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76話 結婚式⑥
「そう。ルエルの望み通りの式があげられたなら良かった」
「本当にありがとうございます、メト」
こごまでスムーズに復讐が出来たのは、メトの助力があってこそ。
「どういたしまして」
「……」
メトはつい先程、結婚式が終わった帰りの馬車の中にも関わらず、仕事関係と思わしき書類1枚1枚に目を通していて、相変わらず、忙しそう……。
この後も、私を家に送り届けてから仕事場に行くらしい。かく言う私も、この後、新聞に掲載する写真選びをしようと思ってる。本来なら今日は結婚初夜と言うことになるのでしょうけど、籍はもうとっくに入れていましたし、私達には関係ありません。仕事優先夫婦です。
それに、メトを好きって認めたけどーーーだからと言って、心の準備はまだ出来ていないんです!!!
それに、私を好きって言ってくれたけど、あれ以降、メトは普段通りだし、もしかしてあれって夢だった?空耳?とか思うレベルですし!
それに、もしかしたら、私がメトの思いに答えなかったから、もう私を好きじゃなくなったかもしれませんし。
それに、メトみたいな最強の天才公爵様が、私みたいな平々凡々な女を好きになります?ただの気の迷いだったのでは?
それにーーー
次から次へと、メトへの思いを自覚したが、好きと言い出せない言い訳が並ぶ。
「ルエル、聞いてる?」
「!はーーいえ。聞いていませんでした」
上の空で全く何も聞いてなかった。
私が正直に伝えると、メトは、はぁ。と溜め息を吐いた後、もう一度同じ台詞を言った。
「仕事が落ち着いたタイミングで新婚旅行に行くから、そのつもりでいるように」
「はい。新婚旅ーーー行?」
ん?新婚旅行?新婚旅行ってーーあの、夫婦で行く新婚旅行?
「俺は優しいから、君に心の準備期間を上げるよ。それまでにしっかりと覚悟を決めておくんだね」
「…………」
それは、もしかしなくとも、私の気持ちに気付いていて、その上で、私に、心の準備をしろ。と?覚悟??
「……メ、メト。ちょっと待って?私、その、カイン以外と恋愛経験無くて、カインも、顔馴染みからズルズルいっちゃった感じだから、恋愛に疎くってーー」
「次、俺の前で他の男の話を持ち出したら酷い目に合わせる」
それはまさか、ルーフェス公爵家のお灸ですかーー!?怖いんですけど?!
家に帰るまでの馬車の中、私は必死で、仕事のことだけを考え、平常心でいるように務めた。
***
クリプト伯爵邸ーーー。
「この愚か者が!お前はまだ反省し足りないのか!」
家に着くなり、クリプト伯爵は、自分の娘であるエレノアを怒鳴りつけた。
氷の牢に閉じ込められていたエレノアをここまで連れ帰るのは大変だったが、先程やっと、氷が溶けて、中から出られた。
「どうして私を怒るの、お父様!?私はルエルお姉様とルーフェス様に酷い目に合わせられたんですよ?!怒るならルエルお姉様の方よ!可愛い妹をこんな目に合わせたんだよ?!」
牢から出ようと暴れて氷に触れた手は、凍傷になっていて、母親は心配そうに包帯で手当をしていた。
「お前がルエルを侮辱したからだ!もう二度とルエルに無礼な真似をするなと忠告しただろう!」
「ーーっ!だっーーて!」
何よりも見下していた姉の幸せそうな姿が気に食わなかった。
姉は、私より全てが下でなくてはならない。姉は、妹に無条件で全てを渡す義務があるの。私が欲しがるモノは、全て私のモノなの。ルエルお姉様の幸せも、全部!
本当なら、世界で一番幸せな花嫁になるのは、私のはずだった。
本当なら、今頃お姉様は、30歳も歳の離れたキモイ暴力男の嫁になってて、私とカイン様の結婚式に招待して、私達の幸せな結婚式と、産まれた子供を見せつけるつもりだった。その為に、わざわざ私の結婚式を、子供が産まれてからに遅らせたのにーーー!
「はぁ……今まで、好きにさせてきた私にも責任があるのか……」
クリプト伯爵はため息を吐きながら、頭を抱えた。
「エレノア、お前の荷物も、子供も、マルクス伯爵家に送っておいた。里帰りはもう十分だろう、マルクス伯爵家に戻りなさい」
「どうしてですかあなた!エレノアちゃんはまだ産後の肥立ちが悪いから、私がまだお世話をしてあげるつもりでーー」
「何度も同じ事を言わせるな!」
「あ……はい、分かり…ました」
ギロリと夫に睨み付けられると、クリプト伯爵夫人は俯き、頷いた。
産後の肥立ちが悪い。は、エレノアが実家に留まるための言い訳に過ぎない。
エレノアが実家に留まるのは、自分にとって、とても都合の良い、自由な環境だというのが大きい。子供は放っておいても誰かが面倒を見てくれるし、母親は何でも言う事を聞いて甘やかしてくれるし、旦那や義理の両親の目も無く、自由に過ごせる。
「ーーっ」
義実家に帰れば、少なくとも、夜、自由に遊び回る事が出来なくなる。
「……お父様ぁ…ごめんなさい。謝ります、謝りますから、どうか家に置いて下さい……私、もう少し、お母様やお父様に親孝行がしたいんです」
エレノアは、得意にしてる泣き真似を、父親にしてみせた。
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