前向き悪妻公爵夫人の、円満離婚奮闘記

光子

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18話 暴露

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「お前みたいな出来損ないの役立たずが公爵夫人に相応しいわけがない! どうせエルライン公爵様から惨めに捨てられるに決まってるんだ! その時に家に戻りたいと言っても遅いぞ!」

「家に戻りたいと願っても、お前の居場所はないわよ!」

「構いませんよ。どれだけ旦那様に惨めに捨てられようが、貴方達のような毒親がいる家に戻るなんて、土下座して頼まれたってごめんです」

「は? 毒親?」

 ファルファナは私が愛してあげるの、幸せにする。今は私が――ファルファナよ。

「私は私自身の力で幸せになります。お父様とお母様の歪んで腐り切った愛なんて、必要ありません」

 挑発し過ぎた、とは思った。適当に話を合わせて追い出すことも出来たのに、それをしなかった。しない選択をした。我慢出来なかった。怒りで顔をタコのように真っ赤にしたお父様が手を振り上げた瞬間、叩かれると理解したから、目を閉じて衝撃を待った。
 痛みは前世で慣れてる。割れるような頭の痛みも、全身を蝕む体の痛みも、手術の後の痛みも、全部痛かったなぁ。
 さぁ、来い! 覚悟して痛みを待ったけど、いつまで待っても痛みは来なかった。

「――俺の妻に何をしている? ミシュラート侯爵」

 私とお父様の間に入り、殴ろうと手を振り上げるお父様の腕を掴む旦那様の姿は、まるで正義のヒーローみたい。

「旦那様!」
「エルライン公爵様っ!? いえ、その、これは……!」

 旦那様が現れた途端、目に見えるように狼狽えるお父様。旦那様に解放されたお父様の腕には赤く跡が付いていて、相当強く掴まれたんだなぁと思った。

「旦那様、どうしてここに?」

 旦那様が離れに足を踏み入れたことは、結婚してから今まで一度もなかったのに。

「……見知らぬ人物が離れに入っていったと、ヒュルリから報告を受けて様子を見に来ただけだ」

 ヒュルリ……最高! 素敵! ありがとう!

「それで? ミシュラート侯爵夫妻は何の用でここに? 貴方方の来訪を許可した覚えはありませんが?」

「あ、いえ……その、ファルファナがどうしても私達に会いたいと我儘を言うので、門番に無理を言って中に……」

「捏造です。私はこれっぽっちも会いたくありませんでした!」

 助けに来てくれた旦那様の背後に隠れて光の速さで否定したら、お父様とお母様の二人同時に睨み付けられたけど、構うもんか!

「お父様とお母様は、私にエルライン公爵家の名前を使って悪事を働け! とか、金を盗め! とか命令して、それを拒否したら殴ろうとしてきました!」

「す、全て娘の嘘です! エルライン公爵様!」

「そ、そそそうですわ! 娘の噂は知っているでしょう? エルライン公爵様だって、実際に娘の粗相を目にされておりましたよね?」

 この際なので全部暴露したら、お父様とお母様は慌てて否定した。焦ってるの面白ーい!

「……聞き捨てならない台詞が並んだが、どちらにせよ、貴方方が無断でエルライン公爵邸の敷地内に入ったのは紛れもない事実です。即刻、出て行ってもらいます」

「くっ……はい」

 ここで旦那様に逆らうのは適切じゃない。いつまでも言う通りに動かない私に痺れを切らしてここまで強硬で来たんでしょうけど、悪手だったね。
 旦那様の言葉に従って大人しく出て行くお父様とお母様。だけどその表情は敵意に満ちていて、とてもじゃないけど、娘に向けるものとは思えない。何なの? 実の娘をそこまで敵視する? 酷い親だねぇ。

「君の言ったことは本当なのか?」

 お父様とお母様がいなくなった後、旦那様は真剣な目で、私を見つめた。

「はい、全て嘘偽りなく事実です。こうして耳を傾けてくれるということは、私のことを調べて、不審に思うところが出てきたからですよね?」

「……使用人からの報告によると、君の名前で購入したドレスは山ほどあるが、その殆どを実際に着ていたのは、ミシュラート侯爵夫人で間違いないとのことだ。ドレスだけじゃない、宝石もアクセサリーも」

 お仕事の早い旦那様。早速、ドレスの件を調べてくれたんだ。

「意味が分からない……何故だ? 何故夫人の物を、自分の買い物のように振舞った?」

「お父様とお母様に命じられていたからです。命令に背けば、罰が与えられます」

 お父様とお母様の愛情が欲しかったファルファラの気持ちも根本の理由にあるけど、そこは話さない。あの人達の愛情は、もう欠片も欲しくないし。

「旦那様との結婚も、お父様とお母様に命令されました。『何としてでもエルライン公爵様と結婚しろ』、と」

「……悪いが、簡単に君を信じることは出来ない」

「ご安心下さい、旦那様! 旦那様が簡単に信じて下さるとは、最初から微塵も欠片も一点も思っていませんでした!」

「それはそれでムカつくが……まぁいい」

 実際にお父様達の命令に従って行動している私を多くの人達が目撃しているし、お父様とお母様からの命令だって明確な証拠はない。旦那様が私を信じられなくても仕方ないよね!

「一つだけ信じて頂きたいのですが、これから先、私がお父様とお母様の命令に従うことはありません」
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