254 / 324
蒼の館 4
しおりを挟む
恐らく蒼は、どこかにうっかり落ちていたこの石を拾い、結界の中にでも囲い込んでいたのだろう。
囚われの石が黒の死に気づくことはできないのだから、当然、彼の元へ戻ることなどあるはずもなかったわけだ。
石は蒼の懐で黒の死をしることなく、安穏と過ごしていたのだから。
しかし、そのこととは別に、黒にはどうしても腑に落ちないことがあった。
いぶかし気に目を細め、続きを口にする。
「ねぇ。この石が君の手元に渡ったとしても、保管した記憶を読み取れるのはボクだけなんだ。なぜ、君はこれが僕のものだとわかったの?」
黒の問いかけに、蒼は「なぜそんな面倒なことを気にするんだ?」と言いかけたが、石泥棒と疑われても面白くないので、ここは大人しく答えることにした。
なんといっても、ほとんどの者にとって、この石は小指の先ほどの大きさのもの一つで、豪奢な館をどんと構えることができるほどの、大層な価値をもつ代物なのだから・・・・・・。
「君の術を解いたわけじゃない。この石自体がもつ記憶を覗いたのさ。持ち主がいるのなら、そいつに返してやろうと思ってね。どんな経緯があって、こんな高価な宝玉が照射殿なんかに落ちていたのか・・・君だって同じことがあれば気になるだろう?」
後半、少しばかり言い訳がましくなったが、蒼は極素直に真実を伝えた。
それなのに、黒は星をちりばめた瞳を逸らすことなく、蒼をじっと見つめたままでいる。
その目の強さにわずかな居心地の悪さを感じ、蒼は頬を膨らませた。
「おい。ボクは金には困っていないし、緑紅石も間に合ってるんだ。おかしな言いがかりをつけるなよ。」
別段、黒は蒼に対してどうこう疑っていたわけではない。
ただ頭の中で、一体あの石は自分の過去にどれだけ触れていたのだろうかと、記憶を巡らせていたのだが・・・・・・。
分かりやすく拗ねてみせる蒼の言葉に、現実に引き戻され、黒はきょとんとして首を傾げたが、すぐさま、どうやら彼は「自分を盗人扱いするなよ」と言っているのだと気づき、思わずぷっと噴き出してしまった。
腹を抱えて笑い出したい衝動に駆られたが、全身をはしる激痛がそれを強く引き止めてくる。
必死に笑いをのみこんでいる黒を見つめながら、蒼の機嫌は、思い切り斜めに捩り切っていた。
「なんで笑うんだ。」
「・・・・・・君を馬鹿にしているわけじゃない。君が緑紅石を大量に持ち合わせていることを僕は知っている。・・・・・・それに僕も、君と同じでさほど金を必要とはしていないんだ。君が欲しいというのなら、石をあげる。・・・・・・笑ったのは、僕に罪を問われることを、まさか君がそんなに嫌がるとは思わなくて・・・少し、嬉しかっただけ。」
「嬉しい?」
黒は困ったように小さく微笑むだけで、それ以上の答えを口にはしなかった。
「質問はそれだけだ。気を悪くしたのなら、笑ったことは謝る。」
囚われの石が黒の死に気づくことはできないのだから、当然、彼の元へ戻ることなどあるはずもなかったわけだ。
石は蒼の懐で黒の死をしることなく、安穏と過ごしていたのだから。
しかし、そのこととは別に、黒にはどうしても腑に落ちないことがあった。
いぶかし気に目を細め、続きを口にする。
「ねぇ。この石が君の手元に渡ったとしても、保管した記憶を読み取れるのはボクだけなんだ。なぜ、君はこれが僕のものだとわかったの?」
黒の問いかけに、蒼は「なぜそんな面倒なことを気にするんだ?」と言いかけたが、石泥棒と疑われても面白くないので、ここは大人しく答えることにした。
なんといっても、ほとんどの者にとって、この石は小指の先ほどの大きさのもの一つで、豪奢な館をどんと構えることができるほどの、大層な価値をもつ代物なのだから・・・・・・。
「君の術を解いたわけじゃない。この石自体がもつ記憶を覗いたのさ。持ち主がいるのなら、そいつに返してやろうと思ってね。どんな経緯があって、こんな高価な宝玉が照射殿なんかに落ちていたのか・・・君だって同じことがあれば気になるだろう?」
後半、少しばかり言い訳がましくなったが、蒼は極素直に真実を伝えた。
それなのに、黒は星をちりばめた瞳を逸らすことなく、蒼をじっと見つめたままでいる。
その目の強さにわずかな居心地の悪さを感じ、蒼は頬を膨らませた。
「おい。ボクは金には困っていないし、緑紅石も間に合ってるんだ。おかしな言いがかりをつけるなよ。」
別段、黒は蒼に対してどうこう疑っていたわけではない。
ただ頭の中で、一体あの石は自分の過去にどれだけ触れていたのだろうかと、記憶を巡らせていたのだが・・・・・・。
分かりやすく拗ねてみせる蒼の言葉に、現実に引き戻され、黒はきょとんとして首を傾げたが、すぐさま、どうやら彼は「自分を盗人扱いするなよ」と言っているのだと気づき、思わずぷっと噴き出してしまった。
腹を抱えて笑い出したい衝動に駆られたが、全身をはしる激痛がそれを強く引き止めてくる。
必死に笑いをのみこんでいる黒を見つめながら、蒼の機嫌は、思い切り斜めに捩り切っていた。
「なんで笑うんだ。」
「・・・・・・君を馬鹿にしているわけじゃない。君が緑紅石を大量に持ち合わせていることを僕は知っている。・・・・・・それに僕も、君と同じでさほど金を必要とはしていないんだ。君が欲しいというのなら、石をあげる。・・・・・・笑ったのは、僕に罪を問われることを、まさか君がそんなに嫌がるとは思わなくて・・・少し、嬉しかっただけ。」
「嬉しい?」
黒は困ったように小さく微笑むだけで、それ以上の答えを口にはしなかった。
「質問はそれだけだ。気を悪くしたのなら、笑ったことは謝る。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ペットになった
ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。
言葉も常識も通用しない世界。
それでも、特に不便は感じない。
あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。
「クロ」
笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。
※視点コロコロ
※更新ノロノロ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる