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13話 姉の不幸を望む
◇◇◇
「何よ……! アクト様がお義姉様を守るなんて……なんで!? お義姉様は、愛されない白い結婚をして、不幸になるはずだったのに!」
お義姉様の不幸を盃に、私はめいいっぱい、幸せになるはずだった。
私を愛してくれるお父様、お母様と一緒に、大好きなゼロと結婚して、ローズリカ子爵家を切り盛りしていくつもりだった。幸せになる未来しかないはずだった。お義姉様さえ不幸になっていれば!
「何でアクト様が、あんな良い男なのよっ!」
一番最初の予想外が、それだった。冷酷非情、血の公爵と呼ばれるアクト様が、あんなに格好良くて、素敵な人だとは思わなかった。
「何でアクト様が、お義姉様なんかを守るのよ!」
次の予想外は、アクト様が、お義姉様を守ったことだった。
一度もお義姉様に会いに来なかったアクト様。お父様もお母様も、私も、アクト様がお義姉様に興味が無いのだろうと、結論付けた。
ああ、可哀想なお義姉様。
冷酷非情な血の公爵と愛のない結婚をして、お義姉様が不幸になるのは目に見えていたのに、どうして、お義姉様なんかがアクト様に守られてるの? どうして、私がこんな目にあっているの?
全てが滅茶苦茶、どうしてお義姉様の方が幸せそうなの!? 私が、幸せになるはずだったのに!
「どうせ、アクト様の気の迷いに決まってる! 調子に乗れるのも今のうちだけなんだから!」
世間知らずで男性経験のないお義姉様には分からないでしょうけど、男の人って、たまに寄り道をすることがあるって、私は知っている! お父様が私をローズリカ子爵家の養女として迎え入れるまで平民として生きてきた私は、そこらへんにいる貴族令嬢よりも人生経験が豊富なのよ!
「本当は私にゼロを取られて悔しいクセに」
お義姉様がゼロのことを好きなのは、知ってる。
私とゼロが婚約した時のお義姉様の顔は、とっても面白かったもの! 私に好きな人を奪われた気分はどう? 私は愛に溢れた幸せな結婚をするのに、愛されない、可哀想な結婚をする気分は、どう?
お義姉様の気持ちを想像するだけで快感だった。
このまま私の身代わりの花嫁になって、ずっとずっと、死ぬまで不幸でいればいい――――そう思っていたのに、どうして!? どうして、援助のお金が減らされてちゃうの!? 新しいドレスも宝石も手に入らなくなるなんて、酷い!
「自分が好きな人と結婚出来ないからって、私に嫌がらせしてるのね……! お姉様、酷い!」
自分が愛されなかっただけなのに、意地悪なお姉様。
いつも通りの生活を奪われることが、どれだけ辛いか、お姉様には分からないのね。酷い姉、片方でも血が繋がっているとは思えない! だから、皆に愛されないのよ!
「いいもん、どうせお姉様なんて、いつかアクト様に飽きられて捨てられるに決まってる! それまでは、ゼロと愛の力で乗り越えていけばいいや」
姉に意地悪されても負けない私って、健気で素敵よね!
お姉様が余計なことさえしなければ、アクト様だって援助のお金を元に戻してくれるに決まってるわ。可愛い義妹のお願いなんだもん、聞いてくれるに決まってる。
私は貴族令嬢みたいに偉そうじゃないし、お上品ぶってないし、形式ばっていないし、男の人は皆、貴族令嬢らしからぬ私に興味を持って、好きになるの。だからゼロだって、お姉様より可愛くて明るくて天真爛漫な私を好きになった。
「ふふ、可愛すぎて、アクト様も私に夢中になっちゃったらどうしよう。ゼロが嫉妬しちゃうな」
将来、二人で私を取り合う姿を想像したら、楽しくなった。
大丈夫、私は皆に愛されるんだから、不幸になるのは、お姉様の方。
誰にも愛されない哀れな人なんだから、せめて可愛い妹のために役に立って、可哀想な人生を送ってよ。私はそんなお姉様を見て、可哀想って、また優しく声をかけてあげるから。
ああ、私ってば、なんて優しい妹なの。
◇◇◇
あれから、アクトの言葉通り、彼は会いに来なくなった。
私は前もって仕事だと知らされているから何も思わないけど、お父様やお義母様、リシャルはここぞとばかりに態度が悪くなった。
「やっぱりお姉様は愛されていないんだね、可哀想なお姉様」
「ほらごらんなさい! インテレクト公爵様は一時の気の迷いでお前を守っただけよ! お前なんかを、大切にするわけないでしょう!」
「さっさとその部屋を明け渡せセルフィ! そこはリシャルとゼロの部屋だぞ!」
部屋に上がり込んで怒涛の勢いで口撃する。
アクトが来なくなったら態度がまた悪くなるだろうなっとは思っていたけど、これは想像以上に酷い。
「アクトは仕事で暫く来れないだけです。と言いますか、アクトが来なくなってまだ一週間ですよ?」
「お姉様ってば、分かってないのね。本当に好きな人なら毎日でも会いたくなるものなのよ! それが一週間も会いに来ないんだもの、お姉様に飽きたで確定よ!」
「それを言うなら、ゼロも最近来ていないようだけど?」
「ゼロは仕事で忙しいだけよ!」
「自分は良くて、他人は駄目……どんな暴君よ」
「私とゼロは本当に愛し合っているからいいの!」
意味が分からない。リシャルの頭の中なんて理解したくもないけど、意味不明過ぎて気分悪くなりそう。
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