18 / 37
18話 暴露
しおりを挟む「お前みたいな出来損ないの役立たずが公爵夫人に相応しいわけがない! どうせエルライン公爵様から惨めに捨てられるに決まってるんだ! その時に家に戻りたいと言っても遅いぞ!」
「家に戻りたいと願っても、お前の居場所はないわよ!」
「構いませんよ。どれだけ旦那様に惨めに捨てられようが、貴方達のような毒親がいる家に戻るなんて、土下座して頼まれたってごめんです」
「は? 毒親?」
ファルファナは私が愛してあげるの、幸せにする。今は私が――ファルファナよ。
「私は私自身の力で幸せになります。お父様とお母様の歪んで腐り切った愛なんて、必要ありません」
挑発し過ぎた、とは思った。適当に話を合わせて追い出すことも出来たのに、それをしなかった。しない選択をした。我慢出来なかった。怒りで顔をタコのように真っ赤にしたお父様が手を振り上げた瞬間、叩かれると理解したから、目を閉じて衝撃を待った。
痛みは前世で慣れてる。割れるような頭の痛みも、全身を蝕む体の痛みも、手術の後の痛みも、全部痛かったなぁ。
さぁ、来い! 覚悟して痛みを待ったけど、いつまで待っても痛みは来なかった。
「――俺の妻に何をしている? ミシュラート侯爵」
私とお父様の間に入り、殴ろうと手を振り上げるお父様の腕を掴む旦那様の姿は、まるで正義のヒーローみたい。
「旦那様!」
「エルライン公爵様っ!? いえ、その、これは……!」
旦那様が現れた途端、目に見えるように狼狽えるお父様。旦那様に解放されたお父様の腕には赤く跡が付いていて、相当強く掴まれたんだなぁと思った。
「旦那様、どうしてここに?」
旦那様が離れに足を踏み入れたことは、結婚してから今まで一度もなかったのに。
「……見知らぬ人物が離れに入っていったと、ヒュルリから報告を受けて様子を見に来ただけだ」
ヒュルリ……最高! 素敵! ありがとう!
「それで? ミシュラート侯爵夫妻は何の用でここに? 貴方方の来訪を許可した覚えはありませんが?」
「あ、いえ……その、ファルファナがどうしても私達に会いたいと我儘を言うので、門番に無理を言って中に……」
「捏造です。私はこれっぽっちも会いたくありませんでした!」
助けに来てくれた旦那様の背後に隠れて光の速さで否定したら、お父様とお母様の二人同時に睨み付けられたけど、構うもんか!
「お父様とお母様は、私にエルライン公爵家の名前を使って悪事を働け! とか、金を盗め! とか命令して、それを拒否したら殴ろうとしてきました!」
「す、全て娘の嘘です! エルライン公爵様!」
「そ、そそそうですわ! 娘の噂は知っているでしょう? エルライン公爵様だって、実際に娘の粗相を目にされておりましたよね?」
この際なので全部暴露したら、お父様とお母様は慌てて否定した。焦ってるの面白ーい!
「……聞き捨てならない台詞が並んだが、どちらにせよ、貴方方が無断でエルライン公爵邸の敷地内に入ったのは紛れもない事実です。即刻、出て行ってもらいます」
「くっ……はい」
ここで旦那様に逆らうのは適切じゃない。いつまでも言う通りに動かない私に痺れを切らしてここまで強硬で来たんでしょうけど、悪手だったね。
旦那様の言葉に従って大人しく出て行くお父様とお母様。だけどその表情は敵意に満ちていて、とてもじゃないけど、娘に向けるものとは思えない。何なの? 実の娘をそこまで敵視する? 酷い親だねぇ。
「君の言ったことは本当なのか?」
お父様とお母様がいなくなった後、旦那様は真剣な目で、私を見つめた。
「はい、全て嘘偽りなく事実です。こうして耳を傾けてくれるということは、私のことを調べて、不審に思うところが出てきたからですよね?」
「……使用人からの報告によると、君の名前で購入したドレスは山ほどあるが、その殆どを実際に着ていたのは、ミシュラート侯爵夫人で間違いないとのことだ。ドレスだけじゃない、宝石もアクセサリーも」
お仕事の早い旦那様。早速、ドレスの件を調べてくれたんだ。
「意味が分からない……何故だ? 何故夫人の物を、自分の買い物のように振舞った?」
「お父様とお母様に命じられていたからです。命令に背けば、罰が与えられます」
お父様とお母様の愛情が欲しかったファルファラの気持ちも根本の理由にあるけど、そこは話さない。あの人達の愛情は、もう欠片も欲しくないし。
「旦那様との結婚も、お父様とお母様に命令されました。『何としてでもエルライン公爵様と結婚しろ』、と」
「……悪いが、簡単に君を信じることは出来ない」
「ご安心下さい、旦那様! 旦那様が簡単に信じて下さるとは、最初から微塵も欠片も一点も思っていませんでした!」
「それはそれでムカつくが……まぁいい」
実際にお父様達の命令に従って行動している私を多くの人達が目撃しているし、お父様とお母様からの命令だって明確な証拠はない。旦那様が私を信じられなくても仕方ないよね!
「一つだけ信じて頂きたいのですが、これから先、私がお父様とお母様の命令に従うことはありません」
1,773
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?
miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」
2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。
そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね?
最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが
なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが
彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に
投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。
お読みいただければ幸いです。
【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています
結婚相手が見つからないので家を出ます~気づけばなぜか麗しき公爵様の婚約者(仮)になっていました~
Na20
恋愛
私、レイラ・ハーストンは結婚適齢期である十八歳になっても婚約者がいない。積極的に婿探しをするも全戦全敗の日々。
これはもう仕方がない。
結婚相手が見つからないので家は弟に任せて、私は家を出ることにしよう。
私はある日見つけた求人を手に、遠く離れたキルシュタイン公爵領へと向かうことしたのだった。
※ご都合主義ですので軽い気持ちでさら~っとお読みください
※小説家になろう様でも掲載しています
婚姻無効になったので新しい人生始めます
Na20
恋愛
旧題:婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
2025年10月24日(金)
レジーナブックス様より発売決定!
なんでそんなに婚約者が嫌いなのかと問われた殿下が、婚約者である私にわざわざ理由を聞きに来たんですけど。
下菊みこと
恋愛
侍従くんの一言でさくっと全部解決に向かうお話。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
「私が愛するのは王妃のみだ、君を愛することはない」私だって会ったばかりの人を愛したりしませんけど。
下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…結構逞しい性格を持ち合わせている。
レティシアは貧乏な男爵家の長女。実家の男爵家に少しでも貢献するために、国王陛下の側妃となる。しかし国王陛下は王妃殿下を溺愛しており、レティシアに失礼な態度をとってきた!レティシアはそれに対して、一言言い返す。それに対する国王陛下の反応は?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる