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81話 助けて下さい
しおりを挟む「昨日この地に来た父とマルクス様は、今日の朝方まで盃を交わしておりまして、僕が出て行く時もまだ休んでおられました」
ーーー領地の一大事に?魔物退治の依頼を受けたのに?2人とも馬鹿なの?
きっと、今頃お父様ーーークリプト伯爵は、寝る間も惜しんで領地の安全を守るため駆けずり回っている最中でしょうに……こうも領主で違いがあると、マルクス領民達が憐れで仕方ありません。
「ひぇー親父から報告受けてたけど、ファンファンクラン子爵も大分やべー奴だな」
ラットの実家であるアルファイン侯爵家は、メトの命でファンファンクラン領に救助に向かったんでしたっけ。
「お恥ずかしながら。父は入婿なのですが、ずっと優秀な母にコンプレックスが有り、母によく似た僕のことも毛嫌いしています。僕がいつ、父の子爵の座を奪い、自分を蹴落とすかと不安に駆られ、自らの磐石な地位を確立するために、愚かにも魔物退治に手を出しました」
その結果が、先のファンファンクラン領の魔物の被害に繋がるんですね。そしてその失敗に懲りもせずに、また魔物退治に手を出そうとしてる。
そしてその手を取る元・お義父様……。
「実際、ファンファンクラン様の実力はどの程度のモノなのですか?」
自分から魔物退治に手を出そうとしてるのだから、ある程度実力があると信じたい。
「ファンファンクラン領は地方にあるので、都市部よりも魔物の被害が多く、他所よりも慣れているとは思いますが、ルーフェス公爵家のようにプロフェッショナルではありません」
たわいの無い魔物の1匹2匹を退治するくらいなら出来るが、それ以上の数や強さになると、敵わない。
「父はファンファンクラン領の中では最も優れた武人です。僕も、純粋な武力では父に敵いません。ですがそれで、父は自身の力を過信し、ルーフェス様よりも自分の方が優れていると勘違いを起こしました」
その中途半端な強さが、ファンファンクラン様を調子に乗らせてしまった一因でしょうか……と、言いますか、よくメトより優れているなんて夢物語を現実に置き換えましたね。恐れ知らずにも程があるでしょう。彼は、皇帝陛下からも認められた、最強の公爵様だというのに……。
「母も僕も、父の言う事を鵜呑みにして、ルーフェス公爵家に救助要請はしてると信じてしまったのが最大の間違いでした。慌ててルーフェス公爵家に救助要請したのですが、領地は既に酷く魔物に荒らされてしまい……」
悔しそうに唇を噛むクラウド様の姿は、その無能な父親なんかよりよっぽど、領民を思いやる素晴らしい領主に見える。
「アルファインが救助に向かったさい、勝手にルーフェス公爵家に救助要請をしたとファンファンクラン子爵は立場も弁えず『帰れ』やら『お呼びで無い』やら、『ルーフェス様は私を恐れて、こうして邪魔をしに来た!』などお怒りだったようなので、俺から皇帝陛下に子爵位を早くクラウドに譲らせるよう進言した」
……言いたく無いですけど、クラウド様のお父様も中々ヤバい奴ですね。ラットに同意します。
ルーフェス公爵家のお灸は、皇帝陛下に進言し、爵位をクラウド様に譲るよう口添えしたこと。
皇帝陛下はルーフェス公爵を信頼してる……だからこそ、メトの進言を受け入れ、爵位をクラウド様に譲るように命を下した。
ーーー皇帝陛下から命を下されたなら最後、逆らえない。だからこれは、ファンファンクラン様の本当に最後の悪足掻きーー。
***
「ほい、急ピッチで調べさせたマルクス領の被害と、魔物の種類とおおよその数の目安な」
部下達が集めてきた情報を持ったラットが、メトのいるテーブルの上にそれらを記した紙を置く。
「……被害はぼちぼちか」
「おお、農作物を食い荒らす魔物が主で、人的被害が出ていないのが救いだな。だが、この魔物は農作物が減れば人間を襲うぜ」
本来なら、こういった調べ物をするのは、領主である元・お義父様の役目なのにーーーきっと、元・お義父様は何もせず、ダラダラと過ごしておられるのでしょうね。
魔物がマルクス領に入ってから時間が経過している……今はまだ大丈夫でも、この先、いつどうかるか分からない……!
元・お義父様が早くメトに頭を下げて救助要請していたら、こんな事にはならなかったのに。
「マルクス伯爵邸があるスクル街以外の全ての魔物を排除しろ」
「了解」
「……あの、ルーフェス様……」
恐る恐る、メトに声をかけるヴェルデとサンスの表情は暗い。
「スクルは……その、俺等が育った街で……」
マルクス伯爵邸がある街、スクルーーその場所以外の魔物退治を、メトは命じた。言い換えれば、スクルだけは魔物を野放しにしろ。になる。
自分の生まれ育った故郷の一大事なのだから、2人の表情が浮かないのも頷ける。
「マルクス様がウザイのも、昔、ルエル様に酷いことを言ってたのも、分かります!助けたくないって気持ち、分かります!でもーーー」
「皆、ルエル様にした態度を後悔してます!本当はめっちゃ良い奴等がいっぱいがいてーー!俺達がちょっとやんちゃして迷惑かけた時も、皆、見捨てないでくれてーーー!だからお願いします!マルクス様関係なく、皆を助けてやって下さい!代わりに俺達、何でもしますから!!」
必死で、スクル街を助けて欲しいと懇願する二人。
本来なら、こうして領民達のために頭を下げるのは、マルクス伯爵とカインであるはずなのにーー。
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