彼呼迷軌(ひよめき)~言霊が紡ぐ最期の願い~

utsuro

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妖月 2

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 「馬鹿な!」 
 「冗談であろう。」 

 海神わだつみ加具土命かぐつちが全身で否定するように声を上げた。
 頭ごなしに否定されて、白妙しろたえが怒ってしまうんじゃないかと思った俺だったが、以外にも彼は、伏せていた視線をゆっくりと上げ、2人を見つめて寂しそうに微笑んだ。 

 「なぜそう思う?私は奴の事で・・・・・冗談など言わない。」 

 その儚げな表情から、彼が酷く傷ついているのだということが伝わってくる。
 白妙にこんな切ない表情をさせる宵闇よいやみとは、一体何者なんだろう。

 「・・・・・・すまない。配慮が足りなかった。許せ、白妙。」

 海神は真摯に頭を下げた。

 「だが、あ奴はすでに滅したはず。あれほどの力が野放しになっていれば、我らが気づかぬわけはない。」 

 海神の言葉に、妖月ようげつの誰もが、無言のまま首を縦に振り、肯定をしている。

 「・・・・・皆に、話しておかねばならぬことがある。」 

 俺たちは、黙って白妙の言葉を待った。 

 「2年前のことだ。私は、人の内に奴の残滓ざんしを見た。」 

 白妙の言葉に、朱華はねずがピクリと小さく反応した。

 「人・・・だと?・・・・・奴は人間の内にいるというのか。」 

 「そうだ。人にとり憑き、人界に仇を為しているものと思われる。都古が探らせているが、宵闇が人界への出入りに使用している回廊は、細い上に疑似回廊が無数に組み込まれていた。砂の山の中から一粒の砂を探すようなものだ。奴の尾を掴むことはできない。」

 「では、とり憑かれている人間の深層領域へ乗り込んで、奴ごと全て一息に焼き払ってしまえばよい。他に方法もない。」

 「いや、ダメでしょ。そんなことをしたら、その人は死んでしまうよ。」

 海神の発言に、はやてが間髪いれずにダメ出しをした。

 「颯よ。海神に肩入れするわけではないが、此度の件、1人の犠牲で済むのであれば、正直上々というもの。お主とてそれはわかっているはず。あれはもう儂らの知る宵闇よいやみではない。良心を失い破壊に酔いしれる残忍な化け物だ。なぜ生きていたのかはわからんが、放っておくわけにはいかん。その人間1人が死ねば事が収まるのであれば、大きな災いをなす前に、始末して・・・・」

 「加具土命。その辺でやめておけ。」
 
 突然の朱華の言葉に、なぜ急にそんなことを言われたのか理解できず、加具土命は眉根をひそめた。

 「お前。この場になぜ、この子らがいると思う?」

 「まさか・・・・・。」

 朱華の問いかけに、加具土命は固まって白妙に視線を送った。
 白妙は、息を吐くと真剣な眼差しで皆を見回し、光弘で視線を止めた。

 「海神、加具土命。そなたらの案を受けることはできん。・・・・・・宵闇が潜んでいるのは、この光弘の中なのだ。」
 
 「・・・・・・え?」 

 俺たちは4人同時に固まった。 

 「黙っていて悪かった。許せとは言わない。光弘に悪夢を見せ苦しめている者は、私にとって半身のような存在なのだ。以前、私がはらった・・・・・。」 

 「・・・・・。」 

 俺たちは何を言われているのかわからず、ただ黙って聞くことしかできなかった。

 「|彼呼迷軌ができる前のことだ。当時我らが住んでいた世界で争いが起きた。奴は正気を失っていた。突然、数えきれないほどの神妖を切り殺したのだ。私はそれをとめるため、宵闇を殺し、はらった・・・はずだった。」

 白妙は静かに光弘を見つめた。

 「なぜ宵闇が生きているのか、なぜお前にとり憑きあだをなしているのか、私にはわからない。・・・・だが、お前から宵闇を引きはがす手はある。」

 白妙の言葉にみんながざわめいた。
 捕まえるのが不可能なものをどうやって引きはがすというのだろう。

 「宵闇は光弘の心を介し、都古、真也、勝の3人の命を狙っている。3人を襲う時、宵闇は必ず細い回廊をこの者たちへ繋いでくる。それを逆手にとり、お前たちがこちら側から回廊を広げ、奴の領域へ入り込んでしまえばよいのだ。」

 白妙が言い放つ言葉を俺たちは唖然として聞いていた。 
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