海洋高校駆逐艦、『瑞雪』艦内報告!

たらしゅー放送局

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瑞雪、エレベーターに乗る

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「天測訓練初めて!」
 海上保安庁の教官の声で全員、六分儀を覗いた。
 ハワイのホノルルを出てから数日、俺達は次の寄港地点であるボルチモアに向かうため、パナマ運河に向かっている最中だ。
 この世界一周航海訓練は、航海の技術を上げるだけが目的ではない。短艇の上げ下げや、航海計画の訓練など、やることは色々とある。今日の訓練は天測。いわゆるメリパスのようだった。ついでに、俺達も参加する事になっている。
「やべぇ、太陽が見えないよ!」
 と、純白に輝く船から悲鳴が聞こえてきた。
「あっちも大変だなぁー」
 と言いながら俺も六分儀を覗き込んだ。
 そう言えば、学科の時にもやったなこれ。確か、俺が一番嫌いな科目だったような…
「あれ?おかしいな…太陽がみえねぇ」
 何度やり直してもお目当ての太陽はどこにもいない。
「やべぇ!太陽が見えねぇ!」
 海上保安庁の奴らと同じぐらい大声で叫んでしまった。

「そう言えば、日付変更線またいだな」
「正確には、ハワイの時にだがな」
 真夜中の艦橋の中、夜間当番の川村からのツッコミが入った。
 今、俺達はガラパゴス諸島らへんにいる。目的地のパナマ運河までそこそこ近くに来ていた。
「日付変更線通過祭ってやったか?」
「そう言えばやってねぇな」
 日付変更線通過祭とは、ざっくりと言うと日付変更線を無事通過したことを祝う祭りだ。
「今何時だ?」
「0400だな」
「うーん。やるにしても遅いなぁ。お昼にやろうか」
「おう」
 変わりにきたよー!とまた別の当番が来た。
「了解。行こうぜ、川村」
「おう」
 と言って、俺達は艦橋を出た。

 何故だろう、外が騒がしい。何かあったのだろうか?
「ん、んぅーん」
 寝起きの体を軽く伸びをして、俺は部屋を出た。
「どうしたんだ?吉岡。なんかぶつけたか?」
「艦長、着いたんだよ!パナマ運河!」
 吉岡が興奮気味に言った。他にも、狭い通路を思いっきり走っている乗組員もいる。
「マジか!」
 と言って俺も一目散に甲板にかけてた行った。
 甲板には、すでに何人か人がいて賑やかになっていた。
「すげー!」
 水のエレベーターと言われているパナマ運河は、太平洋からカリブ海。またはカリブ海から太平洋へ渡るための水路だ。その通行にかかる時間は待ち時間も含めて二十四時間。つまり丸一日かかる時もあるらしい。もっとも、この数字は温暖化による海面上昇前の物だったりする。上昇してからは、門が一二個沈んだらしく、半日ぐらいで行けるんだそうだ。
「艦長、暇なら手伝ってください!」
 と縄を持った永久保に言われた。縄は塀にある電車に繋がっている。ちなみに、パナマ運河は通行中、エンジンをつけてはいけない決まりになっている。
「はいはい。わかりましたよー」
 といって、俺は渡されたロープを船にもやい結びでくくりつけた。
 電車が動き出し、少しずつ船が進んで行った。

 門に着くと、だんだんと水位が上がっていき、やがて今の水平線と、次の水平線が重なった。
「すげぇ」
 目の前に広がる光景に、乗組員全員が息をのんだ。
 沢山の船が行き来している湖、ガトゥン湖。何度か海外に派遣されたが、ここに来たのは初めてだった。
「て思ってる場合じゃねぇ!全員、縄ほどいて!出航準備!両舷前進原速赤黒なし!針路よーそろー!」
 感動に浸っていた艦がバタバタとし始めた。

 1300、つまり昼の一時に俺達は甲板に集まっていた。簡易テーブルの上には、豪華な料理の数々が並べられている。海上保安庁の人達にも来てもらっての日付変更線通過祭の始まりだった。
「えぇー。只今より、日付変更線通過祭を開催します!」
 ヒューヒュー!パチパチ!パフパフと聞こえそうなくらい大きな歓声が上がった。
「盛り上がっていますね」
 と挨拶してきたのは、こじまの指導員の林さんだった。
「そうですね。そちらはもう通過祭やられたんですか?」
「いや、何かとバタバタしていたのでね。こちらももうそろそろやろうかなと思ってた所でした」
 と林さんは笑った。
「そうですか。楽しんでくださいね」
「あぁ、そうさせてもらいます」
 そう言って林さんは訓練生の元へと歩いていった。
 その後に俺はざっと辺りを見渡した。一応、乗組員全員には通過祭があることは言っていたのだが、一人だけ来ていない。
「こういう時は来たらいいのに」
 と言いながら俺は皿を一枚取った。

 通過祭が行われている前甲板から少し離れた前マストを俺は料理を入れた皿を持ちながら上がっていた。
「はぁ、ついた」
 見張所、ここに来ていない一人がいるはずだ。
「入るぞー」
と言いながら、俺はドアをゆっくり開けた。
「どうしました?艦長」
 中にいたのは、松井だった。
「どうしたって、通過祭でねぇのか?」
「はい、ここが落ち着くので」
「そうか、一応飯は持ってきた。昼飯これだから、足りなかったら携帯で呼んでくれ」
と言って俺は料理が盛ってある皿を手渡した。少しだけ冷めていたけど、まぁ大丈夫だろう。
「ありがとうございます」
と言って彼女も皿を受け取った。しかし、何かが足りない。そうだ、箸だ。
「あ、箸がねぇや。悪い、取りに行ってくる」
 と取りに戻ろうとしたとき、松井が口を開いた。
「あの、すみません。私こんなに量食べれないので、良かったら一緒に食べませんか?」
「え?」
 急なお誘いなので、俺は間抜けな返事をしてしまった。

 決して広い訳ではない見張所に二人が入ると、やはり狭くて落ち着かない。
「すみません。私人混みが怖くて…」
 と突然謝りだした。
「いや、別にいいよ。俺もあまり得意じゃないし」
 人混みなんて滅びてしまえ、とは思わないがうざいと思うことはある。
「好きなんですよ、この景色が」
 硝子の張られていない窓の外を見ながら松井は言った。
「人が活き活きと働いたり、笑ったりしているのを見るのが好きなんです。ここからならそういう物がよく見えて。だからここは私のお気に入りの場所なんです」
「へぇ」
 窓の外には、確かに松井の言うように、笑顔が沢山見えた。
 食べまくって海上保安庁の人や水雷員に引かれている柳原や、今田と楽しそうに飯を食ってる永久保、機関の仲間から相変わらずロリっ子と言われてムキになってる大東、砲術員と楽しげに飯を食う川村の姿など、沢山の笑いに満ちていた。
「なるほど。いい場所だねここ」
「ありがとうございます」
 と彼女は得意げに笑った。
「けどさ、高みの見物も良いけどやっぱ間近で見たほうがいいもんだよ。ほら、中国の学校と戦う前に一般公開したろ?あん時にお客さんの笑顔見たらもうたまんなくてな。今回は状況も違うけど、ここで見るよりも多分良いものが見れるぞ」
 と言って俺はドアを開けて手を差し出した。
「さてと、一緒に下に降りようか!」
「了解」
 といって、松井は俺の手のひらの上に手のひらを重ねた。


*操艦、号令に間違いがある場合があります。ご了承下さい。
*場面がコロコロ変わってしまいました。読みにくかったらすみません。
 


    
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