不死身の勇者を殺すまで

響世燐光

文字の大きさ
1 / 10

旅立ち

しおりを挟む
『むかしむかしあるところに恐ろしい怪物がいました。

怪物はとても強大な力を持っており世界中に厄災を振りまきました。

怪物は様々な名で呼ばれましたがその中でも魔物達を率いる王、魔王という名が広く知れ渡っていました。


世界の半分以上を魔王に占拠された人類は下された神託に従い異世界から一人の勇者を召喚しました。


勇者は当初こそただの青年と変わりませんでしたが、旅を続けていく内にめきめきと力をつけていき、すぐに強大な魔物達と渡り合えるだけの実力を手に入れました。


勇者は長い長い旅の果てに不死身の魔王と相対し、仲間の助力もあって見事魔王を打ち倒しました。


こうして世界に平和が訪れたのでした。

勇者様は今も私達を見守ってくれているでしょう。』



この物語を最後に読んだのはいつだったか。

素晴らしい物語だ。

世界は救われた。人々の生活は守られた。

『勇者』とやらの最期が記されていればなおよかったのだが。


いや、違うな最期という言葉を適切ではない。

勇者に最期などありはしない。



物語の続きを話すとしよう。


『勇者は仲間達の助力もあって見事魔王を打ち倒しました。

崩れ去る魔王に安堵し、勇者一行は腰をおろします。

勇者一行はお互いに自分達の夢を語りました。悲しみを語り合いました。喜びを語り合いました。それらは魔王を討つまでの旅路という思い出に彩られた泥臭く、しかし美しいものでした。


彼らは日が沈んでも語り続けました。

やがて食料が尽き勇者一行は帰路につきました。


国、いえ、世界中は歓喜の渦に包まれました。

勇者一行もその様子を見て涙を流しました。

自分達の旅は報われたのだ、と。


勇者が違和感に気づいたのはその十数年後でした。

自分の顔が若いままなのです。


さらに十年後、やはり顔は変わりません


さらに十年後、顔が変わらない


さらに十年後、友が死んだ


十年後、顔は変わらない


十年後、妻が死んだ


十年後、死ねない


十年後、息子が死んだ


百年後、国が滅んだ


千年後、友が死んだ


一万年後、俺を知るものは誰もいなくなった。

いや、そもそも俺は誰だ?


俺は勇者で、魔王が妻が息子が友が国が世界が夢が過去が異世界が危険が顔がああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』



……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………




あたしは冒険の物語が大好きだった。

だから家の中を探索していた時にこの古びた物語を見つけた時は心が踊ったものだ。


『むかしむかしあるところに恐ろしい怪物がいました。

怪物はとても強大な力を持っており世界中に厄災を振りまきました。

怪物は様々な名で呼ばれましたがその中でも魔物達を率いる王、魔王という名が広く知れ渡っていました。


世界の半分以上を魔王に占拠された人類は下された神託に従い異世界から一人の勇者を召喚しました。


勇者は当初こそただの青年と変わりませんでしたが、旅を続けていく内にめきめきと力をつけていき、すぐに強大な魔物達と渡り合えるだけの実力を手に入れました。


勇者は長い長い旅の果てに不死身の魔王と相対し、仲間の助力もあって見事魔王を打ち倒しました。


こうして世界に平和が訪れたのでした。

勇者様は今も私達を見守ってくれているでしょう。』


何度も読み込んでボロボロになった本をバックの中に放り込む。


その本の余白には勇者の真実が記されていた。


つまり勇者はまだ生きてるってことだ。


あたしは親の反対を押し切って勇者を探す旅に出ることにした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...