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歪
#10
しおりを挟む所長は目を細めて笑った。
「行木さんが大人気なかったから俺はどうなっちゃうのさ」
「所長は若いのに、色んなことが見えて凄いですよ。俺は多角的に、客観的に見る、ってことがまだできなくて」
「見えないよ。全然見えない。ゴールが」
いつ終わんのかなぁ……。
所長は背もたれに寄りかかり、そうもらして天井を見た。
「他の人がばたばたリタイアしていくから、残った俺はとんとん拍子で昇進した。年功序列じゃないのは良いけど、安月給なのに責任だけ重くなって……って、ごめんね。君にこんな愚痴こぼすなんて、まずそこから失格だ」
「そんなこと……」
ミルクティーを飲み干し、カップをソーサーに置く。所長は額を押さえながら、何故か部屋の入口へ移動した。
「でも、ゴール地点が見えてるかどうかなんて、最終的には関係ないんだよね。実現不可能だろうがなんだろうが、上司を納得させる為に適切なゴールを設定するんだ。その為に綿密なプロセスを作る。色んな機関を巻き込んでさ……あんな事やこんな事も試しました、でもできませんでした、って言い訳を用意する」
そして電灯のスイッチを入れたり消したり繰り返す。少しの間部屋全体が明滅した。何をやってんのか本気で分からなかったけど、彼が止めるまで律儀に待つ。
「完璧な人なんていませんよ。俺今回のことで、自分が本当に最低な奴なんだって確信しました」
澱みなくはっきり言うと、彼はいつかと同じ微笑みで首を傾げた。
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