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6話、デザートフィッシュ(7)“ご飯パート1”
しおりを挟む「準備できたよー」
ラーナがそれぞれの器に移し、声をかけた。
リリの器は相変わらずのスプーンである。
(わたし用の食器が欲しいわね……)
「それじゃあ食べてみましょ」
「うん!」
二人は手を合わせ、声を上げる
「「いただきます!」」
「わたしはスープから飲むわ」
「じゃあ、ボクは出がらしから」
ゴクゴクッとリリは勢いよく飲み干し、ラーナは大きな口で肉の塊を口に入れる、二人の姿はマナーもへったくれもないが、こんな砂漠にドレスコードなどない。
食べたいように食べるのが一番だ。
「美味しい……想像してたより美味しいわ」
「……」
(これは、なんと言えばいいんだろ? わかめスープ?)
「魚のスープというより、野菜というかキノコっぽい感じ?」
「……」
(素材や調味料を揃えてしっかり作れば、高級店でも出せそうね、素朴ながら上品な味!)
「なかなか行けるわよ、ラー……」
リリがラーナに声をかけようとするが、苦々しい表情の前で言葉が止まる。
「だ、大丈夫?」
「うぇー、味がない……ジャリジャリするー」
ラーナの方は外れだったらしい。
それもそうだろう、ただですら食感が最悪で味の薄いデザートフィッシュ、その出がらしなのだから。
(まぁ革鎧よりはマシでしょ)
そう思っていたリリも出がらしを口に運んだ。
(こっ、これは……)
「革鎧のがよっぽどマシじゃない! 本当に、マジで!」
「リリもそう思うよね」
「噛むのすら辛い!」
二人とも苦虫を噛みつぶしたような顔をしながら見合わせる。
「どうする? 食べるものがないよ?」
「どうしよっかぁ……干物でも食べる?」
「まだ半分も焼けてないんじゃない?」
「だよねぇー」
二人の結論としては、我慢して出がらしを食べた終えた後に、スープを飲むことにした。
(ラーナは納得してなさそうー顔がそう言ってるわ)
「ラーナ? 怒って、る?」
「だってぇ、スープじゃお腹が膨れないよー」
「ですよねー」
ラーナの絶望した表情に、リリはおちゃらけて返した。
「この出がらしも不味いし、ボクはこうガシッとしたものが食べたい!」
「ガシッとねー、そうは言われても、もう作っちゃったしなぁー」
「リリは体がちっちゃいから良いかもしれないけど、ほとんどボクが食べるんだからね?」
「それは……ごもっとも、です」
「でしょー」
ラーナは怒ってはいない、いないが不満は溜まりに溜まっているのが見て取れる。
(これは収まらないわ、なんとかしないと……)
「わかったわ、干物をなんとかします」
「なんとかって?」
「分かんない、とりあえず味見してから考える」
「じゃあボクも食べる!」
ラーナは隅を一口分だけ切り取ると、小さくちぎりリリにも渡した。
(美味しくなってるといいんだけど)
「うーん、美味しくない」
「やっぱりまだ乾燥が足りてないわねー」
「これじゃ、出来るまで時間かかる?」
「そうねー、朝までとは言わないけどそれなりには……」
(まぁ生の時よりはマシになってるから、方向性は良さそうなんだけど)
半乾きなのだからしょうがないと言えばしょうがないのだが、リリの予想通りの出来なので、これといった解決策は浮かんでこない。
「うーーん……干物自体は上手くいってるんだけどなぁ」
リリはどうしたらいいかと頭を悩ませる。
塩味はほどほどに効いてる、乾燥も順調に進んでいる、このままいけば味も匂いも食べられるものにはなるであろう。
(時間さえあれば、なんとかなるとは思うんだけどなぁ)
「もっと早く乾燥したらいいのにねー」
「打つ手がないのよねー」
二人とも小首をかしげ悩んでいると、ラーナが考えなしに発言した。
「もっと風が強ければ、早く乾くのにねっ!」
「強い風ねぇ……っあ、そっか!」
その言葉にリリの中で何かが閃いた。
「風がないなら作ればいいのよ!」
「どういうこと? 扇ぐの?」
「違うわ、魔法でやるのよ」
「魔法で?」
「まぁまぁ、見てなさいって!」
リリは焚き火からでてくる煙を魔法で集めだす、まるで煙の玉だ。
「なにこれ? ボクこんな魔法、初めて見たよ?」
「いま考えた、わたしのオリジナル魔法よ!」
得意げに話すリリ、ラーナは驚いてはいるが冷静に答えた。
「ふーん、そうなんだぁ」
「この凄さがわかってないわね?」
「精密な魔力操作が必要なぐらいは分かるよ、流石ピクシーだね」
ラーナの口ぶりから察するに、ピクシーならこれぐらいは出来て当たり前のようだ。
しかし、リリはそのことには全く気づかずに更に得意げに答えた。
「イメージ通りなら完璧よ!」
(オリジナル魔法を作っちゃうなんて、わたしってやっぱり天才ね!)
