74 / 324
妖月 1
しおりを挟む
白妙、久遠、翡翠の3人は、目くばせをした。
翡翠が小さな鳥居にむかい、呼び掛ける。
「朱華、うすらい、みずは、たまより、社、颯。参られよ。」
名を呼ばれ、次々と神妖が姿を現し始めた。
白妙を含め9人の神妖が集まったところで、久遠が印を組んだ。
「閉じろ。」
久遠が唱えると同時に、俺たちは取り囲むようば静けさに一瞬で包み込まれた。
「降ろせ。」
今度は、久遠を軸に透明な壁のようなものがドーム状にどこまでも広がっていく。
俺たち以外の神妖の姿が壁の内側から全て消えた。
木々や草花でさえ動きを止めたようだ。
「さて、まだ挨拶の済んでいない者もいるのではないか。」
「はいはーい。ボク、まだだよ。」
白妙の問いに一人の少年が手を上げる。
「颯か・・・・・久しいな。」
「まあね。ボク、じっとしてるの苦手だから。ここに来るのも50年ぶりくらいかも。」
颯と呼ばれた少年姿の神妖は、ニッコリ笑って首をかしげた。
癖のない白髪がサラリと流れる。
薄い紫色の瞳で俺たちを興味深げに見つめながら、颯は自己紹介を始めた。
「ボクは、颯。妖月以外の神妖たちには”放”って呼ばれてる。君たちが彼呼迷軌が選んだ執護の卵たちだね。ボク、彼呼迷軌にはよく立ち寄っているんだ。これからよろしくね。」
颯が話し終えると、その後ろから透き通るような美女が控えめに声を上げた。
「さきほど一度お会いしましたね。うすらいと申します。皆には”冷”と呼ばれております。以後お見知りおきを。」
「あ!綿氷の!」
身に着けている服と雰囲気が大分違っていて一瞬気づかなかった。
よくよく見てみると、さきほど綿氷を撃っていた屋台の店主その人だ。
「あの、質問してもいいですか?」
「もちろんだ。遠慮はいらん。」
白妙が優しい眼差しで返してくれる。
白妙と俺のやり取りを他の神妖が少し驚いた様子で眺めてくるのが落ち着かなかったが、俺は気になっていることを質問してみることにした。
「さっき言っていた、妖月ってなんですか?」
俺の質問に、颯が爽やかな笑顔でうなずいた。
「妖月っていうのはね、現在は、白妙、海神、加具土命、社、たまより、うすらい、朱華、みずは、そしてボクのことを指すんだ。神妖は力の強さに分けて「悠」「界」「達」「至」「凡」という5つの階級でわかれている。だいたいの目安で言うと、神妖のほとんどは凡、凡100万の能力をもつ者が至、至1万の能力をもつ者が達、達100の能力をもつ者が界、界全員を合わせた力と同等以上の力をもつ者が、悠と呼ばれてる。妖月は界以上の神妖の集いのことなんだ。」
ピントこないけど、とにかく凄く力の強い神妖たちの特別な集まりってことなんだろう。
俺は颯にお礼を言って、もう一つ気になることを聞いてみた。
「呼び名が2つあるのはなぜですか?俺たちは何て呼ぶのが正解なんだろう。」
「確かに。俺らの世界じゃ神様だったりするわけだから、様つけて呼ぶが正解なのかもな。」
俺と勝の言葉に光弘がうなずく。
白妙が横目でこちらをみながら、面白そうにフッと笑った。
「なんとでも好きに呼べ。敬称などいらん。お前が私を白妙と呼べば私も同じようにお前を呼ぶ。それだけのこと。」
白妙の悠然と構えている様に熱い視線を送りながら、海神が口を開いた。
「我らの呼び名が2つあるのには理由がある。神妖の名は、生まれた時に魂に刻まれているのだ。その名を口にするということは、魂に触れると同じこと。力弱き神妖が強すぎる魂にふれれば、たちどころにその存在は呑まれ、儚くなってしまう。そのため、神妖は我ら妖月をもう一つの名で呼ぶのだ。人の子は影響を受けぬから安心するがよい。」
まさか、神妖たちが彼らをもう一つの名で呼ぶことに、そんな恐ろしい理由があったなんて。
俺たちが驚いて顔を見合わせていると、翡翠が光弘に視線を送りながら口を開いた。
「そうそう、お伝えするのが遅くなりましたが、ここは久遠の張った結界の中ですから、他の神妖は一切干渉することがありません。私の見立てではその癒もかなりの力を持っているようですし、皆さん、いつも通り安心してお話いただいて大丈夫ですよ。」
光弘はハッとした様子で翡翠を見つめた。
恐らく翡翠は、光弘にここでなら話をしても大丈夫だと暗に伝えているのだろう。
つまり、翡翠は光弘が何か不思議な力を持っていることに気づいている。
