気弱な伯爵夫人に転生したアラフォー独身社畜女は、夫を退けて女伯爵になります

光子

文字の大きさ
39 / 46

39話 デリート侯爵

しおりを挟む
 

「俺にそんな口を利いていいのか、フィオナ? 後悔するぞ? もうすぐ領主会があるんじゃないか?」

「あるけど、それが貴方に何の関係があるのよ?」

「はっ! 分かっていないようだから教えてやる! いいか、領主会はな、陛下含む大勢の領主達の前に立つ必要があるんだぞ!? そんな大勢の中で、お前ごときが領地の報告など出来るのか!? 人前に立つのが苦手なお前が!」

 ああ、そう言えば、記憶を取り戻す前までの私は、大勢の前に立つのが苦手で、注目されると顔を真っ赤にして俯いてしまうような女性だったわね。

「お前が俺に頭を下げて、カルディアリアム伯爵の爵位を返すというなら、領主会に出席してやってもいいぞ」

 ……まさか、今まで大人しくしていたのは、この領主会で私から爵位を奪い返すためだったの? あがり症の私が、人前で報告なんて出来ないと思って?

「お断りするわ」

「そうだろう――って、断るだと!?」

「ええ、貴方など一切必要ありません」

「お前っ! カルディアリアム伯爵家の名を汚す気か!? 領主会で棒立ちなど、許されないんだぞ!」

「はぁ、お気遣いどうも」

 あのね、知らないでしょうけど、私が前世、どれだけの会議に出席して、成功を収めてきたと思う? ハッキリ言います、私、こういった会議は大得意なの。学生の頃からそういった人前に立つのが苦手な子に代わって、私が引き受けてきたの。

「いいから俺に任せろ! お前なんかよりも、俺の方が相応しいんだ!」

 本当かよ、そんなに自信あるの? ローレイがどれほど得意なのか知らないけど、絶対に負けない自信があるんだけど。

「……なら、私と一緒に行く?」
「フィオナ様!?」

 私の発言に、傍に控えていたジェームズが困惑したような声を出した。

「ほぉ、まぁいいだろう! お前に俺との格の違いを見せてやるよ!」

「わーい、すっごく楽しみー」

 感情のこもっていない棒読みで答えたのだが、領主会に出席出来ることに気を良くしたローレイは、特に何も反応しなかった。

「ただし、その間に何か問題を起こしたら、出席は取り消すわ」

「……ちっ! いいだろう! どうせその日が来たら、お前は自分から俺にカルディアリアム伯爵の爵位を返すことになるだろうからな!」

「はいはい、お帰り下さい。ああ、ジェームズ、すぐにローレイ達の部屋の移動をお願い、使っていない物置部屋にね」

「はぁ!?」

「さっき伝えたでしょう」

 私の使用人に暴言を吐いた罪は重いのよ。

「俺がカルディアリアム伯爵の座を取り戻したら覚えていろよ! すぐにお前を前よりも酷い犬小屋にでも閉じ込めてやる!」

「はいはい」

 これが負け犬の遠吠えというやつかしら? 耳障りなことで。

「フィオナ様、よろしいのですか!? ローレイ様を連れて行くなんて……!」

「大丈夫だよジェームズ、フィオナ様は敵対する相手には容赦しない方だ。きっと、何かお考えがあってのことだろう」

 アルヴィンはまだ短い付き合いながら――いえ、前世の記憶を取り戻した後からの付き合いだからか、今の私の性格をよく熟知している。

「そうね、安心して。別にローレイにチャンスを与えたわけでも、不安だから連れて行くわけでもないから」

 ローレイは自信満々に俺に代われとか言ってるけど、信用が一切出来ない。てか、最近は私が領主として働いているんだから、報告なんて出来ないでしょう。どうする気なのかしら? まぁ、あれだけ自信満々なんだもの、折角だからお手並み拝見しましょう。

「領主会が楽しみね」

 ローレイなんかに足元を見られないためにも――いえ、木っ端微塵にプライドを潰すためにも、下準備は慎重に、丁寧に、細かく、完璧にしなきゃ。




 領主会――――皇帝陛下も参加するそれは、領地の様子を報告し合い、問題が無いかを確認する場でもあるが、同時に、陛下に直接、自分の優秀さをアピールする場でもある。ここで陛下の目にとまれば、信頼も上がり、領地にとっても有益に働くが、逆に、自分の無能さを露呈する場でもある。
 領主会に招待された領主達は、緊張しながらも、この領主会に挑むことになるのだ。

「おやおや、これは新しいカルディアリアム伯爵ではありませんか」

 領主会の会場である皇室に着くと、すぐに貴族の男性から声をかけられた。

「初めまして、フィオナ=カルディアリアムです。お目にかかえて光栄です、《デリート》侯爵」

「僕を知っているんですね」

「勿論です、デリート侯爵。デリート侯爵ほどの有名な魔法使いを知らない者など、この帝国には存在しないでしょう」

 世間知らずな元のフィオナでさえ、デリート侯爵の名前は知っていた。数ある魔道具を発明した若き発明家であり、魔法使い。

「ちゃんと勉強しておられるようですね。もしかして、他の貴族も覚えているんですか?」

「今日、出席予定の貴族の方は全て覚えております」

「全て? 男爵も? 子爵も?」

「はい」

 貴族同士の繋がりは大切だと聞くもの。大抵、その役割を配偶者である貴族夫人がお茶会を開いたりして補ったりするんだけど、私にはいないので、自分自身で繋がりを持つしかない。

「成程、前カルディアリアム伯爵――ローレイ様とは違うようで、安心しました」

「……夫が何か失礼を?」

「ローレイ様は自分より爵位が下の者に対して見下し方が酷いものでしたから」

 あの馬鹿、領地だけでは飽き足らず、こんな所でもカルディアリアム伯爵の名前を汚すような真似してるのね……!

「本当に申し訳ございません」

「いえいえ、今日はその夫も出席すると聞きましたが、ローレイ様はどちらに?」

「聞き及んでいると思いますが、私達の夫婦関係は破綻しております。皇室までは別の馬車で連れてきましたが、着いた途端、一人でどこかに行きました」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)

との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。 今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。 ヤバいです。肝心な事を忘れて、  「林檎一切れゲットー」 なんて喜んでたなんて。 本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。 「わしはメイドじゃねえですが」 「そうね、メイドには見えないわね」  ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。 ーーーーーー タイトル改変しました。 ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

あなたと別れて、この子を生みました

キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。 クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。 自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。 この子は私一人で生んだ私一人の子だと。 ジュリアとクリスの過去に何があったのか。 子は鎹となり得るのか。 完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。 ⚠️ご注意⚠️ 作者は元サヤハピエン主義です。 え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。 誤字脱字、最初に謝っておきます。 申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

処理中です...