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宵闇の過去 2
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神妖の長が仮面の子を養うようになってから、白妙は足しげく長の館へ通うようになった。
仮面の子は、思いやり深く賢い子でありながら好奇心が旺盛で人懐こく、とても好意的な質をしていた。
宵闇と龍粋、長の前以外では氷のような表情をほとんど崩すことのない白妙だったが、この子供にかかわる様になり、外でも少しずつ柔らかい表情を見せるようになった。
「白妙は、本当に美人さんだ。そうやって、もっとたくさん笑って、いろんな人に話しかけるようになれば、誰もが君に夢中になる。俺のこの図々しいくらいの人懐こさを、君に少し移せたらいいんだが。・・・なぁ、お前も、そう思うだろう?」
宵闇は白妙の膝の上で大人しく抱かれている幼子に話しかけた。
「白妙は本当に美人さんっ。みんな白妙が大好きっ。・・・僕、白妙と長と宵闇と龍粋の奏でる音も、大好きっ。」
「・・・・こいつ!言うじゃないか・・・・俺まで嬉しがらせるのかよ。」
宵闇は弾けるような笑みを浮かべると、懐に忍ばせていた繭の中から滑らかな木で作られた見慣れない楽器を取り出した。
薄い金属の板がたくさん張られた木箱のようなそれを幼子に渡すと、宵闇は金属の薄い板を一枚、しなやかな長い指で弾いた。
柔らかな音色が一音、そっと響き余韻を残して遠ざかっていく。
「やるよ。お前、こういうの好きだろ?」
「いいの?」
「あぁ。俺は笛、白妙は楊琴、龍粋は胡琴、長は歌が得意だ。だったらお前はいずれ、琴をやればいい。そのうち俺のをやるよ。その前の耳慣らしにそれを使っておけ。」
仮面の中から、キラキラと目を輝かせ覗き込んでくる幼子は、長だけでなくみんなの心を和ませた。
好奇心のまま、いつも熱心に耳を傾け、瞳を煌めかせる幼子の姿はとても好ましく、思わずいらないことまで教えてやりたくなるのだ。
・・・・・宵闇は毎日、自分のその日の役目をさっさと済ませると、ニコニコしながら白妙について回っていた。
白妙や龍粋と違い、そもそも一所に腰を落ち着けていられる質ではない宵闇だったが、白妙の傍にいるのには彼なりの理由があった。
清廉潔白とし口数もさほど多くない白妙は、淡白な対応と冷たい表情から、高慢だお高いだのと、いわれのない悪口を影で吐き出されることが頻繁にあった。
さらには、妖艶でたぐいまれなる美しさを誇る彼女をよく思わない女神妖の妬みの対象として、常に引き合いに出されてもいたのだ。
白妙は何を耳にしても、顔色1つ変えず凛としてたたずんでいたが、彼女が毅然と振舞えば振舞うほど、その姿勢がおごっていると一層悪口を増幅させてしまう。
宵闇はそんな彼女の心のうちを正しく理解していた。
仮面の子は、思いやり深く賢い子でありながら好奇心が旺盛で人懐こく、とても好意的な質をしていた。
宵闇と龍粋、長の前以外では氷のような表情をほとんど崩すことのない白妙だったが、この子供にかかわる様になり、外でも少しずつ柔らかい表情を見せるようになった。
「白妙は、本当に美人さんだ。そうやって、もっとたくさん笑って、いろんな人に話しかけるようになれば、誰もが君に夢中になる。俺のこの図々しいくらいの人懐こさを、君に少し移せたらいいんだが。・・・なぁ、お前も、そう思うだろう?」
宵闇は白妙の膝の上で大人しく抱かれている幼子に話しかけた。
「白妙は本当に美人さんっ。みんな白妙が大好きっ。・・・僕、白妙と長と宵闇と龍粋の奏でる音も、大好きっ。」
「・・・・こいつ!言うじゃないか・・・・俺まで嬉しがらせるのかよ。」
宵闇は弾けるような笑みを浮かべると、懐に忍ばせていた繭の中から滑らかな木で作られた見慣れない楽器を取り出した。
薄い金属の板がたくさん張られた木箱のようなそれを幼子に渡すと、宵闇は金属の薄い板を一枚、しなやかな長い指で弾いた。
柔らかな音色が一音、そっと響き余韻を残して遠ざかっていく。
「やるよ。お前、こういうの好きだろ?」
「いいの?」
「あぁ。俺は笛、白妙は楊琴、龍粋は胡琴、長は歌が得意だ。だったらお前はいずれ、琴をやればいい。そのうち俺のをやるよ。その前の耳慣らしにそれを使っておけ。」
仮面の中から、キラキラと目を輝かせ覗き込んでくる幼子は、長だけでなくみんなの心を和ませた。
好奇心のまま、いつも熱心に耳を傾け、瞳を煌めかせる幼子の姿はとても好ましく、思わずいらないことまで教えてやりたくなるのだ。
・・・・・宵闇は毎日、自分のその日の役目をさっさと済ませると、ニコニコしながら白妙について回っていた。
白妙や龍粋と違い、そもそも一所に腰を落ち着けていられる質ではない宵闇だったが、白妙の傍にいるのには彼なりの理由があった。
清廉潔白とし口数もさほど多くない白妙は、淡白な対応と冷たい表情から、高慢だお高いだのと、いわれのない悪口を影で吐き出されることが頻繁にあった。
さらには、妖艶でたぐいまれなる美しさを誇る彼女をよく思わない女神妖の妬みの対象として、常に引き合いに出されてもいたのだ。
白妙は何を耳にしても、顔色1つ変えず凛としてたたずんでいたが、彼女が毅然と振舞えば振舞うほど、その姿勢がおごっていると一層悪口を増幅させてしまう。
宵闇はそんな彼女の心のうちを正しく理解していた。
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