ワープ!✕ワープ!

七賀ごふん

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後日譚

#2

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「真白がいるから毎日が楽しいし、しんどいことも頑張れるよ」
「……っ」

アケミはゆっくり体を離す。瞼を伏せると長い睫毛が一層際立ち、その美しさに見惚れてしまった。

自分でも分かっている。以前と比較にならないほど、彼に陥落していると。
その証拠に、長時間目を合わすことはできない。見つめ合ったとき先に目を逸らすのは、いつだって真白の方だ。

嬉しいのに、恥ずかしさの方が勝る。起き抜けから口説いてくる青年は、真白の常識の外にいた。

「真白ちゃんは俺との暮らしどう~? 楽しい?」
「それ毎日訊いてませんか?」
「不安だから毎日聴きたいんだもん」

またまた子どものように口を尖らすアケミに、今度こそ降参のポーズをとる。

「ありがとうございます。毎日楽しいし、幸せですよ。正直不安になるほど……。本当に、大切な主様です」
「ははっ、俺とは不安の種類が違うんだな。でも主じゃないぞ」

何が正解だっけ? と、不敵な笑みで返される。
逡巡したが、観念して答えた。

「旦那様。……でした」
「お~お~。よくできました」

くしゃっと頭を撫でられ、くすぐったさに身を捩る。
このままずっと撫でてほしいぐらいだけど、時計を見たアケミは残念そうに呟いた。

「しゃーない、支度するか!」
「はい」

いつもと同じ、他愛ないが大切な朝。
透き通った宝石のような幸せを包み込み、今日も最愛の人と珈琲を飲む。


アケミは何とか以前の生活を取り戻していた。冥府は地上より時間の流れが緩い為、欠勤については必死の説得(彼曰く言い訳)と謝罪をし、無事復帰できたらしい。

真白もまた、アケミとの暮らしに順応してきている。初めは家電の使い方に四苦八苦していたが、理解してからは家事を全て引き受けている。思いがけず、冥府で培った唯一のスキルが役に立っていた。

「アケミさん。ゴミがたまっていたのでまとめて出しておきました」
「ごめん、忘れてた! ありがとね」
「いいえ。あと靴が汚れていたので磨いておきました」
「あ、ありがとう。今日外出あるから助かる……けど」

アケミは狼狽えながらネクタイを締める。一度開いた口を閉じていたが、やがて言葉を選びながら切り出した。

「なあ真白ちゃん。俺の為に色々やってくれるのはめっ……ちゃ嬉しいんだ。でも俺が仕事行ってる間はテレビ観たり、ゲームしたり、昼寝したり。とにかく休んでくれ。頼む」
「お気遣いありがとうございます。でも俺に休息は必要ありません」
「まぁ待ちなさい。人間は休むのも仕事のうちなんだよ」
「俺は人間じゃない。ので、大丈夫です」

アケミはもっとのんびりするように言ってくるが、のんびりする、というのは難しい。
今まで常に動き回っていたから、手持ち無沙汰で何もしない時間が極めて苦手だ。大切な人の役に立つ為に、片時も思考を止めたくない。

しかし、アケミの眼光は先ほどより鋭くなった。
 
「どうかな。最近よく寝落してるだろ? 自分が思ってるより、体は悲鳴を上げてんのかもしれないぞ」




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