気づいたうえで、あくまでも光弘が自分から俺たちに何かを伝えるまでは、そっとしておこうとしてくれているのだ。
「結界と言えば・・・・だ。」
加具土命が目を細め、いぶかし気に久遠を見つめた。
「お主の結界であれば、簡単なものであっても儂とて破るには手を焼く。それを神凪社まで降ろすとは、用心が過ぎるように思えるが。久遠・・・・・お主、何をそんなに恐れている。妖月を開いたことに関係しているのではないか。」
久遠が美しい顔を辛そうに歪め、静かに白妙に視線を送った。
白妙は久遠の視線を受け、小さくうなずくと、腕を組んで力なく視線を下へ落とした。
「・・・・・・宵闇が・・・・・・生きているのかもしれんのだ。」
ふいに放たれた白妙の言葉に、その場の空気が凍り付いた。
翡翠が小さな鳥居にむかい、呼び掛ける。
「朱華、うすらい、みずは、たまより、社、颯。参られよ。」
名を呼ばれ、次々と神妖が姿を現し始めた。
白妙を含め9人の神妖が集まったところで、久遠が印を組んだ。
「閉じろ。」
久遠が唱えると同時に、俺たちは取り囲むようば静けさに一瞬で包み込まれた。
「降ろせ。」
今度は、久遠を軸に透明な壁のようなものがドーム状にどこまでも広がっていく。
俺たち以外の神妖の姿が壁の内側から全て消えた。
木々や草花でさえ動きを止めたようだ。
「さて、まだ挨拶の済んでいない者もいるのではないか。」
「はいはーい。ボク、まだだよ。」
白妙の問いに一人の少年が手を上げる。
「颯か・・・・・久しいな。」
「まあね。ボク、じっとしてるの苦手だから。ここに来るのも50年ぶりくらいかも。」
颯と呼ばれた少年姿の神妖は、ニッコリ笑って首をかしげた。
癖のない白髪がサラリと流れる。
薄い紫色の瞳で俺たちを興味深げに見つめながら、颯は自己紹介を始めた。
「ボクは、颯。妖月以外の神妖たちには”放”って呼ばれてる。君たちが彼呼迷軌が選んだ執護の卵たちだね。ボク、彼呼迷軌にはよく立ち寄っているんだ。これからよろしくね。」
颯が話し終えると、その後ろから透き通るような美女が控えめに声を上げた。
「さきほど一度お会いしましたね。うすらいと申します。皆には”冷”と呼ばれております。以後お見知りおきを。」
「あ!綿氷の!」
身に着けている服と雰囲気が大分違っていて一瞬気づかなかった。
よくよく見てみると、さきほど綿氷を撃っていた屋台の店主その人だ。
「あの、質問してもいいですか?」
「もちろんだ。遠慮はいらん。」
白妙が優しい眼差しで返してくれる。
白妙と俺のやり取りを他の神妖が少し驚いた様子で眺めてくるのが落ち着かなかったが、俺は気になっていることを質問してみることにした。
「さっき言っていた、妖月ってなんですか?」
俺の質問に、颯が爽やかな笑顔でうなずいた。
「妖月っていうのはね、現在は、白妙、海神、加具土命、社、たまより、うすらい、朱華、みずは、そしてボクのことを指すんだ。神妖は力の強さに分けて「悠」「界」「達」「至」「凡」という5つの階級でわかれている。だいたいの目安で言うと、神妖のほとんどは凡、凡100万の能力をもつ者が至、至1万の能力をもつ者が達、達100の能力をもつ者が界、界全員を合わせた力と同等以上の力をもつ者が、悠と呼ばれてる。妖月は界以上の神妖の集いのことなんだ。」
ピントこないけど、とにかく凄く力の強い神妖たちの特別な集まりってことなんだろう。
俺は颯にお礼を言って、もう一つ気になることを聞いてみた。
「呼び名が2つあるのはなぜですか?俺たちは何て呼ぶのが正解なんだろう。」
「確かに。俺らの世界じゃ神様だったりするわけだから、様つけて呼ぶが正解なのかもな。」
俺と勝の言葉に光弘がうなずく。
白妙が横目でこちらをみながら、面白そうにフッと笑った。
「なんとでも好きに呼べ。敬称などいらん。お前が私を白妙と呼べば私も同じようにお前を呼ぶ。それだけのこと。」
白妙の悠然と構えている様に熱い視線を送りながら、海神が口を開いた。
「我らの呼び名が2つあるのには理由がある。神妖の名は、生まれた時に魂に刻まれているのだ。その名を口にするということは、魂に触れると同じこと。力弱き神妖が強すぎる魂にふれれば、たちどころにその存在は呑まれ、儚くなってしまう。そのため、神妖は我ら妖月をもう一つの名で呼ぶのだ。人の子は影響を受けぬから安心するがよい。」
