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第8話 矢印の先には――。田舎の探検隊。
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何もないと思っていた場所に矢印が描かれていたら、どうするか。
それはもちろん。
「さっそく調査しましょう! きっとこの先に滝の名前が」
「田中カンナ意外とアグレッシブだよね。ここは『矢印怖い! お家に帰りましょう』っていうとこでしょ」
「矢印の何がこえーんだよ」
ミィちゃんの意見には同意しかない。
ベッカムくんの及び腰っぷりと女子に対する偏った考えは気になるところだけれど、それよりも言いたいことがある。
「ベッカムくん。アグレッシブって何ですか。横文字使うのやめてください」
「えぇ……この場合は『積極的な』とか『意欲的な』って意味だけど……。なんていうか、『横文字』って言い方に田舎とおばあちゃんを感じるよね」
それも偏見だと思います。
ああ。田舎とばぁちゃんに謝れ。
えぇ……だって学校では聞かないよね。横文字とか。
ダラダラと話しながらも、私は矢印の向きに従って次の看板を探したり、ちょっと先へ進んで足元の岩を見たりしていた。
看板は滝からちょっと離れた場所にあって、矢印は滝というより、滝の横あたりを示しているように思えた。
矢印からずれた時は、ミィちゃんが指先でスッと、と方角を合わせてくれる。
「うーん。普通に行き止まりですよねぇ。崖っていうか段差と茂みっていうか……」
「何もない場所に向けて矢印描くとか超怖いじゃん。ホラー確定でしょ」
「お前の机にもあったよな。無意味な矢印」
ビビりすぎなベッカムくんと、煽るミィちゃん。
同じ学校なのかなー。矢印の何が怖いんだろう。とりとめなく考えながら、私はガサガサと崖の蔦をかきわけ始めた。
教科書に描いてあるやつみたいな壁画を求めて。もう滝の名前くらいじゃ満足できない。
アリアちゃんが見ていたら『カンナ、人間って罪深いね』と言われちゃうかも。
「おい、素手でやるなって」
突然ふっと影ができる。背の高いミィちゃんが私の手元の蔦を、背後から強引にガサッ――とよけたからだ。
やっぱり。無気力そうなのに、ミィちゃんは結構力が強い。
「ありがとうございます。手は」大丈夫ですか――という言葉は続かなかった。
私たちはついに、矢印が示していたものを発見したのだ。
ミィちゃんが押さえている場所にぐっと顔を近付ける。ひんやりしている……ような、気がする。
「ミィちゃん……。これって洞窟ってやつでしょうか」
のぞいた場所にあったのは、崖にあいた天然の穴と、その先の緑。隙間からキラキラと光が見える。
洞窟というには短いけれど、トンネルより洞窟のほうが冒険っぽいのでそちらを採用したい。
私の言葉に、ミィちゃんがダルそうに相槌を打ってくれる。
「かもな」
「それ絶対ホラーなやつ。入ったら『キャーたすけてー』って言うことになるよ。俺が」
お前がかよ。ミィちゃんは警戒心をあらわにするベッカムくんの言葉を鼻でわらった。
それはもちろん。
「さっそく調査しましょう! きっとこの先に滝の名前が」
「田中カンナ意外とアグレッシブだよね。ここは『矢印怖い! お家に帰りましょう』っていうとこでしょ」
「矢印の何がこえーんだよ」
ミィちゃんの意見には同意しかない。
ベッカムくんの及び腰っぷりと女子に対する偏った考えは気になるところだけれど、それよりも言いたいことがある。
「ベッカムくん。アグレッシブって何ですか。横文字使うのやめてください」
「えぇ……この場合は『積極的な』とか『意欲的な』って意味だけど……。なんていうか、『横文字』って言い方に田舎とおばあちゃんを感じるよね」
それも偏見だと思います。
ああ。田舎とばぁちゃんに謝れ。
えぇ……だって学校では聞かないよね。横文字とか。
ダラダラと話しながらも、私は矢印の向きに従って次の看板を探したり、ちょっと先へ進んで足元の岩を見たりしていた。
看板は滝からちょっと離れた場所にあって、矢印は滝というより、滝の横あたりを示しているように思えた。
矢印からずれた時は、ミィちゃんが指先でスッと、と方角を合わせてくれる。
「うーん。普通に行き止まりですよねぇ。崖っていうか段差と茂みっていうか……」
「何もない場所に向けて矢印描くとか超怖いじゃん。ホラー確定でしょ」
「お前の机にもあったよな。無意味な矢印」
ビビりすぎなベッカムくんと、煽るミィちゃん。
同じ学校なのかなー。矢印の何が怖いんだろう。とりとめなく考えながら、私はガサガサと崖の蔦をかきわけ始めた。
教科書に描いてあるやつみたいな壁画を求めて。もう滝の名前くらいじゃ満足できない。
アリアちゃんが見ていたら『カンナ、人間って罪深いね』と言われちゃうかも。
「おい、素手でやるなって」
突然ふっと影ができる。背の高いミィちゃんが私の手元の蔦を、背後から強引にガサッ――とよけたからだ。
やっぱり。無気力そうなのに、ミィちゃんは結構力が強い。
「ありがとうございます。手は」大丈夫ですか――という言葉は続かなかった。
私たちはついに、矢印が示していたものを発見したのだ。
ミィちゃんが押さえている場所にぐっと顔を近付ける。ひんやりしている……ような、気がする。
「ミィちゃん……。これって洞窟ってやつでしょうか」
のぞいた場所にあったのは、崖にあいた天然の穴と、その先の緑。隙間からキラキラと光が見える。
洞窟というには短いけれど、トンネルより洞窟のほうが冒険っぽいのでそちらを採用したい。
私の言葉に、ミィちゃんがダルそうに相槌を打ってくれる。
「かもな」
「それ絶対ホラーなやつ。入ったら『キャーたすけてー』って言うことになるよ。俺が」
お前がかよ。ミィちゃんは警戒心をあらわにするベッカムくんの言葉を鼻でわらった。
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