悪魔の家

光子

文字の大きさ
6 / 37

6

しおりを挟む
 


 誇らしげに答えるはな。
 あきとは、ボランティア活動でこの場所に来たと言っていたが、はなは、彼氏であるあきとと離れたくなくて、一緒に着いて来たのだ。
「くっそ迷惑ーー」
「本当にあきと君が好きなんだね!」
 濱田はまだ文句を言おうとしたが、その言葉を、けいじの大きめの声がかき消した。
「勿論♡たぁ君ははなの物だもの♡はなには、たぁ君こそ、相応しいの♡他の女には、絶対に渡さない」
 何の収穫も無かったはなだが、足が痛いとゆう事は、少しは歩いていたのだろう。
 だが、それは探索をする為ではなく、ただ、あきとの傍にくっついて歩いていただけ。
 彼女にとって、生きるための山菜や木の葉を集めるよりも、あきとの傍にいて、あきとの気を引く事が優先されるのだろう。
 当のあきとを見ると、まだ熱心に山菜や木の枝、木の実等を集めていた。
「ところで、何でたぁ君なんだい?」
 彼の名前は面堂 あきと。
 はなの呼ぶ、たぁ君とは何も結びつかない。
「……ふふ」
 はなは少し含みのある笑いをした後、すぐに答えた。
「ダーリンだから♡」
「ん?」
 意味が分からず、聞き直す。
「ダーリンだから、だぁ君、そこから、たぁ君になったの」
「ーーー成程!」
「無理すんなよおっさん。意味わかんねぇよ、この女」
 濱田は呆れながらそう言い捨てた。

「集めました!」
「僕もです」
 そこに、残りの杉とあきとも合流した。
「随分いっぱい集めてくれたんだね」
 けいじは、感心して声を上げた。
 二人の手元には沢山の山菜や、きのこもある。
「あきとさんが凄くて、色々きのこが生えてそうな場所とか教えてくれて!」
「いえいえ。田村さんに教えて頂いた通りの場所を探しただけです」
 杉とあきとは、はなが離れた後にコミニュケーションをとっていたようで、2人で笑顔で会話を交わした。
「す、すぎちゃん、こっち来て」
 いっけん、初見の2人が緊張が解れ、仲良く話せたのはとても良い事に見えるが、先程までのはなの会話を聞いていた藤は、慌てて杉を自分の元に呼び寄せた。
 はなの、あきとに対する愛が、とても重く、怖いと思ったからだ。
 案の定、はなは険しい表情で杉を睨みつけていた。

「ーーたぁ君、はな寂しかったぁ」
「あ、ごめんね。でも、はな足痛いって言ってたし、休んで貰ってた方が良いかと思って」
 猫なで声であきとに擦り寄るはな。
 そんなはなの頭を、あきとは優しく撫でた。
「まじでめんどくせぇ女だな」
 濱田は嫌悪感を隠そうともしなかった。
「え?え?何?私何かしちゃった?」
 1人、意味の分からない杉はあたふたしながら、友達の藤に、事の次第を尋ねた。


「あんまりこの場所から離れない方が良いんだろうけどーー」
 用意した軽い食事を食べながら、けいじは口を開いた。
「水の確保はしないとまずいから、出来たら川とか、湧き水とか、そういった場所まで移動したいな」
 今は、けいじが持参したペットボトルの水しか手元に無い。
 上の様子は分からないが、今の所、助けにくる様子は無く、何日、ここで、生活しなければならないのかも不透明。
「川があれば確かに安心ですね」
 けいじの提案に、あきともすぐに賛同した。
 あきとが賛同すれば、はなも異論はなく、女子高生達は、けいじの意見に反論する気がそもそも無い。残すは1人。
 全員が、濱田の方を見た。
「ーーんだよ」
「いいかな?」
「こんなとこにずっといてもしゃーねぇだろ」
  ぶっきらぼうな言い方だが、彼も賛同し、女子高生達は言い争うにならなかった事にホッと胸を撫で下ろした。
「じゃあゆっくりと移動しよう。無理しないで、日が暮れかけたら、その場で昨日みたいに野宿って事で!」
 そこからは、全員がそれぞれの荷物を持ち、余った木や木の実を持って、慎重に歩き出した。
 けいじが先頭。
 その後ろを濱田が歩き、あきとは自然と、はなと最後尾を担当した。
 けいじとあきとに挟まれるように、女子高生達が歩く。
「はぁはぁ」
「…大丈夫?」
 あかりは生理痛と言っていた藤に、声をかけた。
 藤の顔色は相変わらず悪い。
「ん?大丈夫!私運動部だから、体力はあるんだ」
 藤はニッコリと笑って答えた。
「あかりちゃんこそ大丈夫?体調悪かったよね?」
 今度は逆に、藤があかりの体調を気にかけた。
「大丈夫。私も、体力には自信あるからーーそれより」
 あかりは自分達よりも遅れて歩く杉に目を向けた。
「すぎちゃん!大丈夫?」
「う、うん。駄目だね、私、体力無くて」
 藤は慌てて杉の元に駆け寄った。
「すぎちゃん文化部だもんね」
「へへ」
 ぬかるんで歩きにくい土、無造作に生える草木。
 凸凹な道に、急な上りや下り。
 体力を削るには充分か道のりだった。
「おい!もーちょっと早く歩けねぇのか!」
「「!」」
 濱田の怒鳴り声に、藤と杉は2人して体をビクッ!と震わせた。
「もー無理ー!はな限界!歩けないー!」
 ただ、濱田の怒りの矛先は杉では無く、その後ろのはなだった。
 彼女のピンヒールは、この山道で歩くには致命傷だ。足を止め、その場にしゃがみこんでいる。
「はな、僕の背中に乗る?」
「え、いーの?ありがとぉあきと♡」
 優しいあきとの言葉に、はなは甘え、すぐにあきとの背中におんぶした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...