ワープ!✕ワープ!

七賀ごふん

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後日譚

#3

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「……!」

アケミの台詞に、真白は初めて気まずそうに目を泳がせた。

人間と異なり、天使は眠らない。同様に真白も睡眠は取らずに過ごしてきた。
だが近頃、真白は数日おきに深い眠りに落ちる。眠気を感じ自分でベッドに行けるならまだ良いが、何の予兆もなく、その場に崩れ落ちて眠ってしまう。

当初は慣れない地上に来たせいだと思った。起きてる間は元気だし、一時的なものだと。
だが寝落ちする頻度は日に日に増えている。体調不良ではなく、一瞬で倒れるほどの眠気に襲われるのはむしろ異常だ。生活リズムそのものを変える必要がある。

認めざるを得ない段階まできていた。人間と同じく、限界のある身体に変わりつつある。
「そう……ですね」
真白が密かに危惧していたことを、アケミも分かっていた。冷静に考えて、臍を噛む。そもそも、察しの良い彼に隠し通せるはずがなかったのだ。

「そ。だから、睡眠だけはとりな。そのうち腹が減って、三食必要になるかもしれないし」
「それは困りますね。また貴方に迷惑をかけてしまう」
「そんなん心配しなくてよろしい! 作る手間は一人も二人も変わんないんだよ。それに」

アケミは一拍置き、意を決したように呟いた。

「俺は、真白が一緒にご飯を食べてくれたらすごく嬉しい」

互いの表情を窺いながら、呼応する時間が続いた。アケミは慎重に言葉を取り出し、紡いでいく。

「冥府でも思ってたけど、ひとりで食うのって味気ないんだよ。誰かが傍に居ると殊更に」

アケミは、真白が食事に関心を示さないことをずっと寂しく感じていたようだ。
( ……そういえば )
ここに来てから以前と同じく彼の食事も作ろうとしたのだが、必ず断られるせいで手料理は一度も作っていない。

アケミは自分しか食べないのに料理を作ってもらう、ということを申し訳なく感じてるようだ。

真白としては、食事の支度を却下されたことが地味にショックだった。てっきり冥府で用意していた料理が不味かった為、拒絶されていると思ったのだが……全てはアケミの気遣いによるものらしい。

俺が食事をしないから。そのせいで窮屈な思いをさせてしまっていた。
 
真白は尚もおずおずとしていたが、やがて顔を上げ、遠慮がちに微笑んだ。

「……ありがとうございます。俺も、貴方が好きなものを食べてみたいです」

お願いすると、アケミは無邪気な子どものように笑った。

「よし、決まりだな。今夜は一緒に食べよう!」

俺の柔い髪を撫で、周りに花でも咲きそうなほどにこにこしている。
何というか、本当に可愛いひとだ。

「それじゃ行ってくるよ。夜までのんびりしててね」
「承知しました。尽力します」
「尽力はしちゃ駄目だって……」

玄関まで見送る。アケミは可笑しそうに肩を揺らしていたが、急に真顔になった。
何だろう。こちらも姿勢を正して見上げると、腰周りを撫でられた。

「なっ!」
「あ、真っ赤だ。かわい~」

彼はケラケラと笑い、ドアを開けた。
全くこの人は……。

ひと言文句を言ってやりたいと思ったけど、逃げるように出て行ってしまった為諦める。

仕方ない、夜まで言いたいことはとっておこう。
真白は踵を浮かせ、ドアの鍵をかけた。




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