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しおりを挟む村娘生活6日目ーーー。
イマルは、リーシャの家の前を、早歩きで通り過ぎーーーそして、戻って来た。
(……ちゃんと生活出来てんのかいな)
じーと、リーシャの家を見る。
『良かったら、また、家に遊びに来て下さいね』
前日にリーシャに言われた言葉が、頭に浮かぶ。
(……あんな、会って2日程度の感情なんて、もう忘れてるやろ)
リーシャから突然の愛の告白を受けて2日ーー。
告白を断ってからは様子を見に行きにくくなり、足が遠のいていたが、前日のリーシャの態度からして、落ち込んでいる様子も無かったし、告白自体、もう無かった事になっているんじゃないか。と、イマルは軽く考えた。
(大体、何で出会って2日で告白やねん。意味分からんし)
「おーい。リーシャはん、いてはるー?生きてまっかー?」
トントンと、扉をノックしながら、声をかける。
だが、中から返答は無い。
「なんや、留守かいな」
少し身構えていただけに、拍子抜けしたが、留守なら留守で良い。
そのまま帰ろうと、足を進めた所で、リーシャの家の庭が目に入り、足を止めた。
「ーーー何やってんの?」
「あ、イマル!遊びに来てくれたんですね」
呆れながら声をかけるイマルに対して、リーシャは満面の笑みで迎えた。
手や足は勿論、服、顔、髪まで泥んこのリーシャの姿。
手には田んぼを耕す際に使用する鍬くわ。足には長靴、手には手袋、体には農作業用のエプロンをしていたが、全く役割は果たせていない。
「野菜の種を貰ったので、育ててみようと思いまして」
「いや、何でそーなんの?!」
「え?え?」
土を耕そうとしていたのは、道具や、身なり、置いている野菜の種で分かる。が!普通に土を耕すだけで、何故顔面や髪が泥んこだらけになるのかが分からない!!
土の中に潜ったのか?!とゆう位汚れている。
「えっと、こう、土を掘り起こそうと思いまして」
よっ。と、危なげな様子で、鍬くわを振り上げる。
ヨタヨタと、1.2度、足が絡まり、そのまま、桑を振り下げるーーと言うよりも、重みに耐えかねて、下に落ちるーーと、そのまま、リーシャは顔面から土にダイブした。
「リーシャはん?!?!」
「こうやって、土を耕しています」
慌てて駆け寄るイマルに対して、何事も無かったように、土から顔を上げ、説明を続ける。
「そんな命懸けの作業ちゃうで?!いつか絶対怪我しますで?!」
色々ツッコミ所はあるが、そもそもが、鍬くわを持ち上げるだけの力が備わっていない。
「大丈夫ですよ。これでも、少しは耕せたんです」
そう言って、もう一度、鍬くわを振り上げようとした所で、横から、イマルが手を伸ばし、止めた。
「やめとき!ほんまに怪我すんで!」
体が触れ合う程、近くにいるイマル。
「…っ、は、はい!」
リーシャは、顔を真っ赤にすると、そのまま、鍬くわから手を離した。
「……あんなぁ、こんなんで照れられても……こっちまで何や照れてまう……って!もおええから!とりあえず1回泥落としてきぃ!」
イマルはそのままリーシャを家に入れると、シャワーを浴びる様に促した。
「ーーで?野菜を育てたいって?」
「はい。近所の方から、種を頂きました」
シャワーを済ませ、泥を落としたリーシャは、庭先で待っていてくれたイマルに、貰い物の種を見せた。
「ミニトマト、きゅうり、ナスか」
「種を見ただけで分かるんですね!凄いです」
「別に凄かないけど……まぁ、この量やったら、こんだけ耕したら十分でっしゃろ。あと足りんかったら、植木鉢とか使ったらどない?」
イマルは、庭に置いてあった、空の植木鉢をポンポンと叩いて、示した。
「その植木鉢に、土を入れて、育てるんですか?」
「それやったら、力の無いリーシャはんでも、まだ出来るやろ」
「凄い…!そんな技があっただなんて……イマルは天才なんですね!」
「誰でも知ってるわ!」
大袈裟に感動し褒めるリーシャに、イマルはツッコミを入れた。
要領の良いイマルに教えて貰いながら、難無く、野菜の種植えを終える。
「出来ましたー!」
「お疲れはん」
自分で初めて出来た野菜農園に、とても感動し、目をキラキラさせながら、リーシャは畑を見つめた。
「良かったな。ほな、俺はこれで失礼するわ」
「え?そんな、良かったら、休憩していって下さい」
そのまま立ち去ろうとするイマルを、リーシャは慌てて引き止めた。
「別に疲れてへんから、かまへんで」
「そんな……せめて、お茶でも飲んでいって下さい」
確かに。リーシャを指導しつつ、農作業をして、喉は乾いた。
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