不死身の勇者を殺すまで

響世燐光

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時間逆行

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「グスッ、グスッ、ずびーーーーーーーーーー!!!!!!うぅ、師匠がそんなに辛い思いをしてきたなんて」

「師匠ではない」


修行が始まって一年、少しだけ少女に心を開いた不老不死は自身の覚えている生い立ちをポツポツと話し始めました。


そうすると彼女はまるでそれが自分の事かのように反応するものですから不老不死はそのたびに困った表情を浮かべました。


感情が薄れて久しい彼にとってはその在り方はとても眩しいものでした。


彼女は一年の修行を経て自身の体を動物の姿へと变化させる術を学びました。

これは才能溢れる彼女だから出来たことでしょう。

何故なら不老不死はこれを覚えるのに千年近くの歳月を費やしたのですから。



修行が始まって2年、彼女は気を操る闘争術を学びました。


「てぃっ!」


目の前の少女が放った正拳突きが巻き起こした風圧が木々をなぎ倒し、山に風穴を開けた。


「………………」


少し張り切りすぎたかもしれない。

いや、悪いのは俺ではない。

そもそも俺が教えたのは気の操り方と俺が編み出した動きの基本だけ。

山に穴をあける方法なんていうのは教えていない。


「師匠!次は何をすれば?!」

「もういいんじゃないか?」

「え?」

「お前はなんのために力を求める」

「それは…………」

「魔王が打ち倒されて以来魔物の力と知能は大きく低下したはずだ。それ以上の力を手にした所で人々の政治に利用されるだけだろう。それでもまだ力を求めるというのならその理由を教えてくれ」

「…………」


目の前の少女の頬が赤らむ。


「どうした、答えられないのか」

「そ、それは…………師匠みたいな冒険家になりたいからです!」

「………………」


不老不死はもう少しだけ少女に戦い方を教えることにしました。



修行が始まって3年、彼女は特別な力を手に入れました。


「お前に頼みがある」

「し、師匠、なんですいきなり」

「俺を殺してくれ」

「へ?いやいや!師匠不死身じゃないですか!そもそも師匠を殺すなんてそんな」

「ベル、聞いてくれ」

「…………はい」


それから不老不死は少女に3年間で自分が気づいたことを話し始めました。

彼女には特別な力、時間を超える能力があること。

本来小さな範囲でしか起こすことのできない奇跡のようなそれを少女は世界の範囲で使うことが出来るだろうということを


「で、でもあたし一回も時間なんて戻したことないですよ」

「それはそうだろう。時間を戻すのに、ましてや世界中の時間を戻すのに使う力は想像を絶するものだ。修行前のお前には数刻戻すことも出来ないのは当然だ。だが修行を終えた今なら」


不老不死は目で訴えます。

少女は不老不死の苦しみをよく理解していました。その苦しみが他人の理解が及ばないほど凄まじいものだという事を。


だから彼女は涙を流しながら答えます。


「分かりました。過去に戻って師匠を苦しまないように殺します」

「…………いや、すまん。言い方を間違えた。別に直接俺を殺さなくていい」

「え!?」

「俺は魔王を殺したことで不死性を手に入れた。他の仲間達に受け継がれていない以上。不死は直接手を下した相手に受け継がれるのだろう」

「と、ということはあたしが魔王を殺せば」

「そんなわけ無いだろう。そうしたらお前は未来永劫苦しみ続ける事になるぞ。…………いいか、不老不死という概念は何も人間だけのものでは無い。植物にも、動物にも虫にも命という概念は存在するんだ。」

「な、なるほど……?」

「つまりだな…………」





「あぁ!」

「よし、理解出来たようだな。あぁ、もう夜か…………お別れだな」

「え?」

「星の位置の関係で時間逆行をすることができるのはこの星空を除いてないんだ」


少女が空を見上げると一面を覆い尽くす流星群が流れていました。

地面が光り輝き始めます。


「ベル、お前には沢山のものを貰ったよ。ありがとう。過去の世界にお前を知るものは一人もいない。苦しい旅になるだろう。もしそれが嫌ならば今すぐ術を中断する」


「師匠、あたし師匠みたいな冒険家になりたいって言ってたよね」

「あぁ」

「あたしが師匠の活躍全部かっさらっちゃうから未来で覚悟しててね!」

「あぁ、頼んだぞ!俺の一番弟子!」


不老不死は笑顔でそう言いました。

光は段々と輝きを増し、やがて世界の全てを覆いました。



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