メンヘラの私に悪役令嬢は向いてなかった

おかね

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婚約破棄とかリスカしょ

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前世で大好きな彼氏と無理心中した私に、神様はこんな試練を課したの。

「お前の転生先は『シェイラ・デルヴィーニュ』という悪役令嬢。

愛する許嫁から婚約破棄され、男を奪われる苦しみを存分に味わいなさい」


そういうわけで、私は哀れなヒール役…シェイラ・デルヴィーニュとしてこのキラキラした世界で生きてきた。

四六時中メイドさんに構ってもらえたし可愛い洋服もいっぱい買えたし全然病む要素がなくて、
一瞬「私メンヘラ克服したんじゃないかしら?」と思ったけど、それも彼に出会うまでのことだった。

「シェイラ。悪いけど、君のことを親が決めた許嫁以上には思えない」

冷たく言い放つ青年は、婚約者のギル・キューブリック。
神様が与えた試練の一環なのか私の業の問題なのか。私は彼に付きまとうようになった。

「ギル様、私のことお嫌いなの?」

「…放っておいてくれないか」

「どうして無視するの?電報も送ったのに返事してくださらないし。私の何がいけないの?」

「君が送ってくる数が多すぎて対応しきれない。そもそも、髪を切っただとか口紅の色を変えただとかでいちいち連絡してこないでくれ」

「…え?意味がわからないわ。どうして?やっぱり私のことお嫌いなのね?私はこんなにギル様が好きなのに、ひどいわ。あぁ…こんな私なんて必要ないわよね。リスカするわ…あ、リスカってご存知?ナイフで手首の静脈をね、こう…」

「~~っああもう、よくわからないが一旦落ちつけ!聞くから!!」


お優しいギル様は私を見捨てることができなくて、度々話に付き合ってくださった。
たまに叱責されることもあったけれど。


「お前はどうしてそう命を大切にしないんだよ!?」

「だって私、ギル様のお側にいられなければ意味がありませんから。この世界で価値があるのはギル様とご一緒できるこのひとときだけ。それ以外はどうだっていいんですのよ。私、この愛のために死んだって構わないわ」

「だからそういうことを軽々しく言うな!!」

「…ごめんなさい。ギル様はこういうことを言う女性がお嫌いなのよね。やっぱり私なんて価値がない存在なのだわ。死んだほうが…」

「嫌いじゃない!嫌いじゃないからナイフを離せ!!」

「ギル様…」

「ったく、本当にお前は手のかかる奴だな…」

「…どうして笑ってらっしゃるの?」

「…え…ああ…」


「何でだろうな…」




そうして迎えたXデー。

私がギル様とご一緒に出席したとあるパーティーで、
ギル様はヒロインであるハンナ・ローズヴェルトと出会う。

…はずだったんだけれど、ギル様は中々私の隣を離れなくて。

「ギル様、ご挨拶に回らなくても良いのかしら?」

「…ああ。そのせいでお前に癇癪を起こされたら困るからな」

「まあ…よく分かってらっしゃること」

「伊達に日頃お前の相手をしているわけではない。ほら、手を貸せ」

「手…って?」

「…っこういうことだ」

ギル様は私の左手をとって、ご自分の右手で包むように握った。

「…どうだ?これで安心だろう」

「え…?」

「今日は来賓客が大勢いるんだから、大人しくしていろ」

思わずギル様の方を見ると、違う方向に顔を背けていた。私と目を合わせないようにかしら?
でも、耳まで真っ赤なのがちゃんと見えた。
…あら?何かしら、この展開…?



「…ご歓談のところを失礼致します。
ご挨拶させてくださいませ、キューブリック様に、デルヴィーニュ様」

明らかに痺れを切らしたハンナが、自ら挨拶にやってきた。
さすがヒロインと言ったところね。
その肌の白さと柔和な笑顔に目を奪われてしまう。

「…ああ、存じ上げております、ローズヴェルト家の」

ギル様はあまり興味がなさそうな口調で言った。
一方のハンナは明らかにギル様に対してうっとりとした表情を浮かべていて、見るからに恋している。

「ハンナ・ローズヴェルトです。以後お見知り置きを」

「こちらこそ、どうぞよろしく」

「ああ、お会いできて光栄ですわ。ギル様のお噂はかねがね承っておりますのよ」

「そうですか。ありがとうございます」

ハンナの天使のような笑顔をものともせず、ギル様はそう口早におっしゃって。

「…あと、この女性ひとのことですが」

私の肩をさっと自分の方に抱き寄せる。

「『デルヴィーニュ様』ではなく、『シェイラ・キューブリック』として覚えてください」

私が驚いてハンナとギル様の顔を交互に見ると、
ハンナは私以上に驚いた顔をして「失礼致しました」と足早に去っていった。


…あら…?
私、悪役令嬢のはずよね…?
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