海洋高校駆逐艦、『瑞雪』艦内報告!

たらしゅー放送局

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なんだ、かんだ成功しそう

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 どうして皆泣いているのか、俺にはわからなかったと言うと嘘になる。幼稚園児の頃の、夢。
 黒い軍服姿の大人達や、兄ちゃんのクラスメイトが大勢来ていた。
 皆、手に花を持っていて、その花を次々と箱に入れていく。
 母さんが一番最後に花を入れた。その顔は泣いていた。けど、他の人とは違っていた。何が違っていたかなんてわからないが、何か暗いモノを幼いながらに感じ取っていた事は間違いない。
「海人」
 だから母さんに呼ばれた時、俺は返事が出来なかった。それでも母さんは構わず話を続けた。
「わかったでしょ?ーーーーーーー」

 目を開けると、目の前には見知った天井がいつも通り待ち構えていた。聞き慣れた起床喇叭の目覚ましが部屋の中に響いている。
「…なんて言ったんだろうな…母さん」
 あの後、俺はその場を飛び出してここの大家に拾われた。無料で住まわす代わりに、色々と手伝ったりしたりしている。あの時の記憶は殆どない。ただ、これだけは覚えてる。
ーーーーー兄ちゃんが死んだーーーーーーー

「艦長、公開ってなにすんだ?」
 川村の発言にうんうんと、乗組員達は頷いた。なんで昨日お前ら浮かれてたんだよ!てのはさて置き、
「そうだな…艦の紹介、それから体験的な事かな?」
「体験?」
「あぁ。俺の兄ちゃんの公開の時は筒の掃除と、カレー振る舞ってたかな?」
カレー良いじゃん!と周りがどよめく。
「けど、うちのめしたき二人しかいませんよ?」
 確かにそうだ。めしたきこと、艦内の調理師は二人、大橋夏目(なつめ)と佐々木春(はる)しかいない。
 元々、外洋訓練なんて殆どしないこの学校で、そこまで調理師の必要性がないのだ。
「そうだな…とは言ってもカレーって結構人気だしな…」
「俺ら多分公開の時手が空いてると思うぜ?」
と言ったのは、機関の堀尾だった。
「流石に艦内を見せる事はないだろ?しかも艦内を仮に見学させたとしても主機なんてどうせ誰も興味ねぇ。だったら俺らで手伝えるじゃん。どうだ?ロリッ子機関長」
「ロリッ子じゃないって!もう!」
 と言ったのはこの艦で一、二を争うほどの幼女体型であり機関長。大東紫苑(しおん)だった。
「けど、確かにそうね。まぁ、うちの男に料理なんて出来るか疑問ダケド…」
失礼な!漁師の料理の腕前なめんなよ!機関長こそ、料理出来るのかよ!と男達が吠えている。
「ま、取り敢えずカレーは問題ないってことかな?」
 おうよ!と、元気に返事された。
「それじゃあ、総員、甲板掃除と説明用のプレートの用意!機関と俺と副艦長、そのほか手の空いた人からカレーの手伝い!」
と言い終わる頃には船員は持ち場に着くために走っていた。

「まもなく、海洋高校一般公開を開始します!走らず、ゆっくりと進んでください!それでは開場します!開門はじめ!」
 教員が叫ぶと、一斉に人が入ってきた。その数目視だけで約数千。昼ぐらいになるともっと人が多くなるだろう。
「報道の人も来てるな」
「もしかして私達、取材されんじゃない?」
と、柳原が興奮気味に、というか興奮しながら言った。
「それはないわね」
と永久保の厳しい言葉から始まり、
「それは流石に…」
という川村の控えめな否定が入り、
「ないと思いますね」
と言う今田の容赦ない言葉がとび、
「夢の見過ぎよ」
というロリっ子…もとい大東がこの中で最も容赦のない否定で締めくくった。
「ええー!?なんでよ?」
「向こうもこっちも、戦艦が旗艦だ。旗艦に取材集中するぐらいわかんだろ?」
「なーんだ。つまんないの」
と、頬を膨らました。
 ちなみに俺みたく艦長や、副艦長など、長の名の付く俺達は、階段を登ってすぐの所にいる。
「けど、今は客をもてなす事に集中しよう。ほら、ちょうど主計のグッズ並べも終わったみたいだし」
といって俺は皆にケータイを見せた。液晶には、おわったよー!と書かれている。
 俺は通信機を手に取った。
「ぼちぼちお客も来てるから、気合い入れていくぞ!総員、配置につけ!」
 かん、かん、かん、と階段を登ってくる音がする。その音の方を見ると、子供連れの家族がいた。
(母さん来るかな…?)
と、思いながら俺達は、右手を瞬時に上げ、脇の角度を四十五度に止めて敬礼した。
「せーの、」
『ようこそ、海洋高校所属、駆逐艦瑞雪へ!』

 やはり報道陣は戦艦に集中したが、一般の、特に家族連れが多くきた。
「ぱぱー、これなーにー?」
と言って子供が指さしたのは、主砲だった。
「う、うーん。大砲だねぇ。大きいねぇ」
と適当にごまかした。どうやらよくわかってないらしい。
「こちら、十二・七サンチ連装砲です。ここ、前甲板に一つ、後甲板に二つあります。そうですね…あと三分ぐらいでこの艦砲の筒の掃除体験を開始しますよ」
と、砲術員の大島与一(よいち)がすかさずフォローを入れた。
「んー?どうする?」
「やってみたーい!」
「そうかい。それじゃあ、待たせてもらうよ」
と言って、親子は砲塔を回り始めた。
「おう、やってんな」
「まぁな。親が保育園の先生でね、子供の扱いとか親の対応とか。見て覚えた」
よくそんなドロドロした事覚えたな!
「すいません。艦長ですよね?」
とか思っていると、後ろから声をかけられた。
「はい?」
と言って振り返ると、そこには紺色のスーツ姿のお兄さんが立っていた。
「私、首都テレビの者ですが…」
 首都テレビとは、全国放送してるめっちゃ有名なテレビ局だ。
「それはそれは!どういったご用件で?」
「はい、それがですね…」
と言っている中、俺のケータイが鳴った。
「すみません」
と言ってケータイを開いた。
『カレーの販売を開始します』
しめた!と俺は思った。やっぱり話し合いは食べながらやった方が多くの情報を得やすい。
「まぁ取り敢えず、立ち話もなんなんで艦内に上がってください。丁度カレーも出来上がった所ですし」
「そうですか。ではお言葉に甘えて…」
それじゃあ、といって俺はお兄さんを案内した。


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