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刹那の出逢い 3
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冥府の上空に浮く王のねじろへ着くと、ボクは妖鬼の正体に戻り、周辺の妖鬼を一瞬で粉みじんにした。
神妖の青年から力を得る前と後では、子ネズミと竜鬼ほどの差があった。
ちょうど神妖狩りに出かけるところだったのか、数千の妖鬼が集まっていたため、その血しぶきの量は尋常ではないものとなってしまった。
舞い上がった血しぶきが霧となり、ボクの青い上衣をしっとりと濡らす。
ボクは力の加減の難しさを感じて少しの間手の内で調整をしていたが、衣が濡れてしまったことに気づき不機嫌になった。
すかさず、自分の周りに小さく結界を張ると衣を浄化する。
イラつく感情のまま巨大な門扉をけ破り、そこに集まる妖鬼を瞬きの間に刻み尽くす。
誰かが出迎えてくれる様子もないので、ボクは勝手に入らせてもらうことにした。
とりあえず巨大な館の中の気配を探ってみると、ひときわ大きな魂が一つある。
ボクはその一つを残し、数百ほど蠢いていた妖鬼の魂を焼き尽くした。
歩いていくのも面倒に感じ、そのまま妖鬼の王の前に転移する。
一応の結界が張られてはいたが、今のボクにはクモの巣ほどの意味すらなさなかった。
巨大で禍々しい身体を玉座に据えた妖鬼の王は、突然現れたボクを捉えると驚きに目を見開いた。
腰を一瞬浮かせたが、すぐに座り直してこちらをにらみすえてくる。
「なんだ。貴様は。」
「名前を聞いてるのかな?だとしたら、ボクの名は蒼だ。用向きを尋ねたのだとしたら、答えは違う。君を殺しにきたんだよ。」
ボクがそう言うと、妖鬼の王は地鳴りのするような声で笑った。
「ねぇ。うるさいんだけど。・・・・・ボク、品のない奴とうるさいやつって吐き気がするほど嫌いなんだよね。ホーント・・・黙れよな。」
その言葉に、妖鬼の王は目を血走らせた。
「若造が。どうやってここまで入ってきたのか知らんが、生きて帰れると思うなよ。」
「ん?なんで?」
「馬鹿めが。この城に、いったいどれだけの妖鬼がいると思っているんだ。大体、お前のその貧相な妖気はなんだ。赤子でも幾分ましだろうが。大方ここにこれたのも、あまりにも気が少なすぎて気づかれなかったからではないのか。」
それを聞いて、ボクは肩を震わせてうつむいた。
妖鬼の王は、ボクが絶望に打ちひしがれて泣いていると思ったのか、ニヤリと下卑た笑みを張り付かせ分厚い舌で唇をなめた。
「お前、容姿は宝玉のように美しいな。・・・・・泣くな泣くな。跪いて忠誠を誓え。此度の罪は不問にし、儂のモノにしてやる。」
その言葉に、ついに笑いをこらえきれなくなったボクは、盛大に噴き出し声を高くして笑った。
「忠誠を誓う?ボクの妖気の大きさを、見ることすらできないお前ごときにか?はははっ・・・・あんた以外の連中なんて、もうとっくに殺してきたさ。王なんだろ?そのくらい分かれよな。」
妖鬼の王は、こめかみに青筋を浮き上がらせ、口をつぐんだ。
一瞬の後、気配を探り状況を把握したらしい彼は、目を大きく見開き、驚愕の表情でボクを見つめた。
「まさか・・・・貴様がやったというのか。」
「そうだけど?」
妖鬼の王は少しの沈黙の後、震える声でボクに提案してきた。
「お前、儂と組まぬか。」
ボクは目を細めて彼を見た。
ボクが興味を持ったと思ったのか、妖鬼の王は手元に置いていた一振りの美しい刀を手にとると、それをみせびらかすようにかざしながら、饒舌になって語りだした。
「これを見よ。今の神妖界には強靭な力を持つ神妖がおる。これはそやつが儂に突き刺していった刀だ。つい先日、そいつの配下のガキを餌にようやく深手を負わせたのだが、あと少しのところで見失ってしまった。とはいえ、そやつの目を手に入れるのは時間の問題だ。それを喰えば儂とお前の2人だけで、全ての世界を掌握することもできよう。」
妖鬼の王の戯言を最後まできちんと聞いてから、ボクはきっぱり断ってやった。
「断る。面倒だ・・・・・。それに言ったろ。ボクは下品な奴が、嫌いなんだよ。」
そう言って、ボクは妖鬼の王の首を切り落とした。
驚いた表情のまま、巨大で禍々しい頭がドサリと身体から落ちる。
それを足でけりあげ、わしづかみにしてから、ボクは、無表情のまま妖気の王の血走った両目を引きずり出し、食いちぎって飲み下した。
「まずいな・・・。」
