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永遠、代わりの君

#2

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部屋の温度がまた上昇した気がする。准が振り返ると、加東は申し訳なさそうに両手を合わせた。

「悪いね。あの子に気を遣わせちゃったみたいで」

彼は彼で、涼のことを気にしていたようだ。やはり表情や挙動をよく見ている。
「大丈夫ですよ。あいつにしては珍しく空気読んだというか」
むしろ読み過ぎで怖いと思い、腕をさすった。
すると様子が一変、加東がやたらニヤニヤしてることに気付き身構えた。

「准君は涼君と仲良いんだね」
「いやそんな……結構な頻度でど突き合ってますよ」
「へぇー、意外。准君でも怒るんだ!」
「もちろんです。あいつに対しては毎日と言っていいほど怒ってますよ」

社会人になってからむしろ気が短くなった気がする。普通は歳を重ねる毎に落ち着くはずなのに、どうしても貫きたい一本の芯が形成されていく。絶対に踏み込まれたくない範囲が広がりを見せる。

このままじゃ典型的な頑固親父になりそうで恐ろしい。
けど、俺の外面しか知らない彼には想像できないようだ。

「あはは、そっかぁ。……ねぇ、前に二人で食事した時、准くん知り合いの話をしてくれたじゃん? あれってもしかして彼のこと?」
「えっ。あぁ、やだな。何で分かったんです?」
「うーん。君の態度かな。あんなにコロコロ表情変える君を見たの、初めてだから」

答えは漠然。だけど、何故だか納得してしまう。
「俺変な顔してました?」
「ううん、そうじゃなくて、楽しそうに見えたよ。……まぁさっきは正直ドキドキしたけどね。涼君も否定してたけど、ほんとは喧嘩してたんでしょ?」
加東はさらっと、しかし的確に痛い部分を突いてきた。やはり彼の観察眼は侮れない。
「喧嘩……なのかどうか。まぁヤな気分にはなりましたけど」
額に手を当てて、数分前を思い返す。
「驚いたのもあります。ふざけて悪口言うことはよくあるけど、あんな真面目に言い返されたのは初めてだったから」
心のどこかで安心してたのかもしれない。涼が俺に反抗してくるわけない、と。
なんて嫌な思い込みだろう。あいつはあいつで、誰かの所有物じゃないのに。

「喧嘩じゃない、って思いたいけど……あいつを怒らせたかもしれません」

准の話を最後まで聴き、加東は天井を見上げた。そして脚を組む。その一連の動作はスローモーションのようだった。准は視線が泳がないように注意しながら、彼の返答を待った。

「大丈夫だよ。涼君が戻って来たら訊いてあげな。友達なら難しいことじゃないよ」




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