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隠し名 2
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「ゆっくりで大丈夫。ここは時間を止めてあるから。」
少年の言葉に、光弘は静かに首を横に振った。
「もう、決まっているんだ。」
光弘のことばに、少年は驚いた表情をしたが、微笑みを浮かべ、鏡合わせのように光弘の手のひらと自分の手のひらを肩の前で合わせた。
「始めよう。」
「うん。」
少年は、光弘の額に自分の額を重ねた。
静かに目を閉じ、触れ合ったお互いの指先をゆっくりと組んでいく。
組まれた手をしっかり握りしめ、少年は口を開いた。
「目を閉じて、心の中で僕の名を呼んで。」
「わかった。」
光弘は、噛みしめるように・・・祈る様に、心の中でその名を口にした。
『紅葉』
組まれた手のひらと額から、小さな温もりが生まれ広がっていく。
水中にいるかのように身体に感じる重さがなくなり、空気が渦を巻くように2人を包み込んだ。
自分の手を握りしめてきた少年の手を、光弘はしっかりと握り返す。
胸の奥がたまらなく熱くなって、涙が溢れた。
「・・・・終わったよ。」
渦巻く風が去ると、ゆっくりと額を離し、紅葉は光弘にそう告げた。
「なぜ、この名をつけたのか・・・・聞いてもいい?」
紅葉の問いかけに、光弘は小首をかしげた。
「不思議に思うかもしれないけれど、君を見ていると、いつも心に浮かぶんだ。」
その答を聞き、紅葉は泣きそうな瞳を伏せ、またすぐに笑顔を光弘にむけた。
「そう・・・・・。とても、良い名だ・・・・・。ありがとう。」
光弘は、繋いだままになっている手が気になってきた。
自分が触れる度、紅葉はとても辛そうにしていたから・・・・・。
「手を・・・・・。」
「待って・・・・・。もう少しだけ、こうしていてもいい?」
よく見ると、紅葉の額には汗が浮んでいる。
呼吸も短く、荒かった。
「辛いのか?」
「ちょっとだけ。・・・・大丈夫だよ。すぐに落ち着くから。」
光弘はどうしていいか分からず戸惑いながら、繋いだ手をしっかり握った。
紅葉は、短く息を吐き出し笑った。
「心配しないで。悪い事じゃないんだ。考えていたより、僕に流れ込んでくる力が大きかっただけだから。」
そう言って目を閉じると、紅葉は再び、光弘と額を重ねてきた。
紅葉がこれ以上辛い思いをしないよう祈りながら、光弘は目を閉じた。
どれくらいそうしていただろうか。
紅葉が長く息を吐き出し、目を開けた。
「ありがとう。もう、大丈夫。」
離れていく手の温もりを寂しく想いながら、光弘は笑顔を返した。
「ねぇ。声に出して君の名を呼ぶ時は、"黒"と呼んでもいいか?」
「そうだね。なんでも好きに呼んでくれていい。声に出さなくても、隠し名を呼ばれれば、僕には伝わる。」
そう答えながら、紅葉は心の中で驚いていた。
黒の名を覚えていたのか・・・・・。
それなのに、どうして「なんて呼べばいい」などと聞いてきたんだろう。
もしかして、光弘の中にまだ・・・・。
そこまで考えて、黒は首を横に振った。
まさか・・・・。考えすぎだな。
紅葉は、手のひらと額に残る温もりを心の中で抱きしめながら、光弘の夢を後にした。
少年の言葉に、光弘は静かに首を横に振った。
「もう、決まっているんだ。」
光弘のことばに、少年は驚いた表情をしたが、微笑みを浮かべ、鏡合わせのように光弘の手のひらと自分の手のひらを肩の前で合わせた。
「始めよう。」
「うん。」
少年は、光弘の額に自分の額を重ねた。
静かに目を閉じ、触れ合ったお互いの指先をゆっくりと組んでいく。
組まれた手をしっかり握りしめ、少年は口を開いた。
「目を閉じて、心の中で僕の名を呼んで。」
「わかった。」
光弘は、噛みしめるように・・・祈る様に、心の中でその名を口にした。
『紅葉』
組まれた手のひらと額から、小さな温もりが生まれ広がっていく。
水中にいるかのように身体に感じる重さがなくなり、空気が渦を巻くように2人を包み込んだ。
自分の手を握りしめてきた少年の手を、光弘はしっかりと握り返す。
胸の奥がたまらなく熱くなって、涙が溢れた。
「・・・・終わったよ。」
渦巻く風が去ると、ゆっくりと額を離し、紅葉は光弘にそう告げた。
「なぜ、この名をつけたのか・・・・聞いてもいい?」
紅葉の問いかけに、光弘は小首をかしげた。
「不思議に思うかもしれないけれど、君を見ていると、いつも心に浮かぶんだ。」
その答を聞き、紅葉は泣きそうな瞳を伏せ、またすぐに笑顔を光弘にむけた。
「そう・・・・・。とても、良い名だ・・・・・。ありがとう。」
光弘は、繋いだままになっている手が気になってきた。
自分が触れる度、紅葉はとても辛そうにしていたから・・・・・。
「手を・・・・・。」
「待って・・・・・。もう少しだけ、こうしていてもいい?」
よく見ると、紅葉の額には汗が浮んでいる。
呼吸も短く、荒かった。
「辛いのか?」
「ちょっとだけ。・・・・大丈夫だよ。すぐに落ち着くから。」
光弘はどうしていいか分からず戸惑いながら、繋いだ手をしっかり握った。
紅葉は、短く息を吐き出し笑った。
「心配しないで。悪い事じゃないんだ。考えていたより、僕に流れ込んでくる力が大きかっただけだから。」
そう言って目を閉じると、紅葉は再び、光弘と額を重ねてきた。
紅葉がこれ以上辛い思いをしないよう祈りながら、光弘は目を閉じた。
どれくらいそうしていただろうか。
紅葉が長く息を吐き出し、目を開けた。
「ありがとう。もう、大丈夫。」
離れていく手の温もりを寂しく想いながら、光弘は笑顔を返した。
「ねぇ。声に出して君の名を呼ぶ時は、"黒"と呼んでもいいか?」
「そうだね。なんでも好きに呼んでくれていい。声に出さなくても、隠し名を呼ばれれば、僕には伝わる。」
そう答えながら、紅葉は心の中で驚いていた。
黒の名を覚えていたのか・・・・・。
それなのに、どうして「なんて呼べばいい」などと聞いてきたんだろう。
もしかして、光弘の中にまだ・・・・。
そこまで考えて、黒は首を横に振った。
まさか・・・・。考えすぎだな。
紅葉は、手のひらと額に残る温もりを心の中で抱きしめながら、光弘の夢を後にした。
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