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Rapid

#2

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廃墟にも見える巨大な施設。廃人達の呻き声が中から聞こえてくるようだった。茂った森、湿った地面。どれも気味が悪くて一目散に走り去った。何もかもがおかしい。嫌になる。この街は異常だ。……分かってる、つもりだった。

息を切らして街中へ戻った。
司の声が聞きたい。そう思ってスマホを取り出したが、手が震えて中々思うように操作できない。一度落ち着こう。ふと、空を見上げる。青紫の世界に満月が浮かんでいた。美しいはずの光。しかしそれを見たとき、かろうじて繋がっていた糸が切れてしまった。

『人を殺したいと思ったことある?』

綿の言葉が頭に響く。最後に彼女が放った言葉がこびりついて離れない。

『私はあるよ。姉さんのことは愛してるけど、どうしようもなくあの人に縛られてるから。自由じゃないことに絶望して、無性に誰かの自由を奪ってやりたくなるの。貴方もそうでしょ?』

……そうなのか?

分からない。絶望するほど、果たして自分は司に縛られてるのだろうか。責任転嫁じゃないのか。凶悪な自分を偽る為の言い訳に、パートナーを使おうとしてるだけじゃないか。
そう言った自分に、綿は首を横に振った。悲しそうな表情……というよりは、可哀想な人を見る目に近い。

『この衝動的な殺意も、神様の家による弊害よ。アクセスした人間だけじゃなく、実際はそのパートナーにまで悪影響を及ぼす。一番分かりやすい形……絶望でね』

絹と綿は実の姉妹。しかし一生を共にすると誓ったパートナー。……恋人の関係だ。
絹は綿と永遠に幸せに生きる為、神様の家にアクセスした。結果成功したが、その代償として日ごと若返る身体になってしまった。
本人の意思に関係なく、アクセスした人間とそのパートナーは互いに縛られる。死ぬまで別れることはできない。

それこそ最大の不自由じゃないか。

それに、絶望だ。彼女の話が本当なら……以前夢の中で現れた世界は神様の家にアクセスした人間とパートナーだけが存在できる場所。

けど自分は神様の家に辿り着いてなんかいない。ということは……司が神様の家にアクセスしていた。

侵入に成功した人間で、……自分はそのパートナーになる。





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