅兼事務所の台所で料理をしている未海に俺は話しかけた。
「そうね。けど、あの事を忘れられるくらい平和って事じゃないの?」
「今はな」
「もう少しポジティブに考えたらどうなの?」
と未海が呆れ顔で俺をみた。
「それに、ぐーたらしてないで手伝ってよ!」
しゃーねぇな、と俺は椅子から立ち上がり台所へとむかった。
「お、今日は鍋か」
「ええ。お肉が安かったの」
確かに平和だと思う。年々出動回数が減っているのが何よりも証拠だ。
「ほら、早く白菜切って」
「へいへい」
「返事は、『はい』でしょ?!」
「はーい」
「伸ばさない!」
とかやってるうちに、俺は手を洗って白菜を切り始めていた。
二千三十六年八月三十日。アメリカ時間八時ジャスト。世界の主要国で一斉にテロ組織『Z』によるテロが起こった。アメリカは勿論、その中には日本も含まれていた。まずはじめに国会議事堂が爆破され、警備員や、多くの議員たちが命を落とした。
次に電波、水道、ガスなどのライフラインを遮断。道路など含めた交通手段の破壊など、行為は徹底していた。逃げ惑う市民にラジオやテレビなどで彼等はこういった。
『我々はZ。終わりを告げる者。さぁ、この世にはびこるゴミムシどもよ!世界の為の生け贄となれ!』
この言葉で世界は地獄となった。
この放送が終わった直後、機関銃の発砲する音とその中に混じる市民の悲鳴が東京を包んだ。当時の防衛大臣であった小森一郎は自衛隊を緊急で出動させ、都内は鉛が飛び交う銃撃戦となった。都市としての機能の三分の二を失った東京のその中に、俺と未海はいた。俺の家族と未海の家族で買い物に行った帰りの事だった。
『この中で待ってなさい。必ず帰ってくる』
なんて言っておきながら、俺達の家族は首だけになって見つかった。
そしてその翌年の二千三十七年。
被害を受けたアメリカ、中国、ロシア、イギリスは『世界対テロリスト壊滅部隊育成計画』を国連に提案。秒で可決し、『対テロリスト壊滅部隊保有法』を発令した。
アメリカなどは軍にその部隊を作った。
アメリカは『アイオワ』、中国は『明朝』、ロシアは『カチューシャ』イギリスは『メルトダウン』。しかし、日本はそうはいかなかった。自衛隊の人数が少なくなり、日本だけが唯一、対テロリスト壊滅部隊を民間の組織にし、民衛隊と名付けた。報復心から、この計画は成功をおさめ、いまや十人に一人が民衛隊に志願している。
民衛隊になるためには、三年間の訓練後、民衛官として登録され、自衛隊で言う駐屯地、『事務所』を構える事が許可される。現在の事務所の数は全国で千四十三。民衛官の数は日々増えているので正確な数はわからない。
「ほんと、平和だな」
煮えた鍋から、つみれをひょいひょいっと、二個取った。
「あ、狙ってたのに!」
「うっせ!先にとんねぇ奴がわりぃんだよ!」
「なにそれ?!じゃあ私も!」
と言って未海も豚肉を箸で摘まんだ。
「あ、てめぇ、それ俺ねらってたやつ!」
「先に取らない方が悪いんだよ!」
と、同じようなことを言い返してくる。
「ちぇ、」
と言って俺はつみれを頬張った。口の中に鶏の味と出汁の昆布の味が広がる。
こんな時間が続けばいいのに、そう思った。しかし、悲劇は起きた。
『次のニュース…ザザ、ザザ。』
「ん?なんだ?電池切れか?」
「さっき変えたわよ?」
「じゃあなんだ?」
わからない。と未海は首を横に振った。
『ザザ、あ、あー。マイクテストマイクテスト。よし。どうも、皆さん。ご機嫌いかがかな?』
ラジオから聞いたことのある声が聞こえた。
「…うそだろ?」
「なんで…」
『我々はZ。終わりを告げる者。今宵は貴様らゴミムシにパーティーの招待状を送ろう』
要するに予告だろう。
『来月、九月三十日に我々は行動を全世界で開始する。さぁ、パーティーを始めよう!ザザ、ザザ、』
不幸を告げるラジオは口を閉じた。
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