彼呼迷軌(ひよめき)~言霊が紡ぐ最期の願い~

utsuro

文字の大きさ
185 / 324

命逢の朝 2

しおりを挟む
「光弘・・・・お前、黒が傷だらけになっている姿や、高い塔のある景色を見たことあるか?・・・・昔の白妙の姿とか・・・・・。」

 唐突な質問に、光弘が小首を傾げた。
 光弘の傍らで、楓乃子がかすかに表情を強張らせている。
 俺が視線をなげると、楓乃子は少し顎を上げ、生意気そうに見える表情で小さく息を吐き、視線をそらしてしまった。

 「俺と勝と都古の三人が同じような光景を見たことがあったんだ。・・・・ひょっとしたら、光弘もって思ったんだけど・・・・」

 光弘はあごに手を当てた。
 その仕草は、何かを思い出そうとしているようにも、言うべきなのかを迷っているようにも見える。

 「黒が傷だらけになっている姿は・・・・昨日。高い塔のある景色は、数年前に一度だけ見たことがある。昔の白妙の姿は思い当たるものはないよ。」

 やはり、光弘もいくつか同じものを見たことがあったのか・・・・・。

 「もはや偶然とはとても言えないな・・・・。4人が同じ幻覚を見るというのも、現実的じゃない。何か繋がりがあるのだろう・・・・。」

 都古の言葉に、光弘は困ったように眉間にしわを寄せた。

 「都古・・・高い塔の景色は俺が直接見たわけじゃない。・・・・夢の中で、黒に見せてもらったんだ。」

 「黒に・・・・?」

 「ああ。・・・・夢で黒が見せてくれた景色の中に、高い塔のある場所があった。高く伸びた白い塔だ。塔の周りには白い壁の家々が連なっていて、凄くきれいなところだった。・・・・あれは、恐らく俺たちの世界じゃない。」

 俺は混乱して、思わず光弘に聞き返した。 
 
 「黒の記憶の中の景色を見たってことか・・・・?」

 「・・・うん。」

 黒の傷ついた姿を見た・・・・俺、勝、都古。
 高い塔の景色を見た・・・・俺、都古、黒。
 そして、白妙の過去の姿と思われるものを見た・・・・勝。

 光弘は、幻覚のようなものを何も見ていないということか。
 なぜ黒の名が飛び出してきたのだろう・・・・。

 傷ついていた黒・・・・・光弘に高い塔の景色を見せた黒。

 たったこれだけのピースを渡されただけでは、一体どんな絵が描かれているのか、見当もつかない。

 ただ、このパズルのピースは同じ絵のもので、それをつなぐ者の中に黒がいるのだということだけは、ぼんやりと確認できる。

 黒に聞けば、この情景が何を意味しているのか、わかるかもしれない。
 だが・・・・。

 「光弘。ここにきて平気だったのか?・・・・黒は?」

 「うん。蒼の館で休ませてもらって、今はよく寝てる・・・。本当はついていたいけど・・・・今はもっと、強くなりたいんだ。・・・・黒が傷つくのを見るのは、もう嫌だから。」

 真っ白になるほど強く握りしめられた光弘の拳を、勝が静かに手に取った。

 「そんなに強く握るなよ。・・・・ケガしちゃうだろ。」

 勝にそっと指を開かれながら光弘が見上げると、勝は哀しそうに微笑んだ。

 「黒は、光弘が傷つくのを喜ばないよ。・・・・あいつがお前を大事にしてるのに、お前が傷つけてどうする。・・・黒のことが大切ならさ、あいつが大事にしてるものを、光弘も大事にしてやれよ。」

 勝の言葉に、光弘は目を見開いている。
 そんな光弘の頭を軽くなでると、勝は腕を上げ身体を伸ばした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~

namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。 父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。 だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった! 触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。 「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ! 「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ! 借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。 圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。 己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。 さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。 「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」 プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。 最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

処理中です...