カンナと田舎とイケメンの夏。~子供に優しい神様のタタリ~

猫野コロ

文字の大きさ
4 / 15

第4話 イケメン預言者ベッカム

しおりを挟む
 ベッカムくんがバリボリ、とせんべいをかみくだき、続きを話し出す。

「細かい年齢ねんれいはおいといて、あの人たちの希望通り、『だいたい同い年』の若者が集まったわけじゃん」

「まぁ、集まったな」

「集まってはいますね」

 ミィちゃんと私は、冷たい麦茶を飲みながらテキトーな相槌あいづちをうった。

 近所の大人たちはおたがいの年なんて気にせずに話しているから、私たちの年齢が二つくらいはなれていたとしても、『ほぼ同い年』としか思わないのだろう。
 でも田舎いなかってすごい。この二人に『年齢を聞いてみようかな』とか全然思わせない。
 たぶん、聞いても『へー……』となるだけだろうな。
 実は九十歳と言われても、へー……見た目よりいってますねぇ……で終わるだろう。
 異世界と変わらないほどの田舎なら、ノリの良いおじいちゃんも、若々しくてイケメンすぎるおじいちゃんも、話しやすいという意味では同じだ。

 そんなことを考えていると、麦茶でおせんべいがふくれたのか、お腹がいっぱいになる。
 部屋も涼しくて快適かいてきだし、だんだん眠くなってきた。セミの音が聞こえなくて静かなせいだろうか。
 たたみの部屋、いぐさのかおり、窓の外でれる、葉のしげる枝。すべてが落ち着く。
 鈴木さんの家だし目の前と横に無気力なイケメンがいるけれど。

 時間がゆったりと過ぎる田舎ぐらしを堪能たんのうしながら、ぼーっと話の続きを待つ。

 ――そして、視線の先のベッカムくんは、カラン、とグラスの氷を回し、聞きたくなかったことをいった。

「そうなるとさぁ。次にくるのは『あんたたち若いんだから、お外で遊んできなさい』だと思うんだよね」

「あの、気温って分かります? あたまけますよ」

「行きたいなら一人で行ってこいよ」

 私とミィちゃんは苦い薬でも飲まされたみたいにしぶい顔をすると、室内の好きな場所に移動して、畳のうえにゴロリと転がった。



 私ははじめて『ビシッと苦情くじょうを入れる』ことに成功した。
 でもそのことを喜ぶ気分には少しもなれない。

 まるでお経が重なるみたいに、なんともいえない声で、蝉が叫んでいる。

あつい……暑いんですけど……」

 私がこのような目にあっているのはベッカムくんのせいではないか、そういう気持ちをこめて、予言者ベッカムに「暑い……」と伝えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

僕らの無人島漂流記

ましゅまろ
児童書・童話
夏休み、仲良しの小学4年男子5人組が出かけたキャンプは、突然の嵐で思わぬ大冒険に! 目を覚ますと、そこは見たこともない無人島だった。 地図もない。電波もない。食べ物も、水も、家もない。 頼れるのは、友だちと、自分の力だけ。 ケンカして、笑って、泣いて、助け合って——。 子どもだけの“1ヶ月サバイバル生活”が、いま始まる!

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

処理中です...