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プロローグ
しおりを挟む私の双子の妹の《エミル》は、聖女として産まれた。
特別な力を持ち、心優しく、いつも愛を囁く妹は、何の力も持たない、出来損ないの双子の姉である私にも優しかった。
「《ユウナ》お姉様、大好きです。ずっと、仲良しの姉妹でいましょうね」
傍から見れば、エミルは姉想いの可愛い妹で、『あんな素敵な妹がいて良かったわね』なんて、皆から声を掛けられた。
「ユウナお姉様、これ、見て下さい。ユウナお姉様と同じ物を買ってもらったんです。これで、ユウナお姉様と全部お揃いですね。大好きですユウナお姉様」
「ユウナお姉様、ユウナお姉様のお友達と、私も仲良くなりました。皆、ユウナお姉様のお友達をやめて、私とお友達になってくれるそうです。これで、ユウナお姉様は私だけの物ですね。大好きですユウナお姉様」
「ユウナお姉様、学校に通いたいんですか? 私は学校に通う気はないので、ユウナお姉様も行かないで下さい。これでずっと一緒です。大好きですユウナお姉様」
私と同じ顔をした双子の妹は、私を好きと言いながら、執着に近い感情を向けてくる。
冷たく突き放せば、妹はシクシクと泣き、聖女である妹を溺愛する両親、婚約者、町の人達に、酷い姉だと責められる。
私は妹が大嫌いだった。
でも、それでも家族だから、たった一人の、双子の片割れだからと、ずっと我慢してきた。
「ユウナお姉様、私、ユウナお姉様の婚約者を好きになってしまいました。《ルキ》様は、私の想いに応えて、ユウナお姉様よりも私を好きだと言ってくれました。だから、ユウナお姉様の婚約者を、私に下さいね。ユウナお姉様、大好きです」
――――ずっと我慢してたけど、もう限界。
好きって言えば何でも許される免罪符じゃないのよ?
今まで家族だからって、双子の片割れだからって我慢してたけど、もう無理。
丁度良いことに、両親から家を出て行けと追い出されたので、このまま家を出ることにします。
さようなら、もう二度と貴女達を家族だなんて思わない。
泣いて助けを求めて来ても、絶対に助けてあげない。
本物の聖女は私の方なのに、馬鹿な人達。
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