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88話 捨てた者の価値
「何事も最初は初めてだからな!頑張れよー!」
いっぱい魔物を倒しているにも関わらず、血飛沫1つ浴びていないラットは、魔物と戦いつつ、笑顔で2人にエールを送った。
「ルーフェス様っ!あんな役に立たない彼等では僕達を助けられませんよ!」
ゲイン鉱山に2人を連れて行った張本人のカインは、元・マルクス領民であるヴェルデとサンスが、魔物に手も足も出せずにボロボロになったのを知っている。
「うっせー!こっちだって、てめぇなんか助けたくねーんだよ!」
「なっ!僕に向かって、なんて口の利き方をするんだ?!これだから、ルーフェス様に仕えた者達は皆、乱暴にーー」
「もう黙れカイン!」
未だメトを侮辱する言葉を口にしようとしたカインを、元・お義父様が怒鳴りつけた。元・お義父様達の教育の賜物でしょうが、随分、空気の読めない頭の悪い息子に育ちましたね。
「と、父様…」
両親に溺愛されているカインは、元・お義父様に今まで怒鳴られたことがないのか、驚き、傷付いた表情を浮かべた。
「ヴェルデ、サンス。馬鹿の相手はしなくていいから、さっさと戦え」
「わ、分かりました!この命!ルーフェス様とルエル様に捧げた身です!」
「ここで散っても惜しくありません!」
いや、駄目ですよ!?危険と判断したら、無理を言っても助けてもらいますよ?!
2人はそれぞれ剣を構えると、なるようになれ!とばかりに魔物に突撃して行ったーーー。
30分後ーーー周りに広がるのは、山のような魔物の死骸。
「凄い……こんなに、強くなっていたなんて……」
一緒に傍で過ごす時間が多かった私も、気が付かなかった。
大きな屋敷を覆い尽くす程の数の魔物を、ラットを筆頭にヴェルデ、サンスと、たった3人。ものの数分で退治した。元の魔物の強さとか知らないけど、ファンファンクラン様は1匹でもやっとだったし……これって、2人とも、凄く凄いんじゃ……!
「俺等……すっげー!」
「いえーい!」
当の本人達も、魔物退治を通じて、自分の実力を知ったらしく、2人で手を取り合って喜んでいる。
「遅い。この程度で喜ぶな」
「はい!すんませんッス!」
しかし、メトは辛口ですね……こんなに凄いのに!素晴らしい成長ですよ!
「ベールなら瞬殺してる」
「魔法は一気に蹴散らせるからいいよなー」
メト、ラットの口から揃って出るのは、ゼスティリア侯爵令嬢であるベール様の名前。流石、ルーフェス公爵家の魔法を代表するゼスティリア侯爵令嬢……ベール様自身もそんなにお強いんですね?!
「た、助かったのか…」
「そんなーー君達が、こんな実力を隠し持っていたなんてーー!素晴らしいよ!」
魔物がいなくなり、安堵で力の抜ける元・お義父様に、何故か、二人の活躍に嬉しそうに興奮するカイン。
「本当に凄いよ!見直したよ!よく、僕のために努力して強くなってくれたね!」
……まさか、二人が成長したのは、自分のためだとでも思っているんですか?頭大丈夫です?The・勘違い男ってあだ名でも付けようかしら……。
「寝言は寝て言えや!誰がお前のためだ!ふっざけんな!」
案の定、そんな気の全くない二人は、カインの発言に怒り心頭だった。
ヴェルデ。一応、カインは伯爵令息ですよ。
「てめぇに見直される筋合いねーんだよ!」
サンス。だから、カインは一応伯爵令息でーーーって、駄目ですね。カインのこと嫌悪していて、礼節を弁える気すらありませんもんね。気持ちは分かりますけど、後で注意しましょう。
「可哀想に……ルーフェス様に仕えた所為で、言葉遣いが乱暴になってしまったんだね」
うん……二人の失礼な物言いを気にしていないようで何よりですけどーーーん?メトに仕えた所為でなんですって?あなた、何目線なの?
「さっきも、君達の努力を認めず、『遅い』や、『この程度で喜ぶな』なんて、君達に酷いこと言ったのを聞いたよ……ルーフェス様は、君達の頑張りを一切認めようとしない、冷たい人だ……」
元・お義母様や元・お義父様が私に言っていたことに比べれば、全然マシでしょう。それに、冷たい人ってどの口が言うのよ。ヴェルデとサンスを魔物の巣窟に置き去りにして逃げた人がーーー!
「さぁ、僕の元にーーマルクス伯爵家に戻っておいで。ヴェルデとサンスと言ったね。君達の名前、今度はちゃんと覚えよう」
満面の笑顔を浮かべ、まるで自分が良い事をしているかのように振る舞うカイン。虫唾が走るわ。
「だぁれがてめぇの元になんか戻るか!死んでもごめんだぜ!ふっざけんな!」
「てか、俺等の敬愛するルーフェス様を馬鹿にすんな!ぶっ殺すぞ!」
お怒り度MAXーーー!気持ちは分かりますけど!
「なっ?!どうしたんだい?ルーフェス様に弱味でも握られてるのかい?あんなに、僕に尽くしてくれていたじゃないか!」
……その彼等の気持ちを裏切ったのは、カインじゃない。貴方を信じて、危険な場所にも一緒についていったのにーーー貴方は、自分が助かるために、彼等を魔物の群れに放り出し、そのまま見捨てた。
嘘で嘘を固めて、彼等は自ら自分を助けてくれたと美談にした。最低で卑怯な嘘つき者。
「お前を信用してたことを心っっ底後悔してるぜ!」
「俺等は、心の奥底からルーフェス様とルエル様にお仕えしてんだよ!」
そんな人の元に、ヴェルデとサンスが戻ると思う?捨てなければ良かったなんて、今更、後悔しても遅いのよ。
彼等の主は、もう、私達なんだから。
「そんーーなーー」
まるて自分が裏切られたかのように、深く傷付いた表情を浮かべるカイン。
……貴方は本当に、心から、自分が正しいと思い込んでいるのでしょうね。
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