ボクは一言そうつぶやくと、あの美しい神妖の青年と共に時を過ごしてきたであろう刀を手に、三毛の待つ洞窟へと転移した。
神妖の青年から力を得る前と後では、子ネズミと竜鬼ほどの差があった。
ちょうど神妖狩りに出かけるところだったのか、数千の妖鬼が集まっていたため、その血しぶきの量は尋常ではないものとなってしまった。
舞い上がった血しぶきが霧となり、ボクの青い上衣をしっとりと濡らす。
ボクは力の加減の難しさを感じて少しの間手の内で調整をしていたが、衣が濡れてしまったことに気づき不機嫌になった。
すかさず、自分の周りに小さく結界を張ると衣を浄化する。
イラつく感情のまま巨大な門扉をけ破り、そこに集まる妖鬼を瞬きの間に刻み尽くす。
誰かが出迎えてくれる様子もないので、ボクは勝手に入らせてもらうことにした。
とりあえず巨大な館の中の気配を探ってみると、ひときわ大きな魂が一つある。
ボクはその一つを残し、数百ほど蠢いていた妖鬼の魂を焼き尽くした。
歩いていくのも面倒に感じ、そのまま妖鬼の王の前に転移する。
一応の結界が張られてはいたが、今のボクにはクモの巣ほどの意味すらなさなかった。
巨大で禍々しい身体を玉座に据えた妖鬼の王は、突然現れたボクを捉えると驚きに目を見開いた。
腰を一瞬浮かせたが、すぐに座り直してこちらをにらみすえてくる。
「なんだ。貴様は。」
「名前を聞いてるのかな?だとしたら、ボクの名は蒼だ。用向きを尋ねたのだとしたら、答えは違う。君を殺しにきたんだよ。」
ボクがそう言うと、妖鬼の王は地鳴りのするような声で笑った。
「ねぇ。うるさいんだけど。・・・・・ボク、品のない奴とうるさいやつって吐き気がするほど嫌いなんだよね。ホーント・・・黙れよな。」
その言葉に、妖鬼の王は目を血走らせた。
「若造が。どうやってここまで入ってきたのか知らんが、生きて帰れると思うなよ。」
「ん?なんで?」
「馬鹿めが。この城に、いったいどれだけの妖鬼がいると思っているんだ。大体、お前のその貧相な妖気はなんだ。赤子でも幾分ましだろうが。大方ここにこれたのも、あまりにも気が少なすぎて気づかれなかったからではないのか。」
それを聞いて、ボクは肩を震わせてうつむいた。
妖鬼の王は、ボクが絶望に打ちひしがれて泣いていると思ったのか、ニヤリと下卑た笑みを張り付かせ分厚い舌で唇をなめた。
「お前、容姿は宝玉のように美しいな。・・・・・泣くな泣くな。跪いて忠誠を誓え。此度の罪は不問にし、儂のモノにしてやる。」
その言葉に、ついに笑いをこらえきれなくなったボクは、盛大に噴き出し声を高くして笑った。
「忠誠を誓う?ボクの妖気の大きさを、見ることすらできないお前ごときにか?はははっ・・・・あんた以外の連中なんて、もうとっくに殺してきたさ。王なんだろ?そのくらい分かれよな。」
妖鬼の王は、こめかみに青筋を浮き上がらせ、口をつぐんだ。
一瞬の後、気配を探り状況を把握したらしい彼は、目を大きく見開き、驚愕の表情でボクを見つめた。
「まさか・・・・貴様がやったというのか。」
「そうだけど?」
妖鬼の王は少しの沈黙の後、震える声でボクに提案してきた。
「お前、儂と組まぬか。」
ボクは目を細めて彼を見た。
ボクが興味を持ったと思ったのか、妖鬼の王は手元に置いていた一振りの美しい刀を手にとると、それをみせびらかすようにかざしながら、饒舌になって語りだした。
「これを見よ。今の神妖界には強靭な力を持つ神妖がおる。これはそやつが儂に突き刺していった刀だ。つい先日、そいつの配下のガキを餌にようやく深手を負わせたのだが、あと少しのところで見失ってしまった。とはいえ、そやつの目を手に入れるのは時間の問題だ。それを喰えば儂とお前の2人だけで、全ての世界を掌握することもできよう。」
妖鬼の王の戯言を最後まできちんと聞いてから、ボクはきっぱり断ってやった。
「断る。面倒だ・・・・・。それに言ったろ。ボクは下品な奴が、嫌いなんだよ。」
そう言って、ボクは妖鬼の王の首を切り落とした。
驚いた表情のまま、巨大で禍々しい頭がドサリと身体から落ちる。
それを足でけりあげ、わしづかみにしてから、ボクは、無表情のまま妖気の王の血走った両目を引きずり出し、食いちぎって飲み下した。
「まずいな・・・。」
ボクは一言そうつぶやくと、あの美しい神妖の青年と共に時を過ごしてきたであろう刀を手に、三毛の待つ洞窟へと転移した。
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