まさか、神妖たちが彼らをもう一つの名で呼ぶことに、そんな恐ろしい理由があったなんて。
俺たちが驚いて顔を見合わせていると、翡翠が光弘に視線を送りながら口を開いた。
「そうそう、お伝えするのが遅くなりましたが、ここは久遠の張った結界の中ですから、他の神妖は一切干渉することがありません。私の見立てではその癒もかなりの力を持っているようですし、皆さん、いつも通り安心してお話いただいて大丈夫ですよ。」
光弘はハッとした様子で翡翠を見つめた。
恐らく翡翠は、光弘にここでなら話をしても大丈夫だと暗に伝えているのだろう。
つまり、翡翠は光弘が何か不思議な力を持っていることに気づいている。
気づいたうえで、あくまでも光弘が自分から俺たちに何かを伝えるまでは、そっとしておこうとしてくれているのだ。
「結界と言えば・・・・だ。」
加具土命が目を細め、いぶかし気に久遠を見つめた。
「お主の結界であれば、簡単なものであっても儂とて破るには手を焼く。それを神凪社まで降ろすとは、用心が過ぎるように思えるが。久遠・・・・・お主、何をそんなに恐れている。妖月を開いたことに関係しているのではないか。」
久遠が美しい顔を辛そうに歪め、静かに白妙に視線を送った。
白妙は久遠の視線を受け、小さくうなずくと、腕を組んで力なく視線を下へ落とした。
「・・・・・・宵闇が・・・・・・生きているのかもしれんのだ。」
ふいに放たれた白妙の言葉に、その場の空気が凍り付いた。
0
あなたにおすすめの小説
愛とオルゴール
夜宮
恋愛
ジェシカは怒っていた。
父親が、同腹の弟ではなく妾の子を跡継ぎにしようとしていることを知ったからだ。
それに、ジェシカの恋人に横恋慕する伯爵令嬢が現れて……。
絡み合った過去と現在。
ジェシカは無事、弟を跡継ぎの座につけ、愛する人との未来を手にすることができるのだろうか。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~
namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。
父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。
だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった!
触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。
「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ!
「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ!
借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。
圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。
己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。
さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。
「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」
プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。
最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
私は私で幸せになりますので
あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。
ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。
それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。
最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる