5 / 46
5話 帰ってと言われました
しおりを挟む「心配してくれてありがとうカロン。でも、私は大丈夫。もしかしたらローレイも怒らないかもしれないじゃない」
万が一、億が一、兆の一の確率で、自分の愚かな行動を悔い改め、反省して頭を下げるかもしれない。まぁ、あの馬鹿男に限ってそんなことは絶対に無いでしょうけど。
「何かあったら、直ぐに言って下さい! 直ぐに俺達、駆け付けますから!」
「ありがとうカロン」
家に帰ってローレイにごちゃごちゃ言われるのを心配してくれているカロン。私のために駆けつけるなんて、頼もしい限りだわ。お言葉に甘えて、万が一にも問題が起きれば、助けをお願いしますね。
――――ただそこから数日間、私は家に帰ることはなく、会社で延々と経営の立て直しについて考え、会議を重ね、書類をまとめたりと休むことなく働きまくり、逆にカロンに何度も家に帰るよう勧められた。
「まだカルディアリアム伯爵邸に帰らなくていいんですか!? もう会社に泊まり込んで一週間経ちますよ!?」
「平気よ」
「いやいやいやいや! 働き詰めで体も全然休めてないですし、ローレイ様を放置して一週間経ちますし、色々とこう、心配ですよ!?」
「まだ一週間の泊まり込みよ? 余裕でしょう」
社畜時代は、毎日通常深夜帰宅、繁盛期は二週間泊まり込みなんてザラにあったから、今やっと折り返し地点かってとこなんだけど。
「余裕じゃありません! 何ですかその劣悪な職場!? あのローレイ様の友人達が好き勝手していた時よりも酷いじゃないですか!」
「そうなの? これが普通過ぎて、ブラック企業の自覚が無かったわ」
「ブラック企業?」
「劣悪な職場ってことよ」
まぁ確かに仕事に没頭し過ぎたかな。仕事するのが久しぶりだから、つい張り切ってしまった。
前世の経験が役に立たなかったらどうしようと心配したけど、幸い、会社勤めの経験が生かせているし、今世でも十分やっていけそうね。
「そんなに仕事が大変なら、俺達に言って下されば代わりにやりますから!」
「駄目よ、ちゃんと定時に帰ってゆっくり体を休めないと、次の日の仕事に関わるわよ?」
「それを奥様が言いますか!?」
あら、一本取られましたね。まぁカロンも心配していますし、そろそろ帰ってもいいかしら。
「分かったわ、じゃあ明日帰ります」
「……今日は帰らないんですね」
「今日はここでゆっくり休んで、万全の状態で家に帰るわ。家に帰れば、ローレイと浮気女にちょっかいかけられて余計に疲れるもの」
あんな人達の相手をするくらいなら、仕事に没頭してる方が遥かにマシ。ああ、マジで無駄な時間だわ。家に帰ったら二人共水になって蒸発してるとかないかしら。
「じゃあせめてもっとちゃんとした所で休んで下さい! 社長室なら、あいつ等が使っていた高級なソファがあるでしょう! 何で作業場の床で仮眠取るんですか!? 朝出勤した従業員が驚いて悲鳴上げていましたよ!」
「考え事してたら眠くなっちゃって。それに、社長室のソファなんて嫌よ、あいつ等が何してたか分かったもんじゃないわ」
何せ猿山の猿の集まり。欲望のまま男女でいかがわしいことをしていてもおかしくない、ってか、絶対にしてる。ローレイや浮気女の友人だもの、類は友を呼ぶってやつね。
他所で勝手に発情するのはいいけど、職場で、仕事中に盛るとか、猿は動物の本能だから仕方ないとは言え、人間がしたら最低でしょう。人としてのモラル無し、猿以下の人間ね。
「じゃあ空いてる部屋使って今から仮眠室作るんで、そこで寝て下さい!」
「いいわよ、カロンだって忙しいのに、そんな仕事増やさなくて」
「奥様は俺達の何倍働いてると思ってるんですか!? いいから休んで下さい! そして万全の状態でローレイ様と戦って来て下さい!」
この一週間で、カロンは今の私の性格を大分把握したのか、気弱な私を心配する言葉では無く、一心不乱に仕事に没頭する私を心配する言葉に変わり、『ローレイ様に怒られて泣いたりしませんか?』じゃなくて、『戦ってこい!』なんて応援してくれるまでになった。
「分かったわ、では、完膚なきまでに叩きのめしてくるわね」
「そこまでは言っていませんが、頑張って来て下さい! ローレイ様なんかに負けないで下さいね! 何かあったら呼んで下さいよ!」
「大丈夫、負ける可能性なんて一ミリも無いから」
前世、もっと面倒くさくて厄介な上司と戦ってきた私が、あんな下半身に正直な無能な浮気男ごときに負けるワケが無い。
結婚している身でありながら愛人を連れ込み、妻である私を蔑ろにしてきたモラハラ男。
さて、家に帰るのが楽しみですね、果たして私に何をしてくれるのでしょう? 一週間ぶりに家に帰ってきた妻に、『連絡くらいしろよ、心配するじゃないか!』なんて、怒りながらも抱き締めてくれたりするのかしら? ……うげ、自分で想像して気持ち悪くなっちゃたわ。
まぁ、帰ってからのお楽しみですね。
「ところで、ここのワインの生産のことなんだけど――」
「奥様、休んで下さい」
1,519
あなたにおすすめの小説
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!? 今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!
黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。
そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※
【短編】婚約解消を望もうとも、婚約者から言葉を聞かない限りは応じませんわ
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
伯爵令嬢のディアナ・アルヴィエは実家と絶縁し、婚約者であるアーレントの実家である辺境領の屋敷で暮らしていた。魔物討伐や結界の管理などを担う即戦力としていたディアナは、アーレンが成人したら結婚する。
はずだった。
王都に突如現れた黒竜討伐へと赴いた婚約者アーレンと様の部下だと名乗る使いから婚約解消の知らせが届く。それと同時に辺境地の結界に亀裂が入り、答え合わせは後回しとなるのだが、同時にカルト集団の奇襲を受けてしまい──!?
両親に愛されなかった令嬢が幸せを受け入れるまでのお話。
年下情緒不安定ヤンデレ騎士×自尊心の低い年上大魔法使いのお話。
【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)
との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。
今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。
ヤバいです。肝心な事を忘れて、
「林檎一切れゲットー」
なんて喜んでたなんて。
本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん
ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。
「わしはメイドじゃねえですが」
「そうね、メイドには見えないわね」
ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。
ーーーーーー
タイトル改変しました。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる