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毛むぐり 3
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「えっと・・・これは?」
腕に絡みついて離れなくなってしまった毛むぐりを、途方に暮れて見つめていると、海神が抑揚のない声でつぶやいた。
「好かれたな。」
蒼は愉快そうに声をたてて笑っている。
「よかったじゃないか。こいつらは普通、懐くまでにけっこう時間がかかる。宿主のえり好みも激しい・・・。まず、弱い者にはなかなか懐いたりしないしね。とにかくこれで君、いつでも鍛錬に励めるようになったじゃないか。」
自らの腕に巻き付いて嬉しそうにしている毛むぐりの存在はなかったことになっているのか、蒼はシレっとそんなことを言っている。
「真也・・・お前が使い良いというのならば、闇色を下地にし別の色を重ねても構わない・・・・・・。薄く伸ばした妖力を吸い付かせるようにして、指先を覆ってみろ。」
「・・・うん。」
海神の穏やかな声に励まされ、俺は言われたとおり意識を指先に集中させた。
だが、これがものすごく難しい。
先ほど波紋を放った時のような薄い妖力を、指先にただ集めるだけなら簡単なんだ。
それを薄く伸ばして指先に吸い付かせるというのは、どうやらかなりの精神力とコツがいるようだ。
ぼんやりと霞のような深緑の力は、綿菓子のように俺の手の周りに渦を巻くばかりで、俺はそれを指先に集めることすらできないでいた。
「薄い布を肌にはりつかせ、そこに力をしみ込ませるように吸わせる感覚だ。・・・不安がるな。お前ならばすぐにできるようになる。」
海神の深く落ち着いた色の瞳を見つめてその声を聞いていると、なんだかできるような気がしてきて、俺は肩の力を抜いた。
一つ深く呼吸をし、息を整えると、指の周りに透明のフィルムが張り付いているようなイメージをし、そのフィルムに深緑の力を飲ませていく。
その様子をみていた蒼は、目を細めた。
まとわりついていた霞のような力を、全てフィルムに飲み込ませた俺は、絡みついている毛むぐりを手で優しくつかんだ。
ふんわりとした毛むぐりの細長い小さな身体が、俺の手のひらにころりと転がり、雪のように白い腹を見せる。
あまりの愛らしさに、くすぐるように腹を撫でてやると、毛むぐりはプープーと小さく鳴き声を上げ、嬉しそうに俺の手の内で身を捩った。
笑顔で海神に視線を送ると、彼にしては珍しくこちらを見て少し微笑んでいる。
その笑顔に、海神の美しさを改めて思い知らされドキリとしていると、蒼が、まるで自分の宝物を見せびらかす子供のような表情で、「いいだろう。」と言わんばかりに俺を見つめてきた。
腕に絡みついて離れなくなってしまった毛むぐりを、途方に暮れて見つめていると、海神が抑揚のない声でつぶやいた。
「好かれたな。」
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「よかったじゃないか。こいつらは普通、懐くまでにけっこう時間がかかる。宿主のえり好みも激しい・・・。まず、弱い者にはなかなか懐いたりしないしね。とにかくこれで君、いつでも鍛錬に励めるようになったじゃないか。」
自らの腕に巻き付いて嬉しそうにしている毛むぐりの存在はなかったことになっているのか、蒼はシレっとそんなことを言っている。
「真也・・・お前が使い良いというのならば、闇色を下地にし別の色を重ねても構わない・・・・・・。薄く伸ばした妖力を吸い付かせるようにして、指先を覆ってみろ。」
「・・・うん。」
海神の穏やかな声に励まされ、俺は言われたとおり意識を指先に集中させた。
だが、これがものすごく難しい。
先ほど波紋を放った時のような薄い妖力を、指先にただ集めるだけなら簡単なんだ。
それを薄く伸ばして指先に吸い付かせるというのは、どうやらかなりの精神力とコツがいるようだ。
ぼんやりと霞のような深緑の力は、綿菓子のように俺の手の周りに渦を巻くばかりで、俺はそれを指先に集めることすらできないでいた。
「薄い布を肌にはりつかせ、そこに力をしみ込ませるように吸わせる感覚だ。・・・不安がるな。お前ならばすぐにできるようになる。」
海神の深く落ち着いた色の瞳を見つめてその声を聞いていると、なんだかできるような気がしてきて、俺は肩の力を抜いた。
一つ深く呼吸をし、息を整えると、指の周りに透明のフィルムが張り付いているようなイメージをし、そのフィルムに深緑の力を飲ませていく。
その様子をみていた蒼は、目を細めた。
まとわりついていた霞のような力を、全てフィルムに飲み込ませた俺は、絡みついている毛むぐりを手で優しくつかんだ。
ふんわりとした毛むぐりの細長い小さな身体が、俺の手のひらにころりと転がり、雪のように白い腹を見せる。
あまりの愛らしさに、くすぐるように腹を撫でてやると、毛むぐりはプープーと小さく鳴き声を上げ、嬉しそうに俺の手の内で身を捩った。
笑顔で海神に視線を送ると、彼にしては珍しくこちらを見て少し微笑んでいる。
その笑顔に、海神の美しさを改めて思い知らされドキリとしていると、蒼が、まるで自分の宝物を見せびらかす子供のような表情で、「いいだろう。」と言わんばかりに俺を見つめてきた。
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