「なら大丈夫じゃない? 魔法はイメージだって言うし」
「へぇー、イメージが重要なのね」
「リリ凄いじゃん、オリジナルの魔法なんて出来たんだねー」
これは完全に社交辞令だ。
なんならリリはもっと出来ないとラーナは思っていたのだ。
「もっと褒めていいのよ!」
「わーすごーい」
手を焚き火にかざしながらも、見るからに満足げなリリだが問題はまだあった。
「でもこれじゃあ、燻製は進むけど、乾燥は変わんないのよねー」
「うーん、じゃあ風の流れる道を中に作ってあげたら?」
「ラーナ! ナイスアイディアよ」
リリは上げた手は降ろせないので、心の中で親指を立てた。
「ん? そう?」
「煙で対流を作ればいいのよ、助かったわ!」
「どうやってやるの?」
「せっかくのオリジナル魔法なんだし、渦巻状にしてみるわ」
リリは一度魔法を解くと煙がボワッと広がる、二人をオレガノの爽やかな香りが包む。
軽く手を振り、身体を伸ばしたリリは改めて魔法をかけ始めた。
(イメージが重要なのよね! ならコンベクションオーブンみたいに熱風をグルグルと回せば……)
「んんっ…………できたっ!」
リリの目の前には渦巻く煙の球が出来ていた。
「さっきから思ってたけど、詠唱もなしに魔力足りるの?」
「わっかんない!」
「っえ? 分からないの?」
「全く持って分からないわ!」
「えー」
「疲れる気配はないわね」
「ピクシーだからなのかなぁ?」
ラーナは呟くと首を傾げ考える。
その横で真面目に魔法をかけるリリ、内心では小躍りをしていた。
(もしかしてチート能力!? やったわ! やっと異世界転生らしい展開になってきた)
「わたし、自分の才能が怖いわ!」
思わずそう零すリリ、どんどん緩む頬が止められずニマニマとしていた
「戦いには使えないけどね」
「それは気にしなくていいじゃない!」
「ふーん、本当に?」
ニヤニヤと見つめるラーナ、リリは核心を突かれて声を張り上げる。
「いい夢ぐらい見させてよ!」
「調子に乗りすぎなんだよぉ」
「今ぐらいいいじゃない!」
「リリ? このままモンスターに向かっていったら、死ぬよ?」
ラーナが優しくも冷静に淡々と言うので、リリの背筋が凍る。
「……確かに」
「凄いことには間違いないけど。戦いはボクに任せてね」
「わかったわ」
「リリが死んじゃったら大変だもんね」
当り前のようにラーナから「死ぬ」という言葉が出てきたので、ここは地球とは違ってモンスターという身近な危険があることをリリは改めて認識した。
(まぁわたしも死にたくはないですしー……気をつけよっ!)
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